転生公爵令嬢が、親友と姉妹になろうと頑張った結果

国湖奈津

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 私は父に直談判をして、少しの間私付きの侍女を増やしてもらうことにした。
 条件は通常業務ができることに加えて、裁縫や編み物が得意であること、自身や家族が今のところ健康なことだ。

 そうして私のところに派遣されてきたのはリズ、ミア、ジェーンという3人だった。
 3人は以前から我が家で働いてくれていて、年齢も私と同じくらいだ。

 「今日から約1か月半、私専属で働いてもらいたいと思っています。3人ともご実家は王都にあるそうですが、私と一緒に領地についてきて頂きたいと思っています。期間終了したら、王都に帰って頂いてタウンハウス勤務に戻って頂いて結構です」
 
 私は3人に、これからの仕事内容を説明した。

「私付きの侍女として皆さんには来ていただきましたが、仕事は多岐にわたります。基本的には裁縫や編み物ですが、おそらくみなさんが今まで作ったことのないものを作っていただくことになります。後半は王太子殿下が領地にお越しになりますので、そのおもてなし係としての業務を行っていただくことになります。チームで一致団結し臨機応変に動いていただかなければなりません。働けないという方がいたら遠慮せず、どうぞ仰ってください」

 名乗り出る者はいなかった。

 「では、みなさん働いてくださるということですね。少しハードな仕事になるかも知れませんが、お給料は特別手当が付きますので期待していてください。もしご自身やご家族の具合が悪いなどありましたら、すぐに言ってください。今日からよろしくお願いします」

 こうして私とアンナに、今回集まった3人を加えた5人での、
『ヴィンセント様をぎゃふんと言わせる作戦』
 が幕を開けた。
 
 タウンハウスでの残された時間で下準備を整え、領地に帰ってからはとても慌ただしく働いた。
 1月後には王太子殿下がおいでになるということで、屋敷中の改装やら大掃除やら庭の整備やら使用人の再教育やらとバタバタしていた。

 王都の屋敷に比べて、領地の屋敷はずっと広く庭も広大だ。
 働いている人も多く毎日が活気にあふれていた。

 母が実家に帰っていることもあって、私は普段母がこなす仕事についても意見を求められ、慣れない屋敷の采配仕事をこなしつつ、作戦のためチームのメンバー達と忙しく働いた。


 私のプランは、こうだ。
 2週間の予定で、王太子殿下ご一行様が我が家にいらっしゃる。
 しかし一応視察目的と言うことなので、我が領地を回られたりと王太子殿下には予定が詰まっている。

 私は父から最後の3日間を割り当てられた。
 最後の3日間、私は王太子殿下を郊外の小さな村にある別荘にお誘いする。

 そこは私の曽祖母が晩年をすごした別荘で温泉があり、私のお気に入りの場所だ。
 数年前から私好みに改装を重ねており、外装は石造りのこの国によくある建物だが、内装は日本の温泉街にあるホテルのように和モダンな造りになっている(畳はないけどね)。

 そこに王太子殿下をお誘いし、おもてなしをさせていただき、ぎゃふんと言わせる。

 ここを選んだ目的は異国情緒を味わっていただくことだ。
 それには狙いがある。

 これは私の経験なのだが、海外旅行に行くと普段よりも気持ちが大きくなるということはないだろうか?

 普段着ない大胆な水着を着たり、普段なら、少し考えてから買う高級なものをあっさり買ってしまったり、派手な色や柄の服を買ってしまって帰国してから一度も着なかったり。

 感覚が少しマヒする。
 私は、この異国風の別荘にヴィンセント様をお誘いすることで、ヴィンセント様の思考力を奪い感覚をマヒさせようと考えている。

 内装はほぼ完璧なので、今はおもてなしメンバーの衣装を異国情緒漂うものにしようと鋭意製作中である。
 幸い和柄の布は、たくさん用意してあった。
 それを使うと完全に着物でなくても、和の雰囲気を出すことができるようだ。

 「エミリア様、ここなんですけど…」

 「みんなが動きやすいようにアレンジしてくれて大丈夫。できればシルエットはストンとした感じにしてくれるとと嬉しい」

 私は、このように大雑把なイメージを伝えるだけなのだが、かなり優秀な人材が集まったようで、どんどん形にして行ってくれている。
 特にリズは25歳と皆よりもお姉さんなこともあって、皆をまとめる役割を担ってくれていた。
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