10 / 36
10
しおりを挟む
私は父に直談判をして、少しの間私付きの侍女を増やしてもらうことにした。
条件は通常業務ができることに加えて、裁縫や編み物が得意であること、自身や家族が今のところ健康なことだ。
そうして私のところに派遣されてきたのはリズ、ミア、ジェーンという3人だった。
3人は以前から我が家で働いてくれていて、年齢も私と同じくらいだ。
「今日から約1か月半、私専属で働いてもらいたいと思っています。3人ともご実家は王都にあるそうですが、私と一緒に領地についてきて頂きたいと思っています。期間終了したら、王都に帰って頂いてタウンハウス勤務に戻って頂いて結構です」
私は3人に、これからの仕事内容を説明した。
「私付きの侍女として皆さんには来ていただきましたが、仕事は多岐にわたります。基本的には裁縫や編み物ですが、おそらくみなさんが今まで作ったことのないものを作っていただくことになります。後半は王太子殿下が領地にお越しになりますので、そのおもてなし係としての業務を行っていただくことになります。チームで一致団結し臨機応変に動いていただかなければなりません。働けないという方がいたら遠慮せず、どうぞ仰ってください」
名乗り出る者はいなかった。
「では、みなさん働いてくださるということですね。少しハードな仕事になるかも知れませんが、お給料は特別手当が付きますので期待していてください。もしご自身やご家族の具合が悪いなどありましたら、すぐに言ってください。今日からよろしくお願いします」
こうして私とアンナに、今回集まった3人を加えた5人での、
『ヴィンセント様をぎゃふんと言わせる作戦』
が幕を開けた。
タウンハウスでの残された時間で下準備を整え、領地に帰ってからはとても慌ただしく働いた。
1月後には王太子殿下がおいでになるということで、屋敷中の改装やら大掃除やら庭の整備やら使用人の再教育やらとバタバタしていた。
王都の屋敷に比べて、領地の屋敷はずっと広く庭も広大だ。
働いている人も多く毎日が活気にあふれていた。
母が実家に帰っていることもあって、私は普段母がこなす仕事についても意見を求められ、慣れない屋敷の采配仕事をこなしつつ、作戦のためチームのメンバー達と忙しく働いた。
私のプランは、こうだ。
2週間の予定で、王太子殿下ご一行様が我が家にいらっしゃる。
しかし一応視察目的と言うことなので、我が領地を回られたりと王太子殿下には予定が詰まっている。
私は父から最後の3日間を割り当てられた。
最後の3日間、私は王太子殿下を郊外の小さな村にある別荘にお誘いする。
そこは私の曽祖母が晩年をすごした別荘で温泉があり、私のお気に入りの場所だ。
数年前から私好みに改装を重ねており、外装は石造りのこの国によくある建物だが、内装は日本の温泉街にあるホテルのように和モダンな造りになっている(畳はないけどね)。
そこに王太子殿下をお誘いし、おもてなしをさせていただき、ぎゃふんと言わせる。
ここを選んだ目的は異国情緒を味わっていただくことだ。
それには狙いがある。
これは私の経験なのだが、海外旅行に行くと普段よりも気持ちが大きくなるということはないだろうか?
普段着ない大胆な水着を着たり、普段なら、少し考えてから買う高級なものをあっさり買ってしまったり、派手な色や柄の服を買ってしまって帰国してから一度も着なかったり。
感覚が少しマヒする。
私は、この異国風の別荘にヴィンセント様をお誘いすることで、ヴィンセント様の思考力を奪い感覚をマヒさせようと考えている。
内装はほぼ完璧なので、今はおもてなしメンバーの衣装を異国情緒漂うものにしようと鋭意製作中である。
幸い和柄の布は、たくさん用意してあった。
それを使うと完全に着物でなくても、和の雰囲気を出すことができるようだ。
「エミリア様、ここなんですけど…」
「みんなが動きやすいようにアレンジしてくれて大丈夫。できればシルエットはストンとした感じにしてくれるとと嬉しい」
私は、このように大雑把なイメージを伝えるだけなのだが、かなり優秀な人材が集まったようで、どんどん形にして行ってくれている。
特にリズは25歳と皆よりもお姉さんなこともあって、皆をまとめる役割を担ってくれていた。
条件は通常業務ができることに加えて、裁縫や編み物が得意であること、自身や家族が今のところ健康なことだ。
そうして私のところに派遣されてきたのはリズ、ミア、ジェーンという3人だった。
3人は以前から我が家で働いてくれていて、年齢も私と同じくらいだ。
「今日から約1か月半、私専属で働いてもらいたいと思っています。3人ともご実家は王都にあるそうですが、私と一緒に領地についてきて頂きたいと思っています。期間終了したら、王都に帰って頂いてタウンハウス勤務に戻って頂いて結構です」
私は3人に、これからの仕事内容を説明した。
「私付きの侍女として皆さんには来ていただきましたが、仕事は多岐にわたります。基本的には裁縫や編み物ですが、おそらくみなさんが今まで作ったことのないものを作っていただくことになります。後半は王太子殿下が領地にお越しになりますので、そのおもてなし係としての業務を行っていただくことになります。チームで一致団結し臨機応変に動いていただかなければなりません。働けないという方がいたら遠慮せず、どうぞ仰ってください」
名乗り出る者はいなかった。
「では、みなさん働いてくださるということですね。少しハードな仕事になるかも知れませんが、お給料は特別手当が付きますので期待していてください。もしご自身やご家族の具合が悪いなどありましたら、すぐに言ってください。今日からよろしくお願いします」
こうして私とアンナに、今回集まった3人を加えた5人での、
『ヴィンセント様をぎゃふんと言わせる作戦』
が幕を開けた。
タウンハウスでの残された時間で下準備を整え、領地に帰ってからはとても慌ただしく働いた。
1月後には王太子殿下がおいでになるということで、屋敷中の改装やら大掃除やら庭の整備やら使用人の再教育やらとバタバタしていた。
王都の屋敷に比べて、領地の屋敷はずっと広く庭も広大だ。
働いている人も多く毎日が活気にあふれていた。
母が実家に帰っていることもあって、私は普段母がこなす仕事についても意見を求められ、慣れない屋敷の采配仕事をこなしつつ、作戦のためチームのメンバー達と忙しく働いた。
私のプランは、こうだ。
2週間の予定で、王太子殿下ご一行様が我が家にいらっしゃる。
しかし一応視察目的と言うことなので、我が領地を回られたりと王太子殿下には予定が詰まっている。
私は父から最後の3日間を割り当てられた。
最後の3日間、私は王太子殿下を郊外の小さな村にある別荘にお誘いする。
そこは私の曽祖母が晩年をすごした別荘で温泉があり、私のお気に入りの場所だ。
数年前から私好みに改装を重ねており、外装は石造りのこの国によくある建物だが、内装は日本の温泉街にあるホテルのように和モダンな造りになっている(畳はないけどね)。
そこに王太子殿下をお誘いし、おもてなしをさせていただき、ぎゃふんと言わせる。
ここを選んだ目的は異国情緒を味わっていただくことだ。
それには狙いがある。
これは私の経験なのだが、海外旅行に行くと普段よりも気持ちが大きくなるということはないだろうか?
普段着ない大胆な水着を着たり、普段なら、少し考えてから買う高級なものをあっさり買ってしまったり、派手な色や柄の服を買ってしまって帰国してから一度も着なかったり。
感覚が少しマヒする。
私は、この異国風の別荘にヴィンセント様をお誘いすることで、ヴィンセント様の思考力を奪い感覚をマヒさせようと考えている。
内装はほぼ完璧なので、今はおもてなしメンバーの衣装を異国情緒漂うものにしようと鋭意製作中である。
幸い和柄の布は、たくさん用意してあった。
それを使うと完全に着物でなくても、和の雰囲気を出すことができるようだ。
「エミリア様、ここなんですけど…」
「みんなが動きやすいようにアレンジしてくれて大丈夫。できればシルエットはストンとした感じにしてくれるとと嬉しい」
私は、このように大雑把なイメージを伝えるだけなのだが、かなり優秀な人材が集まったようで、どんどん形にして行ってくれている。
特にリズは25歳と皆よりもお姉さんなこともあって、皆をまとめる役割を担ってくれていた。
0
あなたにおすすめの小説
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
転生したので推し活をしていたら、推しに溺愛されました。
ラム猫
恋愛
異世界に転生した|天音《あまね》ことアメリーは、ある日、この世界が前世で熱狂的に遊んでいた乙女ゲームの世界であることに気が付く。
『煌めく騎士と甘い夜』の攻略対象の一人、騎士団長シオン・アルカス。アメリーは、彼の大ファンだった。彼女は喜びで飛び上がり、推し活と称してこっそりと彼に贈り物をするようになる。
しかしその行為は推しの目につき、彼に興味と執着を抱かれるようになったのだった。正体がばれてからは、あろうことか美しい彼の側でお世話係のような役割を担うことになる。
彼女は推しのためならばと奮闘するが、なぜか彼は彼女に甘い言葉を囁いてくるようになり……。
※この作品は、『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
兄みたいな騎士団長の愛が実は重すぎでした
鳥花風星
恋愛
代々騎士団寮の寮母を務める家に生まれたレティシアは、若くして騎士団の一つである「群青の騎士団」の寮母になり、
幼少の頃から仲の良い騎士団長のアスールは、そんなレティシアを陰からずっと見守っていた。レティシアにとってアスールは兄のような存在だが、次第に兄としてだけではない思いを持ちはじめてしまう。
アスールにとってもレティシアは妹のような存在というだけではないようで……。兄としてしか思われていないと思っているアスールはレティシアへの思いを拗らせながらどんどん膨らませていく。
すれ違う恋心、アスールとライバルの心理戦。拗らせ溺愛が激しい、じれじれだけどハッピーエンドです。
☆他投稿サイトにも掲載しています。
☆番外編はアスールの同僚ノアールがメインの話になっています。
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる