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「王家の姫として、タモハンに嫁いではくれないか?」
王のこの言葉で私の人生は決定した。
あの言葉から1年半。
私、ジェーン・デューバーは今、船に揺られている。
母国リナレイからタモハンまでは船で約20日。
幸い天気に恵まれ、順調な航海を続けてこられた。
明日にはタモハンに到着する予定だ。
「ジェーン様、明日の御仕度の確認済みました」
私にずっと仕えてくれているミアとも明日でお別れだ。
言葉も文化も違う祖国から遠く離れた地にミアは連れて行かないと決めた。
私は身一つでタモハンの第一王子・カーン様の後宮に入る。
「カーン王子は、どんな方なのですか?」
ミアには昨日もカーン王子の話をしていた。
私は1度しか会ったことがないので、その時の印象しかなく、話せることは少ない。
私とミアの船に乗ってからの会話はなんだか上滑りしている。
私は昨日から何度もミアに明日の服装や荷物の確認を命じていたし、ミアは繰り返しタモハンはどんなところかと聞いていた。
もう明日に迫っているのに、なんだか夢を見ているような現実感のない世界を私はさまよっているようだった。
そしてミアと離れたくなかった。
きっとミアもそう思ってくれている。
だから私たちは昨日と同じ会話を繰り返した。
「私より7歳年上の26歳よ。背はお父様より高くて日に焼けた褐色の肌をお持ちなの。髪は黒くて瞳は濃い茶色。性格は、そうね、お優しい方だと思うわ。10年前に初恋の女性を事故で亡くされて、その方のことを今も大切に思い続けていると正直に話してくださったの。そして、お互いに国のために協力しましょうと言ってくださったのよ。お寂しそうだったけれど、誠実な方なんだなと思えたの。だから、私たちは良き理解者になれると思う。きっとうまくやっていけるはずよ」
私はミアに話しながら自分に言い聞かせていた。
初めての航海、初めての異国、初めての結婚。
この1年半、タモハンに嫁ぐための勉強をしてきた。
国を出る前、教師にはよく頑張ったとほめてもらえたけれど、考えれば考えるほど不安は募る。
文化も大きく異なるタモハン。
一番の違いは、リナレイは一夫一婦制だけれど、タモハンは一夫多妻制だということ。
カーン王子は初恋の女性だけを妻にするつもりだったけれど、その女性が亡くなって私との結婚の駒になることを決めた。
リナレイを尊重して、妻は私だけと約束してくださったけれど、婚姻についてこれほど大きく違うのだ。
他にもたくさん違いはあるだろう。
「ジェーン様ならきっとうまくおやりになれます。明日は一生に一度の晴れの舞台ですからね、今日はゆっくりお休みになって、明日に備えてください」
私が考え込んで黙ってしまったからか、ミアは明るく声をかけてくれた。
ミアにお礼を言おうと顔を上げると、ミアは目の周りを赤く染め、瞳は今にも泣き出しそうに潤んでいた。
そのミアの顔を見て、私も涙が込み上げてしまった。
瞬きをしたら涙がこぼれてしまうだろう。
涙を見せたくない私は、うまく返事をすることができず、促されるままベッドに入った。
王のこの言葉で私の人生は決定した。
あの言葉から1年半。
私、ジェーン・デューバーは今、船に揺られている。
母国リナレイからタモハンまでは船で約20日。
幸い天気に恵まれ、順調な航海を続けてこられた。
明日にはタモハンに到着する予定だ。
「ジェーン様、明日の御仕度の確認済みました」
私にずっと仕えてくれているミアとも明日でお別れだ。
言葉も文化も違う祖国から遠く離れた地にミアは連れて行かないと決めた。
私は身一つでタモハンの第一王子・カーン様の後宮に入る。
「カーン王子は、どんな方なのですか?」
ミアには昨日もカーン王子の話をしていた。
私は1度しか会ったことがないので、その時の印象しかなく、話せることは少ない。
私とミアの船に乗ってからの会話はなんだか上滑りしている。
私は昨日から何度もミアに明日の服装や荷物の確認を命じていたし、ミアは繰り返しタモハンはどんなところかと聞いていた。
もう明日に迫っているのに、なんだか夢を見ているような現実感のない世界を私はさまよっているようだった。
そしてミアと離れたくなかった。
きっとミアもそう思ってくれている。
だから私たちは昨日と同じ会話を繰り返した。
「私より7歳年上の26歳よ。背はお父様より高くて日に焼けた褐色の肌をお持ちなの。髪は黒くて瞳は濃い茶色。性格は、そうね、お優しい方だと思うわ。10年前に初恋の女性を事故で亡くされて、その方のことを今も大切に思い続けていると正直に話してくださったの。そして、お互いに国のために協力しましょうと言ってくださったのよ。お寂しそうだったけれど、誠実な方なんだなと思えたの。だから、私たちは良き理解者になれると思う。きっとうまくやっていけるはずよ」
私はミアに話しながら自分に言い聞かせていた。
初めての航海、初めての異国、初めての結婚。
この1年半、タモハンに嫁ぐための勉強をしてきた。
国を出る前、教師にはよく頑張ったとほめてもらえたけれど、考えれば考えるほど不安は募る。
文化も大きく異なるタモハン。
一番の違いは、リナレイは一夫一婦制だけれど、タモハンは一夫多妻制だということ。
カーン王子は初恋の女性だけを妻にするつもりだったけれど、その女性が亡くなって私との結婚の駒になることを決めた。
リナレイを尊重して、妻は私だけと約束してくださったけれど、婚姻についてこれほど大きく違うのだ。
他にもたくさん違いはあるだろう。
「ジェーン様ならきっとうまくおやりになれます。明日は一生に一度の晴れの舞台ですからね、今日はゆっくりお休みになって、明日に備えてください」
私が考え込んで黙ってしまったからか、ミアは明るく声をかけてくれた。
ミアにお礼を言おうと顔を上げると、ミアは目の周りを赤く染め、瞳は今にも泣き出しそうに潤んでいた。
そのミアの顔を見て、私も涙が込み上げてしまった。
瞬きをしたら涙がこぼれてしまうだろう。
涙を見せたくない私は、うまく返事をすることができず、促されるままベッドに入った。
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