後宮に入りましたが、旦那さんが来ないので恋人を探します

国湖奈津

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私は事務所に一人。
訴えの内容を文書にまとめていた。

ただ、途中で困った。
今まではどう書けばいいか、文書の形式や記載事項のひな型がファイルにまとまっていた。
でも今回のような書類は過去の記録を探してもなかった。

初心者の私が考えて解決するわけがない。
ここで悩んでいても解決しない。
私はお隣に聞きに行くことにした。

お隣はリナレイの隣国、ランゲルトの商会だ。
私の働くウェッソン商会と同じような仕事をしているはずだから、事務員の方がいるはず。
私よりはベテランだろうから、何かアドバイスをくれるはずだ。


「すみません~」
私は声をかけて、扉を開いて中に入った。
タモハン語かランゲルト語か迷って、ランゲルト語を使った。

中はウェッソン商会と同じような事務所になっていたけれど、誰もいなかった。
ただ2階から足音がして、かすかに声が聞こえてくる。

2階で休憩中かもしれない。
私は2階に続く階段のほうへ向かって、階段下から大声で声をかけた。

すると2階から若い男性が降りてきてくれた。
私が困りごとを相談すると、愛想よく以前アルラシード宮殿に提出した書類を見せてくれた。
丁寧にアドバイスもしてくれて、どうにか文書にまとめることができそうだ。

「あの、それって、クイズですか?面白そう」
私は机の上に置かれていた1枚の紙が、ずっと気になっていた。

そこには見たこともない文字で文章が書かれている。
数字や□△○などもある。
ひらめきクイズのようなものだろうか。やってみたい。

「あぁ、これね。そうだけどまだ作ってる途中だから」
「え?あなたが作ったんですか?すごい。面白そう」
男性は照れているのか、紙を隠そうとした。

「あ!分かりました。最初と最後の文字は『皇帝陛下万歳』ですね」
私はすっきりして笑顔で男性を見た。

男性は表情を失っていた。
自信作のクイズが解かれてしまって、自信を失ったのかもしれない。

実は説明を受けながらも、こっそりクイズに取り組んでたから、すぐに解いたわけではない。
結構手こずった。
すごく面白いクイズだったから、自信を失わず、ぜひ作り続けてほしい。


私は文章の書き方を教えてもらったことに感謝し、男性と別れた。
ウェッソン商会に戻って文章をまとめ、宮殿に提出し、その日の仕事を終えた。


なんと翌日の午後には、ジョンお目当ての船は荷下ろしすることができた。
宮殿から役人が派遣されてきて、ナシュド家に指導が入ったらしい。

いつもは偉そうにふんぞり返ってるナシュド家の人たちが、青い顔をして役人の顔色をうかがっていて愉快だったと、ジョンは笑っていた。

「ダメ元で訴え出てみたが、まさかこんなに早く対応してくれるとはな。案外ここの偉い人たちは仕事ができるのかもしれねぇな。アランも、ありがとよ」
ジョンは私に礼を言ってくれた。

頭のどこかで嘆願なんて読んでくれるのかな?と思いながら昨日私は書類を書いていた。
でもアルラシード宮殿の役人はちゃんと読んで、対応してくれた。

ジョンも喜んでくれた。
嘆願書を書いてよかったと私は思った。
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