後宮に入りましたが、旦那さんが来ないので恋人を探します

国湖奈津

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ついに明日、外に出ると言う日、いつものようにタバールさんは夜やってきた。

「これを持って行ってくれ」

タバールさんは私に小さな箱を差し出した。
開けてみると、中には大きなピンクダイヤモンドのネックレスが入っていた。

「こんな高価なもの、受け取れません」

ジェーンだったら受け取っても不自然ではないけれど、ただの家出娘が受け取るには高価すぎる品物だ。

「君の瞳と同じ色だったから、買い求めた。なかなか渡せなくて持っていたものだが、良かったら持って行ってくれ。私が持っていてもしょうがないものだ。金に困った時には売ってくれていい」

なんだろう。
タバールさんてお金持ちなのかな?

それともこの国ではピンクダイヤがたくさん産出して安く買えるとか?
ジョンだったら詳しいだろうか。

私はうまく断ることができず、ネックレスを受け取った。


「ジェニファー、君の国リナレイは、一夫一婦制だな。タモハンは一夫多妻制。そのことについてどう思う?」

なんだろう?
何かのテストだろうか?

「どちらも長年の文化的・歴史的・宗教的背景があって成立した制度だと思いますので、どちらが良い悪いと言うことはなく、それぞれ尊重されるべき制度だと考えています」

タバールさんは満足そうにうなずいた。

「君は夫がタモハン人であることに抵抗があるか?」
「いえ、相手のことが好きなら関係ありません」

「相手に他に妻がいる場合どう思う?リナレイではあり得ないことだろう?」
「そうですね。私だったらその場合、相手の方を好きだとしても身を引くと思います」

できることなら、私だけを妻にしてくれる人と結婚したい人生だった。

「相手に妻はいるものの、今までいることを忘れていたし、一度も会ったことがないとしたらどうだ?そして一生君だけを愛すると誓ったら?」

なんだかどこかで聞いたことが有るような。
私とジュメイラさんの話みたい。

「そうですね。その場合、もう1人の妻の方がそれで納得していて幸せなら、私は嫁ぐと思います。でもそうではなく、一方的に不遇に扱っているなら、私はもう1人の妻の方が気の毒に思えて心から幸せに暮らせません。もう1人の妻が不幸でも何とも思わない相手の男性を嫌いになってしまうかもしれません」

この質問は、どうしても不遇な妻に感情移入してしまう。

カーン王子は私も幸せになれるようにしてくれた。
だから私はカーン王子とジュメイラさんのことを心から応援できたし、カーン王子とも友達のような関係を築けたと思う。


「そうか」

なんだかタバールさんはしょんぼりしてしまっていた。
私の答えが悪かったのかもしれない。

正解が分からないからしょうがない。
許してほしい。

「あの、私からも質問良いですか?タバールさんは結婚してますか?」
「妻が1人いる」
「そうですか」

はぁ。
どっと疲れが出た。

せっかく恋人になりたい人を見つけたのに。
タバールさんならカーン王子に頼めそうだと思ったのになぁ。

口も堅そうだし、若いけど多分結構偉い人だと思うし。

火事の中に飛び込んで人を助けようとする勇敢な人で、普段から国を守るお仕事をしてて尊敬もできる。

そりゃあこんな人女性がほっとかないよなぁ。

タバールさんも奥さんいるなら、私に触ったりしないでほしかった。
タバールさんにとっては、傷ついた動物を見つけ、心配して手を差し伸べるような感覚だったんだろうか。

私は好意を持たれてるかもと期待してしまっていた。
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