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「アラン 付いてこい」
1時間もしないうちに、ロブは手配を完了させたようだ。
裏口に用意されている馬車に、私はロブと一緒に乗り込んだ。
一言も話さないまま私は馬車に揺られ、街一番の高級ホテルに入った。
部屋に入ってすこしだけ安心した。
「ロブ、ちょっと窓から下見て。何かを探しているような州兵の格好をした人いる?」
ロブは窓に近づき、カーテンの隙間から外を見て、首を横に振った。
私はホッと一安心してソファに座った。
「ジェーン、なぜあんな場所にいた?追われているのか?その格好は何だ?タモハンの王子に嫁いだんじゃなかったのか?嫌で逃げてきたのか?だから言ったんだ、タモハンに嫁ぐのはやめろと」
ロブはいろいろ言いたいことが有るらしい。
「えーと、追われているってのは言いすぎだったわ。だけど護衛がついててロブと自由に話せなかったから書いたの。うまく説明できないんだけど、最初は幸せに暮らしてたのよ。それが何か手違いがあったと思うの。それでちょっと行動を起こしたら、なんだか大変なことに巻き込まれちゃってこうなったってわけ」
「全く説明になっていない」
ロブは怖い顔で私を見た。
私も説明になっていないことは理解してる。
でもどう説明すればいいのよ。
ここは必殺技を使おう。
「ロブはなんでウェッソン商会にいたの?」
秘儀・質問返しだ。
「私が任されている会社の1つがウェッソン商会だ。あそこはその中の1支店。元々来るつもりだったのが、火事があったことを知って視察に来るのが早まった」
ということは、私はロブに雇われていたということになるのか。
なんだか複雑。
「そうなのね。視察が早まってくれて本当に助かった。ロブがいなかったらどうなっていたか。本当にロブはいつも困ったときに側にいてくれる。ロブは頼りになるなぁ。さっきもすぐに行動を起こしてくれて、1時間も経たないうちにここに連れてきてくれたもんね。さすが仕事のできる男」
私は目的に向けて褒め殺し作戦を展開した。
「どうした?タモハンに嫁いだことを後悔しているのか?やはり私と結婚したいと思いなおしたのか?」
「ちょっと、いつの話をしてるのよ」
タモハンとの話が出る前は、両親がノリで私とロブを結婚させようと思った時期があったらしい。
でも正式な話ではなかった。
「あのね、ロブ。お願いがあって」
私はロブの隣に座った。
「な、なんだ」
ロブの声が上ずっている。これは良い兆候だ。
「お金を貸して。いえ、お金をちょうだい」
「何に使う?」
「ワディーナ州にいるお友達に会いに行こうと思ってね。だけどお金がないのよ。だからここからワディーナまで旅行をするのに十分なお金をちょうだい」
私はロブを拝んだ。
「私は別に構わないが。夫はどうした?ジェーン、君はこの国で結婚したんだよな?なぜ夫に頼まない?」
うっ。
痛いとことを突かれた。
確かに言われてみればそうだ。
どうしよう。
というか、私の夫って誰なんだろう。
今はスワイマン殿下の後宮にいるからスワイマン殿下なんだろうか?
でも私にその自覚はないし、スワイマン殿下も私を妻にしたくて後宮に入れたのでないのは明白。
いったい私ってどういう立場に今置かれてるんだろう?
それを確かめるためにも、カーン王子の所に行く必要がある。
懸命に考えたけれど、何も返す言葉が浮かばず、私は黙り込んでいた。
「不当な扱いを受けているのか?」
ロブを見ると、ロブも私を見ていた。
「不当な扱い?」
三食昼寝付き、豪華なお部屋とお風呂。
必要なものはなんでも言えば持ってきてもらえる。
後宮と言えば、イメージ的には陰謀渦巻く女の戦場という感じだけど、住んでるのは私1人だしなぁ。
カーン王子の所にいた時も、ジュメイラさんとは仲良くさせてもらっていた。
これを不当な扱いと言っていいのか?
どうなんだろう。
私はまた考え込むしかなかった。
「結婚相手とはうまくいってるのか?」
「会ったことない」
ロブは息を飲み、言葉を失っている。
「だから、お金のことを言いづらくてロブに頼んだの」
「そういうことなら、分かった。明後日でよければ送ってくよ」
「本当?」
良かった!
実はどの船に乗ればいいかとか全然分かってなかったから嬉しい。
それにやっぱり一人旅は心配だった。
ロブがいてくれれば心強い。
「私も次の視察に向かわなければならないから、ついでだ」
「ありがとう。すごく助かる。それと、悪いんだけどウェッソン商会では働けなくなっちゃった。みんなすごく良くしてくれたから、お礼を言っといてくれる?」
私はロブに頼み、早めにホテルを出て通路を通り後宮に帰った。
何度か周りを確認したけれど、多分私を探してる人はいなかったと思う。
あとは小隊長達が叱られないことを祈るしかない。
1時間もしないうちに、ロブは手配を完了させたようだ。
裏口に用意されている馬車に、私はロブと一緒に乗り込んだ。
一言も話さないまま私は馬車に揺られ、街一番の高級ホテルに入った。
部屋に入ってすこしだけ安心した。
「ロブ、ちょっと窓から下見て。何かを探しているような州兵の格好をした人いる?」
ロブは窓に近づき、カーテンの隙間から外を見て、首を横に振った。
私はホッと一安心してソファに座った。
「ジェーン、なぜあんな場所にいた?追われているのか?その格好は何だ?タモハンの王子に嫁いだんじゃなかったのか?嫌で逃げてきたのか?だから言ったんだ、タモハンに嫁ぐのはやめろと」
ロブはいろいろ言いたいことが有るらしい。
「えーと、追われているってのは言いすぎだったわ。だけど護衛がついててロブと自由に話せなかったから書いたの。うまく説明できないんだけど、最初は幸せに暮らしてたのよ。それが何か手違いがあったと思うの。それでちょっと行動を起こしたら、なんだか大変なことに巻き込まれちゃってこうなったってわけ」
「全く説明になっていない」
ロブは怖い顔で私を見た。
私も説明になっていないことは理解してる。
でもどう説明すればいいのよ。
ここは必殺技を使おう。
「ロブはなんでウェッソン商会にいたの?」
秘儀・質問返しだ。
「私が任されている会社の1つがウェッソン商会だ。あそこはその中の1支店。元々来るつもりだったのが、火事があったことを知って視察に来るのが早まった」
ということは、私はロブに雇われていたということになるのか。
なんだか複雑。
「そうなのね。視察が早まってくれて本当に助かった。ロブがいなかったらどうなっていたか。本当にロブはいつも困ったときに側にいてくれる。ロブは頼りになるなぁ。さっきもすぐに行動を起こしてくれて、1時間も経たないうちにここに連れてきてくれたもんね。さすが仕事のできる男」
私は目的に向けて褒め殺し作戦を展開した。
「どうした?タモハンに嫁いだことを後悔しているのか?やはり私と結婚したいと思いなおしたのか?」
「ちょっと、いつの話をしてるのよ」
タモハンとの話が出る前は、両親がノリで私とロブを結婚させようと思った時期があったらしい。
でも正式な話ではなかった。
「あのね、ロブ。お願いがあって」
私はロブの隣に座った。
「な、なんだ」
ロブの声が上ずっている。これは良い兆候だ。
「お金を貸して。いえ、お金をちょうだい」
「何に使う?」
「ワディーナ州にいるお友達に会いに行こうと思ってね。だけどお金がないのよ。だからここからワディーナまで旅行をするのに十分なお金をちょうだい」
私はロブを拝んだ。
「私は別に構わないが。夫はどうした?ジェーン、君はこの国で結婚したんだよな?なぜ夫に頼まない?」
うっ。
痛いとことを突かれた。
確かに言われてみればそうだ。
どうしよう。
というか、私の夫って誰なんだろう。
今はスワイマン殿下の後宮にいるからスワイマン殿下なんだろうか?
でも私にその自覚はないし、スワイマン殿下も私を妻にしたくて後宮に入れたのでないのは明白。
いったい私ってどういう立場に今置かれてるんだろう?
それを確かめるためにも、カーン王子の所に行く必要がある。
懸命に考えたけれど、何も返す言葉が浮かばず、私は黙り込んでいた。
「不当な扱いを受けているのか?」
ロブを見ると、ロブも私を見ていた。
「不当な扱い?」
三食昼寝付き、豪華なお部屋とお風呂。
必要なものはなんでも言えば持ってきてもらえる。
後宮と言えば、イメージ的には陰謀渦巻く女の戦場という感じだけど、住んでるのは私1人だしなぁ。
カーン王子の所にいた時も、ジュメイラさんとは仲良くさせてもらっていた。
これを不当な扱いと言っていいのか?
どうなんだろう。
私はまた考え込むしかなかった。
「結婚相手とはうまくいってるのか?」
「会ったことない」
ロブは息を飲み、言葉を失っている。
「だから、お金のことを言いづらくてロブに頼んだの」
「そういうことなら、分かった。明後日でよければ送ってくよ」
「本当?」
良かった!
実はどの船に乗ればいいかとか全然分かってなかったから嬉しい。
それにやっぱり一人旅は心配だった。
ロブがいてくれれば心強い。
「私も次の視察に向かわなければならないから、ついでだ」
「ありがとう。すごく助かる。それと、悪いんだけどウェッソン商会では働けなくなっちゃった。みんなすごく良くしてくれたから、お礼を言っといてくれる?」
私はロブに頼み、早めにホテルを出て通路を通り後宮に帰った。
何度か周りを確認したけれど、多分私を探してる人はいなかったと思う。
あとは小隊長達が叱られないことを祈るしかない。
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