チャリンコマンズ・チャンピオンシップ

古城ろっく

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第17話 ロックンローラーとビーチクルーザー

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 目の前に日本海が見えてくる。そのすぐそばに、ゴールの食堂があった。
 先頭を行くのは茜。続いて空。やや遅れて良平と梨音が続く形になる。
 コースはオンロード。ここまで来ると大したアップダウンもない。限りなく平坦に近い下りだ。見通しのいい片側一車線。そのうちの左車線のみがチャリチャンコースとして封鎖されている。右側は交互通行で、車通りは少ない。
(まあ、道路の封鎖って簡単に言うけど、なかなか出来るものじゃないよね)
 周辺住民だって日常生活に支障がある。実際にチャリチャンに対する苦情や、関連ブログの炎上も一部で起こっているようだ。しかし、
「おおーい。チャリチャン選手。がんばれよー」
「二人乗りかい。仲がいいんだね」
「凄い自転車だね。がんばって」
 などと、すれ違った自動車の車窓から声をかけてもらえることもある。要は賛否両論なのだろう。この大会が単純に楽しみな人や、地域活性化に役立つと考えている人もいる。人の心情は複雑だ。
「これから行く食堂は、僕たちを受け入れてくれると良いな」
 空がポツリと言った。茜が笑う。
「なんだ?チャリチャン出場者お断りの店でもあるのか?」
「いや、実際にあるらしいよ。この間ネットニュースになってた」
「マジか」
「ああ、あれ炎上してたね。おかげでアクセス数は稼げているみたいだけど」
 良平も言う。梨音も心当たりがあるのか、後ろで頷いていた。
「さて、このままゴールかな。食堂だ」
 良平が言う。その食堂はこちらから見て右側にあった。つまり、片側交互通行を敷いている車線を横切る必要があるらしい。
 交通整理の人が立って、両方からの車の往来を止める。この道もチャリチャンが優先らしい。参加者の乗る自転車が接近すると、車を止めてくれる仕組みなのだろう。
「お疲れ様です」
 交通整理の人に、空が声をかける。
「うす!がんばってください!」
 バイトか何かなのだろう。慣れない手つきで旗を振る青年が、空に言った。この寒い中で道路に立ちっぱなし。なんともご苦労なことである。


「ゴール!アタイらの勝ちだな」
 茜が一着で駐車場に入り、勝ち誇る。
「えっと、僕も勝ったのかな?」
 続いて空が自信なさそうに言う。良平たちには勝ったが、茜に負けているせいだろう。
「いや、空も勝ちだ。そして昼飯は梨音のおごりだ」
 良平が楽しそうに言った。不満そうに顔をしかめるのは梨音である。
「え?なんであたし一人のおごりなんだよ」
「だって、ビリだろう」
「そりゃぁ、良平君が前の席に座っているんだから、必然あたしが最後尾だけど……」
「じゃあ、梨音のおごりだ」
「うー。納得いかないよ。っていうか、それじゃあ良平君が負けることは絶対にないんじゃないか」
「だからこそ賭けを提案したんだぜ?勝てない勝負はしない主義なんだ」
「イカサマだよ。普通にずるいよ」
 仲のいい新婚夫婦である。


 数時間後。
 夕暮れ時。日が沈む海をバックに、一組のカップルが砂浜を走っていた。
「うふふふっ。こっちだよー、良平君」
「あははっ。待てよー、梨音」
 真冬の日本海の砂浜を、重装備な防寒着を着て、分解した自転車を担いで走る。そんな奇妙なカップルであった。
「梨音。お前、速すぎだぞ」
「良平君が遅いんだよ。自転車使えないんだから、急いでこの砂浜を抜けないと」
「おいおい、勘弁してくれよ。僕はタンデム一台丸ごと担いでいるんだぞ。しかも砂が足を絡めとるから、余計にきつい」
「あたしだって、ホイールだけは持ってるでしょ。だから条件は同じだよ」
「同じわけあるか」
 白い砂浜は柔らかく、足は砂に潜る。靴の中が砂だらけだ。走るために地面を蹴ると、足元の砂が舞い上がるばかりで前に進まない。
「ねぇ。自転車使ってみる?ワンチャンあるかも」
「梨音、それ何回目だ?さんざん試しただろうが」
 ロードタンデムの細いタイヤに体重を乗せれば、あっという間に砂にタイヤが埋まる。もちろん普通の自転車でも少しマシなだけで、結果は同じだった。
 遠くに、茜と空が見えた。やっぱり向こうも悪戦苦闘しているようだ。


『はいはーい。いつもお馴染みミス・リードですよぉ。今回、多くの選手が山岳地帯を抜けて、次のセクションに入ったみたいですねぇ。そう、砂浜ですよぉ。
 まあ、見ての通り隣に国道も通っているんですが、そっちはさすがに封鎖すると困るとのことで、レースの許可が下りなかったんですよぉ。で、海水浴シーズンオフをいいことに、砂浜全体を貸し切っちゃいましたぁ。
 ちなみに、海の方も使用許可が出ているので、真冬でも泳ぎたい人は自己責任でどうぞ。海難救助隊のお世話にならない範疇でお願いしますね。
 ところで、この放送を映像付きで見ている人、何か気づきませんかぁ?
 そう。今回はドローンをお借りして、空中から撮影しています。これ、私が操縦しているんですよぉ。遠くに選手たちが見えますねぇ。あ、ちょっと待って。これって風に煽られてる!?え?どうやって立て直すの?待って、やめて。墜落しないでぇー。
 あ……えっと――
 こ、これって借り物でしたっけ?おいくらで……え?ご、50万!?
 すみません。許してください何でもしますからぁ。お金は無いけど身体で払いますから〈ん?今何でもするって〉って言ってください。〈ヨツンヴァインになるんだよ〉って命令してください。〈あくしろよ〉お願いします。
 え?ノンケの方じゃないんですかぁ?じゃ、私の身体は……あ、興味ない?臭そう?そ、そんなぁー。それじゃあローンでお願いしますぅ。ノンケの方に体売って弁償しますからぁ』

 何やらよく分からないうちに、ミス・リードに借金が出来たようだ。そんなことは空と茜にとって些細な問題だった。
 いま問題なのは、この砂浜をどう走るかだ。
「そもそも、タイヤが埋まってるんじゃテクニックも何もないな」
 茜が地面に埋まったクロスファイアを引っこ抜く。砂だらけの車体を軽くはたいて、再び跨っては少し進む。また刺さる。
「せめて、どぶ板でも敷いてくれたらよかったんだけど……」
 そう言う空も平等に埋まっていた。悪あがきと言わんばかりに、ペダリングをしてみる。見る見るうちに後輪が高速回転し、その後ろに砂の山が形成される。後輪はゆっくり地面に沈み、やがて硬い地層を掘り当てた。
(行けるっ!)
 空がそう思った時、エスケープは前に進んだ。
 数センチほど。そのあとは前輪がより深く刺さるだけである。
「……ここ掘れワンワン」
「それ、面白いつもりか?」
「くぅーん……」
 うなだれながら犬の真似をする空は、女である茜から見ても可愛い。それこそ掘られるんじゃないかと心配になる。
「それはそうと、あんまり無茶な走りをすると、エスケープ壊れるぞ」
「え?嘘」
 空は慌ててエスケープを引っこ抜くと、車体についている砂を払いながら点検をする。プーリーには砂が詰まり、BBまで砂まみれ。おかげで状態がよく分からないが、空転させて変速できるということは大丈夫だろう。多分。
 フレームにも亀裂や波打ちはない。塗装も剥がれていない。チェーンはルブと細かい砂が混ざって泥団子みたいになっているが、とりあえず回る。
「だ、大丈夫みたいだよ。今夜はクリーニングが必要かもしれないけど」
「そうか。ディグリーザーとか持ってきているか?」
「うん。キャリアバッグに入ってる」
 お馴染みTOPEAKのバッグには、そこそこの収納量がある。空の場合は長期戦を予想した装備が満載だ。意地でもサドルバッグ一つにまとめたがった茜とは違う。
「このコートも、お気に入りだったんだけど……」
 白いダッフルコートも、たった半日で砂だらけである。昨日コインランドリーで洗濯したばかりだからこそ、悔やまれる。
「雪よりマシかもしれないけど、走りづらいことに変わりはないな」
「こんな時、鹿番長さんなら有利かもね」
「だろうな」
 太いタイヤで雪の上を走行していた彼なら……いや、さすがに4in必要かどうかは分からないが、せめて2in近くあれば走りやすいだろう。
 そう考えていると、後ろから一台の自転車が接近してきた。
「噂をすれば、ファットバイクか?」
「いや、何か違うような……そうでもないような?」
 空が首をかしげる。その視線に気づいたのか、後ろからやってきた自転車の男が、空たちを見た。

「Hey!ガールズ。俺様に何か用かい?」
 かなり巻き舌な発音の日本語(?)で、男は話しかけてくる。ペダルを思いっきり逆回転させて、片手でハンドルを握りながら、もう片方の手は意味もなく横に差し出されていた。
 身長180cmはありそうな巨漢だ。ワイルドな革ジャンとタイトなジーンズが、その逆三角形の身体を引き立てる。自転車選手と言うよりも、水泳選手のような見た目だ。顎髭とティアドロップのサングラスが目を引く。
 その男は、わざわざ自転車を降りて言った。
「Wow!キュートなガールが二人も、俺に熱視線をアピール……これがモテるってことか。罪だぜ全く」
「いや、何のことか知らないが、お前は大きな勘違いをしている」
 茜はすかさず男を指さして言う。この辺は茜の強気さが出るところだ。
「いいか。アタイはお前に惚れてない。言いたいことは以上だ」
「え?いや、多分もっと重要なところがあったと思うんだけど?」
 勝手に女の子扱いされた空が驚くが、茜は満足げに自転車に跨って走り出してしまう。
「Oh!これだから、せっかちさんは困るぜ。せっかく会えたんだ。旅は道連れ、世はなんだっけ?とにかく一緒にGo!だぜ!」
 そう言うと、その男も一緒に走り出した。どうやらおしゃべり好きであるらしい。タイヤの太い自転車を漕ぎながら、身振り手振りを交えて話しかけてくる。
「俺の名前はボブ・バレンタイン。こっちは相棒のブライアン」
 革ジャンの胸ポケットから取り出したのは、フェレットのぬいぐるみだった。
「やあ、ボクはブライアン。よろしくね(裏声)」
「よ、よろしく……」
 ぬいぐるみを喋らせるマッチョマンに、空は引きつった笑顔で答える。
「僕は、空。あっちの女の子が茜って言います」
「OK!空ちゃんと、茜ちゃんだな。二人ともcuteな名前だぜ!可愛い女の子が二人、両手に花だな。Yeah!!」
「いや、僕は違います」
「謙遜するなよBaby?...日本人の奥ゆかしさは俺たちにとって美徳じゃないぜ」
 人の話を聞かないボブである。どうやら空を本当に女の子だと思っているらしい。前を走っていた茜が肩を震わせて笑った。そのせいでもないのだろうが、砂にタイヤを取られて転倒する。
「うぁっ、いってぇ!空のバカ野郎!」
「いや、それ僕のせいなの?」
 完全に八つ当たりで怒られた空は、茜が転んだ地点で停止する。なぜかボブも同じ地点で停止した。しかもペダルを逆に半回転ほど動かして。
「Oh……大丈夫かい?茜ちゃん」
「……なんでお前の車体は沈まねぇんだよ」
 茜が苦々しく言うと、ボブは待ってましたとばかりに自分の自転車を担いだ。そして茜の目の前に置きなおすと、嬉しそうに語り始める。
「こいつは、ビーチクルーザーっていうんだ。かっこいいだろう?RAINBOW BEACH CRUISER 26”MEN’S BLACK COMPONENTS Shade of Pale “BOB Customボブカスタム”だ。湘南のアメリカンなバイクだぜ」
「湘南はアメリカじゃないだろ」
 どうやらボブは、アメリカ風の自転車を貴重な車両と認識して自慢しているらしい。実際に正真正銘アメリカ製タンデムとやり合ってきたばかりの茜にしてみればピンとこない話だ。
「こんなに太いタイヤだって、Japanじゃ見かけないだろう?」
「いや、僕たち、これより太いタイヤに出会った気がします」
「hahaha!ホントに?」
 空が言ったことを、ボブはジョークだと思って笑い飛ばす。実際にボブの使っているタイヤは2.5in程度の太さを持つ。鹿番長が4.0inである。
(でも、確かにファットバイクとは違う種類の自転車みたいだ)
 空も茜も、気になったからには聞いてみる。こういう時のミスり実況だ。

『はい、こちらミス・リードですぅ。茜さん、どうしましたぁ?』
「なあ、ミス・リード。ビーチクルーザーって何だ?ファットバイクとどう違う?」
『はぁ……?えっと、どうして今そんなことを?』
「いいからいつもみたいに教えてくれ。期待しているからさ」
『そうですか?……まあ、期待されてしまったなら応えましょう。質問が来たなら答えましょう。それが私のお仕事ですから』
 いつもより少しだけ歯切れと察しの悪いミス・リードだったが、自転車の解説となれば饒舌。いつも通りの早口で、まくしたてるように解説が入る。

『ビーチクルーザーは、その名の通り海岸を走ることを目的にした自転車ですねぇ。それそのものはスポーツ車ではなく、サーファーたちの移動手段という形で使われるのがほとんどです。
 アメリカの海岸は広いですし、サーファーは良い波を求めて移動するものですから、こういった徒歩に勝る移動手段が欲しかったのかもしれませんねぇ。今では本当に浜を移動するというより、ルックバイクとして運用されることが多いようです。
 ファットバイクとの違いについては、季節感や歴史、性能など、でしょうね。厳密な境目はありませんけど、ファットバイクが雪道に対応した冬の乗り物に対して、ビーチクルーザーは夏の海岸線が専門。ファットバイクがMTBのタイヤを太くしたものなら、ビーチクルーザーはシティサイクルのタイヤを太くしたもの。
 ちなみにファットバイクが2005年に規格を決定し、2010年に完成車を発売したのに対して、ビーチクルーザーは1950年代から存在します。
 よく、ファットバイクのルック車をクルーザーと混同する人や、クルーザーを下に見る人がいますが、それぞれコンセプトも違うので一概にどちらが上とも言えないですねぇ』

 なるほど。と空は思う。ボブのクルーザーは変速ギアもなく、部品一つ一つをとってもシティサイクルと同じ足回りを使っている点が多い。きっと値段的にも空の自転車よりかなり安いだろう。
 ただ、現に空や茜が苦戦している砂浜を、ボブは悠々と走っている。段差や坂道のないビーチだからこそギアがいらない。コーナリングの必要もないせいか、ホイールベースは長く、ハンドルも大きく縦に歪曲したモンキーハンドルを搭載している。
 コストやグレードの問題ではない。この砂浜に似合う車体を追求した結果完成する、合理的な車体なのだ。
「えっと、ボブさん。その……よく、見せてもらってもいいですか?」
 空の自転車好きが発作を起こす。それをボブは笑って快く受け入れた。
「さあ、遠慮なくLookだ。なんなら乗ってみてもいいぜ。Cute Girl空ちゃん」
 その車体は、エメラルドグリーンの海を思わせるカラーリングに、オートバイのイメージを散りばめた流線型フレーム。
 サドルは後ろに長く、まるでリアキャリアと一体化したような見た目になっている。革製の擦り切れたサドルを、空は何となく撫でてしまった。
「wow!そこに目をつけるとは鋭いね。俺のカスタムの中では一番のお気に入りが、そのバナナシートなんだ。ちなみに、砲弾型ライトとモンキーバーハンドルも付けてもらったんだぜ」
「へぇ……こだわってるんですね。このサドル……ひぁん!?」
 ビーチクルーザーに目を奪われているうちに、空はボブにお尻を撫でられた。小さく、ただしっかり悲鳴を上げた空だったが、なぜかボブは手を止める気配がない。
「乗ってみるかい?いいんだぜ。この小さなお尻が、俺のバナナシートに乗るなら大歓迎さ。さあ、Let’s Ride!」
「え?あ、いや……ふわわっ」
 遠慮する前に、空の小柄な体が宙に浮く。ボブが空の両脚を後ろから抱え込む姿勢で持ち上げていた。長い脚が折り畳まれた状態になった空は、巨体のボブの剛腕に包まれて抱き上げられる。なんだか恥ずかしい。
 そして、バナナシートの上に着地。自転車乗りの性なのだろう。空はついハンドルを握り、ペダルに足を着けてしまう。
(うわぁ。何だろう。初めての乗り心地だ)
 サドルは低く、かなり後ろに寄っている。MTBなら最大までサドルを下げた時のような乗り心地だ。ペダルはやや前方にあり、体重がかからない。モンキーハンドルは手前に大きく倒されており、かなり近い距離にあった。
(たしか、ボブさんはのけぞるような姿勢で乗ってたっけ?)
 空も真似をして、背中を反らしてみる。まず前屈みが前提になりやすいスポーツサイクルとは真逆のポジション。新鮮な驚きがある。
 ただ、ペダルが回らない。変速ギアありきで走ってきた空にとって、シングルギアを漕ぎだすのは久しぶりだ。しかも前述した姿勢のせいで、力が入りにくい。
「あ、あの……漕ぎ出せないんですけど……」
「You are joking?いや、まあいいや。OK!任せろよ」
 まさかスポーツバイクに乗るほどの脚力を持っている空が、ペダルを漕げないというのは信じられない話だった。ボブは半分以上ジョークだと考えながら、空の後ろに座る。
 前後に長いバナナシートも、さすがに二人乗りを想定してはいないので狭い。必然、二人の身体は密着することになる。
「え?ボブさん?」
「俺が代わりに漕いでやるよ。前だけ見て、ハンドルをしっかり握ってな。Don’t look back!」
 空の足を押しのけて、ボブがペダルに足を乗せる。行き場を失った空の脚は、仕方ないので小さく丸めておくことにした。
 言われた通り、ハンドルを持って前だけを見る。するとボブが、空の胸に手を回してきた。一人乗り用の車体に二人乗りするなら、確かにその乗り方しかないのだろう。なにやら指先がくすぐったく動いているが、気にしないことにする。
 ボブがペダルを漕いで、ビーチクルーザーが走り出す。それは、空にとって異次元の動きだった。
 さっきまであれほど苦戦した砂浜を、今は余裕で走っている。ハンドルは重く、曲げるだけでも自由が利かない。速度は遅く、よくよく見ればタイヤは砂にがっつり埋まっている。それはそうだ。二人分の体重を乗せているのだから。
 それでも、確かに走っている。確実に進んでいる。それだけでも驚きだった。
(楽しい。凄いよ、ビーチクルーザー)
 理屈なんかない。ただただ爽快な走り心地だった。やがて西の空に夕日が落ちて、当たりが暗くなる。星たちが夜空に顔を出し、砲弾型ライトが砂浜を小さく照らす。
 波の音しか聞こえない。街の光も届かない。まるでこの世界に、一台の自転車を残してすべて消えてしまったような気分。どこまでも続く砂浜を、どこまでも進めるような気分。
「Hahaha!どうだい?空ちゃん?」
 ボブが耳元で囁く。空は振り返らずに言った。
「気持ちいいです。こんな感覚、初めてです」
「そうかい?Good!いいじゃないか!」
 なぜか、ボブの動きが激しくなる。ペダリングの方ではなく、胸に当たっている指先の方が。
 ピンポイントで繊細に先端を擦られるたびに、くすぐったいだけでない感覚が空の脳を直撃する。全身が痺れる。それに頭が痛い。丁度、刺激的に甘いチョコレートを食べ過ぎた時のような頭痛がする。


「おいおい、アタイも愛車もほったらかしかよ……」
 空とボブに置いていかれた茜は、空のエスケープを回収すると、砂浜の端に寝かせた。もちろん自分のクロスファイアも寝かせておく。ついでに自分も寝てしまおうか。
「なあ、ミス・リード。あのボブっていう変態は何者なんだよ。確かにマッチョだが、自転車選手のそれじゃない。あんな車体で長距離を走れるとも思えないんだが……」
 と、率直な疑問を凸電する。ここで遭遇する参加者と言うことは、自分たちと同じ道を、同じ日数で走って来た猛者ということになる。ボブからはそんな雰囲気を感じないのだ。
 案の定、ミス・リードからの返答はシンプルだった。
『え?ボブ……って誰ですか?』
「ビーチクルーザーで走っているやつだよ」
『いや、そもそもクルーザーで登録していた選手は数名いましたけど、皆さん初日にリタイアを表明しています。それにボブなんて人、本名でもエントリーネームでも登録されてないんですけど?』
「……はっ、やっぱりな」
 予想が的中してしまった茜は、空に向かって走り出す。


 ようやくハンドルの扱いに慣れてきた空は、単純にこのオフロードマシンを楽しんでいた。鈍重な車体であるが、走っているだけでも楽しい。
「ボブさんって止まるとき、ペダルを逆回転させてましたよね?あれって何で……」
「Oh!Ahaha.あれは俺のクルーザーのブレーキなんだ。ハンドルを見てみな。左にしかブレーキがついてないだろう?」
 確かに、左側にしかブレーキレバーが付いていなかった。それは前輪のキャリパーブレーキに繋がっている。通常と逆位置なのは、わざと改造した結果だろう。
「で、後輪はコースターブレーキってものが付いている。ペダルを逆回転させるとブレーキがかかる仕組みなのさ。Wonderfulだろう?」
 一見すると片方しかブレーキが付いていないように見える車体だが、ちゃんと法律上でも公道を走れる車体である。そのコースターブレーキと呼ばれる装置は、足で作動するブレーキだった。
 ピストの固定ハブとは全く違う。固定ハブはペダルを止めると車輪も止まるが、コースターは車輪が空転する。固定ハブはペダルを逆回転させると車輪も逆回転するが、コースターは制動するのみにとどまり逆回転しない。
 この機構が採用される理由は、車体によってさまざまだ。ビーチクルーザーに限って言えば、サーフボードを片手に持って運転することを前提にしている。そのため、片手操作でもブレーキがかかるようになっているのだ。

「空!ひとまず降りろ。レースに復帰するぞ」
 後ろから声がする。茜だ。
「え?あ、茜」
「……ったく、レースそっちのけで何をしているんだよ」
 自転車を置いてきたらしく、自力で走る茜は息を切らしながら言った。
「Wow!次は茜ちゃんがクルーザーに乗る番かい?Welcome」
「ほざけ。そもそもお前はチャリチャン参加者じゃない。ただの地元住民だろう」
「……What?何言ってるか分からないぜ?茜ちゃん」
 手のひらを上に向けて、大仰にすっとぼける。そんなボブに茜はスマホを突きつけた。スピーカーモードでミスり速報と繋がっている。
『えー。地元住民の方に連絡します。本日、この海岸線一帯はチャリチャン運営委員が自治体に許可を取って貸し切っています。危険ですので、立ち入らないようにしてください。自転車が高速で通過する恐れがあります』
「Wait!俺が参加者じゃないって証拠は?」
『そもそも登録されていれば、選手名簿、および私の記憶に書き込まれているはずです。ついでに言いますと、GPS付きの腕輪で管理されているはずです。車体におきましても、タグを配布しております』
 ミス・リードの説明を補足するように、茜が腕輪を見せる。一見するとプールやスパのロッカーについている鍵みたいなデザインだが、その中には選手情報や車体情報、その他の記録がGPSと共についている。
 観念したのか、ボブはゆっくりと自転車を降りる。ようやくボブの両手から解放された空も、少し混乱したまま降りてきた。
「くっそ……俺だって、チャリチャンに出たかったんだよ。でも、いろんな都合で出られなかったんだ。少しくらい夢見せてくれてもいいだろう。誰だか知らないけど、中学生みたいな女の子二人と出会えたんだしさ」
「それ、目標が自転車じゃなくなってませんか?」
「っていうか、空を中学生の女の子だと思ってナンパしていたなら犯罪スレスレだぞ。オッサン」
 実際には男の子(男の娘?)であるため無罪放免。となるかどうかすら怪しいが、今のところ実害がないから無罪だろう。
「Shit!運営の女め。お前さえいなければ……」
 と、ボブはミス・リードに八つ当たりをする。
(ああ、こいつはミスり速報を見ていないのか……)
 考えても見れば、空と茜は本大会で注目の選手だ。ミスり速報は動画共有サイトでも生配信されているので、見るだけなら誰でも見ることができる。
 ボブはミス・リードの名前も、空の性別も知らなかった。つまり、言うほどチャリチャンに興味がなかった、という結論だろう。
 だというのに、ボブはミス・リードに汚い罵声を浴びせる。
「Fu●k you!このビッチが!」
 ミス・リードも、電話越しに大声を上げる。
『F●ck me!私はビッチです!』
「『Yeah!!』」
「なんで通じ合ってんだよ!」
 茜は電話を切った。

「……で、お前は一体何が目的だったんだ?ナンパか?自転車自慢か?」
 茜が訊く。ボブは黙って下を向いていたが、
「ボブさん。僕、あなたの事が、その……知りたいです。もっと――」
「OK!何でも聞いてくれ」
「よし、どんな死に方をしたいか言ってみろ」
 空が訊いた途端に態度を変えるボブを見て、茜がキレる。
「まあ、俺はただの通りすがりの地元民だよ。見ての通り、自転車は大好きだけどな」
「大好きなら手入れくらいしてやれよ。まして海風当たるところなんだから、チェーン錆びてんじゃねーか」
「俺の愛車は手入れなんかいらないくらいに頑丈なんだよ。4万もする高級車だぞ。1万程度のママチャリとは違う」
「100万のマウンテンバイクだって手入れが必要になるんだよ。整備しないで乗れる自転車なんかこの世にあってたまるか」
 次郎は綺麗に整備していたな。と茜は振り返る。なぜか顔が熱くなるのを感じた茜は、次郎の事を考えるのをやめた。
「俺は元々サーファーなんだ。だからサーフボードを運ぶために、この車体を買ったんだ。冬はサーフィンができないから、こうして自転車に乗っている」
 ボブは急に語り始めた。真面目に語ると似非英語が出てこないらしい。ちなみに、言うまでもなくボブは日本人。名前も偽名だ。
「俺は、砂浜じゃチャンピオンなんだ。だから少なくとも砂浜じゃ最強だってところを見せたくて、チャリチャンに乱入した。分かるだろう?このクルーザーを砂の上で転がすには、それなりの技術が必要になる。俺はここじゃ世界一だ!」
 確かに、太いタイヤと重い車体を扱うのがどれだけ大変か。乗った空はもちろん、見ていた茜もよく分かる。しかし、それを証明するには他のやり方があったはずだし、何より間違った証明などできるはずもない。
 遠くに、大きな2輪トレーラーを牽いたファットバイクが見える。4.8inタイヤとクロモリの頑丈なフレーム。まるで軍用バイクのような見た目の自転車は、あっという間に茜たちを抜き去っていった。
『エントリーナンバー089 軍隊シロクジラさん。砂浜に入ってからのスピードが半端じゃありません。ついに空さんと茜さんまで抜きました。これで15分の間に9人抜き達成です』
 上には上がいた。
「ほらな。お前は砂浜でさえチャンピオンになれないんだよ」
 なぜか茜が偉そうな態度。一方でシロクジラは奇声を発しながら、楽しそうに彼方へ消えていく。
「……そうだな。俺、間違ってたよ」
 ボブは立ち上がると、ビーチクルーザーを持って砂浜を後にする。そのまま国道に出て、クルーザーに跨りなおした。
「短い間だったが、楽しかったぞ。また会おうな。空ちゃん。茜ちゃん。その時まで、俺は本当にBIGなBIKE乗りになってるぜ!」
 親指を立てるボブに、茜と空も同じポーズで応える。空には星が輝いていた。きっとボブは、この星と海を見るたびに空たちを思い出すだろう。空たちがボブを覚えているかは知らんけど。





 侵入者であるボブの問題も解決したため、ミス・リードは他の選手の実況に移る。
 本音を言えば、実況すべき本命はこちらだったと言えるだろう。ボブなんかじゃなく、真っ先に放送すべき事柄だ。

『さあ、砂浜コースをいち早く抜けたのは、やはりこの男。アマチタダカツさんです。もうエントリーナンバーは覚えてもらえましたね。そう。001です。もう一位になるためだけに出場したような強者。運命に約束された男。
 そんなタダカツさんを追うのが、現在2位の中学生。鹿番長さんです。ファットバイクを漕ぎ続ける体力と精神力。なによりルックバイクを馬鹿にした人を、すべて見返してやろうという根性。
 彼の熱い走りはハイライトでお送りしたいところですが、今はそれより重要なことがあります。そう。王座交代の可能性もある一騎打ちですよぉ』

 ミス・リードが興奮気味に語る中、鹿番長は砂浜を抜けて停車していた。
 その数メートル先に、アマチタダカツが……今大会の初日から、ずっとトップを独走していた男がいる。
 お互いに、自転車に跨ったままの停車。先に口を開いたのはタダカツだった。
「我に追いつくとは、まずは見事と言っておこう」
「まだそれを言うのは早いぜ?俺はこれから、お前をブッちぎるんだからな」
 鹿番長がペダルを漕ぎだす。砂浜に対応して気圧を下げた26×4inタイヤが、大きなロードノイズを響かせながらアスファルトを蹴った。
「その意気や良し。このアマチタダカツ、全力で応えよう」
 タダカツも、自転車を走らせる。こちらは音もなく、まるで空に浮いているかのように静かだ。
 彼の周りだけ、風が止んでいるようだった。道端にいた猫ですら警戒せず、その場を一歩も動かない。
 仮にタダカツが電柱にぶつかっても、幽霊のようにすり抜けるんじゃないか。そう思わせるほど、彼の周囲は空気が違った。
 それでも、鹿番長は戦いを挑む。
「ここまで来たんだ。暫定一位でんせつは貰っていくぜ!」
 必然、ペダルが早く回る。ターニーがもどかしい。もっとギアを重くできたなら、さらに簡単に加速できるのに。
 あと少し。確実に迫っている。もうすぐ、アマチタダカツを抜くことができる。そうなれば当然、鹿番長がトップだ。

「なるほど。その車体でここまで食い下がるか。よき乗り手であった。ゆえに……惜しい」

「何、言って……?」

 ようやく並びかけた時、鹿番長の身体が傾いた。
(んだよ……もう少しで王座トップだってのに……)
 力が入らない。速度も下がる。このままでは落車――寸前で、
(まだ、終焉しまいには出来ねぇ!)
 580mmしかないハンドルバーを叩き、再び体勢を立て直す。
 呼吸ができない。まるで周囲の空気が薄れていくように、酸素が足りなくなる。ファットバイクのタイヤが膨張していないことを見ると、本当に空気が薄いわけではなさそうだ。
 脚が痛む。筋肉が固まったようだ。関節も動きが悪い。
 車体にトラブルが起きたわけでもない。しかし体調面でも自覚がない。しいて言えば腹が減っているが、それ以外で変調は無かったはずだ。
(ここまで来て、敗北まけられるかよ……)
 視界が暗くなる。耳鳴りもする。口の中には苦水が逆流する。
 目を閉じたくなる。まるで2、3日寝ていないときの睡魔のように、逆らえない誘いが脳裏にやってくる。今考えるべきでない話題ばかりが思い浮かび、多くの疑問に対して支離滅裂な結論が結びつく。
(だが、俺の勝利かちだ)
 鹿番長がにやりと笑う。ついに、彼はタダカツを追い抜いたのだ。
「うおぉぉぉおお!俺が、優勝者テッペンだぁああ!」
 そのまま、ゴールを迎える。極太のタイヤがゴールテープを切り、空や茜が祝福の拍手をくれる。
 鹿番長が、この長くにわたるチャリチャンを制したのだ。


 という夢を見た。
「――っは!」
 起き上がった鹿番長は、自分の位置を確認する。まだ自転車は倒れていない。進んだ距離と速度から、自分が正気を失っていたのは数秒から十数秒ほどだったと推察される。少なくとも20秒は越えていないだろう。
 そのわずかな時間のうちに、タダカツは大きく距離を開けていた。一方の鹿番長は加速できない。体がだるいのも理由の一つだが、そもそもファットバイクは加速も巡航も苦手である。トップスピード自体は意外に速いが、初速を得るのに時間がかかる。
 変速ギアはトップのまま、意識を失って減速してしまった。今からギアを戻すには速度が足りず、このまま漕ぎ出すのも苦しい。
(どこからだ!?一体どこから幻想まぼろしだった!?)
 それを教えてくれたのは、ミスり速報だった。

『鹿番長さん、あと一歩のところで減速です。トップは依然変わらずアマチタダカツさん。しかし、惜しいですねぇ。諦めてしまったのでしょうか?それとも体力的に本当に限界だったんでしょうか?
 例えていうなら擦っただけでイっちゃった男の人くらい惜しいです。本当に気持ちいいのはそこからだったのに……ってごめんなさい。今のは茶化したらいけない気がしました。
 あ、もしかして体調が悪いなら、お大事に……私からは何もできませんが、鹿番長さんのお身体が一番大事ですからねぇ』

「煩ぇよ!」
 鹿番長が、怒りに任せたようにペダルを踏む。完全に八つ当たりに見えるかもしれないが、トラクションをかけてフリーハブに遊びを持たせただけである。自動車でいうクラッチに似ている。つまり計算された必要な動きだ。
「勝てなかったか……抜けなかったかよ。王者タダカツ……」
 下唇を噛み、小さく震える。その眼にはまだ闘志が宿っていたが、身体はもう動かない。

 王者、アマチタダカツは抜くことができない。鹿番長の決死のアタックは、それを裏付けるに過ぎない結果に終わった。
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