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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う
エピローグ
しおりを挟むエピローグ
アイホーント討伐から、三日が経った。
第三坑道は、一部の発掘技師以外は一時立ち入り禁止になった。街の被害は熱線の一発で、約一〇〇リン(約九十二メートル)ほどが壊滅状態となった以外は、ほぼ第三坑道付近の家屋で少し倒壊があっただけで済んだ。
魔神の襲撃があったにしては、損害は軽微――そうレオナは言ったけど……死者は軍の三個小隊を含めて、約二百人。怪我人は五百人を超えたらしい。
熱線の余波を受けた範囲に、集合住宅があったのが被害を大きくしてしまった。死者の大半は軍人と軍関係者だけど、三割ほどは発掘技師と一般人だ。
……これだけの被害を出してしまった事実は、僕は一生悔やむかもしれない。知り合いだって、多く亡くなった。
僕とレオナは警備兵たちに保護されたあと、軽い取り調べを受けた。魔神を悪戯に起こしたのか、という点を追求されたけど、そこはファインさんの証言もあって、なんとか無罪放免となった。
アイホーントの死骸は、軍の管理下に置かれていた。崩落した第三坑道を掘り起こし、あの巨大な箱を使った封印を試みるようだ。
そのときには、知恵を貸すことになるかもしれない。御先祖の知識が役に立つだろうし。
ジョージ中佐は、事実上の降格になった。左遷にもなったようだけど、その行き先はこの街――即ち、発掘都市アーハムに駐在する、警護兵の最高責任者となったみたいだ。
昨日、僕の家を訪ねて来たジョージ中佐は、僕とレオナに謝罪してくれた。
「君たちには、すまないことした。今回の被害は、わたしの作戦が原因だ。君たちには、一切の非は無い。このことは、わたしの責任として市民らへ公表させてもらう」
そう前置きをした上で、僕の役職についての書類を手渡してきた。
「……戦術補助上級技師?」
「そうだ。軍属――に近い立場だが、実質の階級は最上級上等兵曹とほぼ同格になる。ああ、心配しなくとも軍に属するわけではない。あくまでも、技師の立場としての役職と考えてくれ。班長職ではないから、現場での権力は一般の技師との中間程度だが」
「えっと……なんで僕が、この役職になったんです?」
「もちろん、魔神討伐の功績――それと、登用試験で不正が見つかったのも理由だな。本来なら、君は護衛兵として登用されているはずだった。しかし、ダントとラントを合格させるため、技師の家系だった君を不合格とした。そういう証拠が見つかってね。
もちろん、今になって護衛兵にというのは、法令上不可能だ。その代わり、軍属として――というのが、参謀本部の決定だ。
謝罪の意味も含まれているが……しかし、強力な魔導器の管理を担う役職だ。給料も三倍くらいには上がるだろう。わたしにできる、最大限の――なんだね?」
僕とレオナが困惑の表情を浮かべたのを見て、ジョージ中佐――いや、ジョージ大尉は戸惑った。給料が上がるのは嬉しいけど、問題なのはその立場だ。
僕は書類を少しだけ差し出すような仕草をしながら、ジョージ大尉に言った。
「あの……管理ってところはちょっと……」
「なら、なんとすればいいんだね?」
「パートナーです」
「パートナーよ」
僕とレオナの声が、重なった。
ジョージ大尉は僕らの顔を交互に見てから、力の抜けた顔をした。
「パートナーとは……なんに対してかな。仕事か? それとも戦闘?」
「全部ひっくるめて、です。大尉」
僕より早く答えたレオナは、かなり頬を赤くしていた。
ジョージ大尉は溜息を吐いてから、仕方なく承諾する――そんな顔をした。
「わかった。そこは管理ではなく、パートナーとして修正しよう」
ジョージ大尉の言葉に、僕とレオナは微笑み合った。
第三坑道の発掘技師は、街の復興作業に回されていた。僕も瓦礫の撤去などで、夕方まで働いていた。
その帰りに、僕とレオナは街外れの墓地を訪れていた。
「そういえば、なんでアイホーントの体内で爆発が起きたんだろ?」
ワンピースを着たレオナが、不意に首を傾げた。
雷撃波に爆発を起こす効果はないから、不思議だったのかもしれない。それに、昔は燃料というのは一般的じゃなかったみたいだし。
「アイホーントは坑道で、空になった燃料の容器を飲み込んだんだよね。空っていっても、容器の底とか側面には、燃料が残ってたんだよ。揮発性が高い燃料だから、容器の中で気体になっててね。電撃の衝撃を受けて、その気体になった燃料が一気に燃えたんだ」
「それが、爆発の正体?」
「うん。技師のあいだでは、有名な話。液体より、気体のほうが燃焼が激しいって。だから満タンのときより、空にしたばかりのほうが危険なんだ」
「容器が消化されていたら、爆発はしなかったってことよね。無茶して……あの作戦自体も無茶だったけど。あたしが直接、アイホーントにトドメでも良かったんじゃない?」
「レオナだと、警戒しちゃうしね。あそこは、僕がアイホーントに行って正解だと思う。正直、今でも怖いけどね」
そんな話をしているあいだに、僕らはエディンの墓の前に来た。
僕はしゃがむと、途中で摘んできた野花を墓前に添えた
「エディン……終わったよ。心配かけちゃったかもしれないけど、僕とレオナで終わらせたよ」
込み上げてきた感情を堪えるために、僕はそこで口を閉ざした。左にいたレオナは静かに腰を落とすと、墓石に話しかけた。
「前は、許せないって言って、ごめんなさい。あなたの代わりに、あたしがずっとアウィンの側にいるから。だから、安心してね」
柔らかく微笑むレオナは少し身体を寄せてくると、肩と肩が触れ合った。硬質で少し冷たい質感は人間のものではないけど……でも、僕には安心できる存在感だ。
でも、自分の発言には気づいてないのかも――僕は、少し照れながら質問をした。
「あの、レオナ? ずっと側にいるって……その、発言が、恋人みたいというか……」
言葉の途中から、レオナは顔を真っ赤にさせながら、大袈裟なほど手を振った。だけど前と違うのは、すぐに俯いた顔が、少しむくれていた――ことかな?
顔を覗き込む僕を、レオナは横目で僕を軽く睨んできた。
「だって……そうなってもいいって、思ったの! アウィンだって、あたしに一目惚れしてるじゃない。いい加減、自分の気持ちにも気づいてよ」
「え――そうなの?」
「そうなの! 綺麗って言ってくれたり、他の人もあたしを綺麗とか恋人にしたいとか、そういうこと言ってくれたじゃない! それって、アウィンもそう思ってるってことでしょ?」
顔を真っ赤にさせたレオナの喚きに、僕は慌てた。
自分でも気づかなかった想いを指摘されたこと、そしてレオナにそこを説明させてしまったこと――諸々なことで、なんだか申し訳なくなってしまった。
「なんか……ごめん」
「いや。絶対に許さない」
レオナはそう言ったあと、困り果てた僕を上目遣いに見た。
「この前の――アウィンが自殺しかけたあとに、途中でやめちゃったやつ。あの続きをしてくれたら、許してあげる」
この前の――と、その内容を思い出した僕は、一気に顔が熱くなった。
「あ、あれって……だって、僕なんかでいいの?」
「アウィンがいいって、言ってるんだけど? するか、しないか――それともこっちがいいかな。許して欲しい? それとも許さなくてもいい?」
「それは……許して欲しい、です」
僕は答えながら、自分の気持ちが指摘された通りであることを自覚した。
「ここ、墓地だけど」
「誰もいないから、大丈夫よ」
それは確かに、その通りだ。
僕は無駄な抵抗を諦めて、思いのままにレオナに顔を寄せた。
軽く――触れるよりも少し強めなくらいに、僕らは唇を重ねた。数秒してから唇を離すと、照れたように視線を逸らしたレオナは、僕の肩に顔を預けた。
「……今後とも、よろしくね」
「こ、こちらこそ……」
僕らが居心地の良い空気に包まれた直後、後ろからファインさんの大声がとんできた。
「ちょっと! 二人でばっかり、いちゃいちゃしないでよ!!」
ファインさんは僕の背中に抱きついてくると、レオナに文句を言った。
「あたしだって、いちゃいちゃしたいんだから。独り占めしないでよ」
アイホーントの討伐以降、ファインさんのレオナに対する態度は、かなり軟化した。それと同時に、かなり僕に甘えるようになっていた。
詳しい話は聞いてないけど、ハーディさん曰く「なんか色々あったらしいけどな」ということらしい。
レオナとファインさん――二人の言い争いは、しばらく続いた。
墓地の管理人さんに「騒ぐなら余所でやってくれ」と怒られたのは、それから五分くらい経ってからだった。
完
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本作を読んで頂き、誠にありがとうございます!
わたなべ ゆたか です。
七月から書き溜めて、八月にアップを開始してからの約二ヶ月間。読んで頂いている方々のおかげで、モチベーションが保てました。
改めて、ありがとうございます。
五章に入ってから、話をかなりカットしてます。長くなりそうでしたので。ファインとハービィは、一度ベベリヌに捕まって、眷属に寄生されかける予定でしたが、先の理由によりカットしたり。
なんとかエピローグまで到達です。
第二章とかは、まだ考えてません。忘れられないよう、ボチボチやっていく予定です……そのあたりもお付き合い頂けると、中の人は喜びます。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
また宜しくお願いします!
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