消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

わたなべ ゆたか

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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

消耗品扱いの発掘技師は、魔造少女と世界を救う_アフターストーリー だって女の子だもの ~ レオナ  その3

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   3

 バイトに来た修理屋で、僕は信じられないものを見た。
 それは、矛だけで四リン(約三メートル六〇センチ)もある、突撃槍――僕とレオナがアイホーントと戦ったときに使ったものだった。
 アイホーントの熱線を受けて、真っ二つになった巨大な突撃槍が、修理屋の店の前に置かれていた。
 驚きから目を丸くしていた僕に、セントさんが話しかけてきた。


「驚いたろ。一昨日、軍の連中が運んできたんだよ。修理できないかってさ」


「え――これ修理できるんですか?」


 僕が振り返ると、セントさんは「さあね」と肩を竦めた。


「材質不明、まだ詳しくは見てないけど内部もズタボロで、伝導板なんかの魔導文字も読めないものが大半なんだ。ホントに直せるのか、これ?」


「できるだけ、最善を尽くすのが仕事だ」


 店から出てきたダグラスさんが、僕と僕の横にいたレオナへ順に目を向けた。
 僕と同様に驚いた顔をしていたレオナは、目を丸くしたままダグラスさんに問いかけた。


「あの、これを直して……軍は、どうするつもりなんですか?」


「さあな。俺の店には関係の無い話だ。ここはただ、持ち込まれたものを修理するだけだ。ただ、やつらの言動から察するに……魔神討伐を祝したモニュメントを造るわけじゃ、なさそうだ」


「ああ……なんとなく、そこらへんはわかります」


「どういうこと?」


 軍の意図が分からない僕に、レオナは少し困ったような顔をした。


「……つまり、また魔神が復活したとき、あたしたちに戦ってもらうためってこと」


「ええ……あんなのがポンポンと復活したら、やってられないよ」


 僕が項垂れると、レオナも「そうね」と同調した。
 そんな僕らを見ながら、ダグラスさんは難しい顔をした。顎に手を添えつつ、真っ二つになった突撃槍を見上げた。


「寧ろ、復活させるつもりかもしれんな」


「え?」


「はい?」


 きょとん、とした僕とレオナに、ダグラスさんは口元を歪めた。
 僕らの視線を受けて、ダグラスさんは少し視線を彷徨わせた。そして珍しく、言いにくそうにしながら、突撃槍から視線を離した。


「つまり、だ。あの化け物を復活させて、おまえらに討伐させる腹づもりかもしれん、という、俺の勝手な推測だ」


 ダグラスさんは肩を竦めると、僕の背中を叩いた。


「まあ、使えそうなものは修理したいってだけかもしれん。とはいえ、材質とかわからん部分も多いから、時間はかかりそうだ」


「そうですね……多分ですけど、オスミリジウムとか使ってると思いますし。完全な修復は難しいかもです」


「……なんだ、その、なんとかジウムって」


 ダグラスさんに発言の内容について問われて、僕は内心焦った。
 つい、前に手に入れてしまったコーナル・コーナルの魔導器の知識が、口から出てしまったんだ。
 コーナル・コーナルの知識によれば、オスミリジウムは希少価値の高い天然合金だ。硬度と摩滅耐性が高いから、特級以上の武具に使われることもあったみたいだ。
 とまあ、ここまで思い出してはみたけれど。そのままダグラスさんに伝えるのは、ちょっと拙いかもしれない。


「ええっと……昔、父さんに聞いたことがあって」


「そうか。となると修理には、おまえさんの知識が必要になるのかもしれねぇな。辛いかもしれねぇが、そんときは協力して欲しい」


「……はい」


 僕が少し目線を逸らしたのを、ダグラスさんは気にしたようだ。工房の中に入る直前に、僕の肩を叩いていった。
 多分、勘違いさせちゃったんだろうな……。
 視線を切ったのは思い出が辛いのではなく、ダグラスさんを騙してしまった罪悪感なんだけど。
 レオナと一緒に工房に入る直前、僕は破損した突撃槍を振り返った。

 軍が、変なことを考えてないといいけど……。

 その考えを最後に、僕はバイトに集中することにした。

   *

 ジョージ大尉(元中佐)は警護兵の詰め所に構えた自身の執務室で、書類整理に追われていた。
 その主な原因は、ダムイ上等兵長の執務が不備だらけだったことによる。
 資料を確認していると、息子のダントとラントへの苦情や違反を揉み消している事例が見受けられた。
 親子の情を鑑みても、件数だけ見れば多すぎだ。


「まったく……権力を勘違いしているな」


 ジョージ大尉は書類の束をゴミ箱に捨てると、参謀本部から届いた討伐計画に目を落とした。
 その計画は、アウィンとレオナシアを名乗る魔導器を軍に編入させることが前提となっていた。


(これが、どれほど困難かなものか――)


 参謀本部は、それをまったく理解していない。
 アウィンは年齢の割に技師として優秀で、好戦的とはいえない性格だ。レオナシアにしても軍から離れ、アウィンとの生活を満喫しているようだ。
 二人とも、好んで軍に編入することはないだろう。
 ジョージ大尉はこのとき、珍しく暗い溜息をついた。

 あの二人を説得するくらいなら、ぺんぺん草に軍への編入を進めるほうが気が楽だ。もしくは、ミトコンドリアを説得するほうが可能性がある。


「気が重い問題だな」


 討伐計画の書類を破り捨てたい衝動に駆られながら、ジョージ大尉は煙草に火を点けた。
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