34 / 57
消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う
発掘都市アーハム襲撃 その1
しおりを挟む発掘都市アーハム襲撃 その1
僕とレオナが第二坑道から外に出ると、ファインさんとハービィさんが待っていた。
時間は、空の感じからすると午後四時過ぎくらい。発掘も終わって、家に帰るところだった。
ファインさんはにこにこと、僕とレオナに手を振っていた。バービィさんは、その後ろから、のんびりと付いてきていた。
「アウィン、今帰りよね。ご飯を食べにいかない? ほら、前にご飯奢るって話したじゃない」
「あ、そういえば――でも、いいんですか? えっと、レオナも一緒になりますけど」
晩ご飯を食べに行くなら、僕一人でという訳にはいかない。同居しているレオナも一緒でないと――その……恋人みたいな関係にもなっているし――拙い気がする。
ファインさんはレオナを一瞥してから、肩を竦めた。
「仕方ないから、レオナシアも一緒でいいってば」
その少しむくれたような言い方に、ハービィさんはファインさんの後ろで戯けた顔をした。レオナと顔を見合わせた僕が苦笑いをしたとき、街にサイレンが鳴り響いた。
レオナは瞬時に、緊張した面持ちで周囲を見回した。
「なに、これ?」
「警戒のサイレンだよ。近くに、魔物が来てるみたい」
時折、魔物の部隊が前線をくぐり抜けることがあるんだ。軍から連絡があるのが大半だけど、それすらもすり抜けてくることがある。
このサイレンは、そんな部隊が街に接近しているという報せなんだ。
かなり重苦しい溜息を吐いたファインさんに、体格の良い、白髪の男性が近づいて来た。
全身を甲冑型の魔導器に包み、背には戦斧型の魔導器を背負っていた。猛禽類を思わせる目つきの初老の男性を見て、ファインさんの顔に緊張の色が浮かんだ。
「お爺様」
「ファイン。我らに召集がかかった。街の東門へと行くぞ。ん――そちらは……技師か」
ファインさんのお爺さんとういうと、グレイ・ランズ老だ。最も古株の護衛兵で、名門ランズ家の当主だ。
グレイさんは僕から目を離すと、ファインさんの背中を押した。
「えっと、ごめんね。それじゃあ、また――」
「えっと、ファイン。あたしたちの助っ人はいる?」
そんなレオナの声に、グレイさんは鋭い目を向けた。
「そこの女――護衛兵を甘く見るな。技師などの手など必要ない」
「あの、お爺様。アウィンたちは、あの魔神を斃した二人です」
ファインさんの説明に、グレイさんは少しだけ目を細めた。
だけど、態度は変わらない。
「その話は聞いた。かなりの辛勝だったそうじゃないか。我ら一族の大半は現場にいなかったのが悔やまれるな。さすれば、あんな魔神なぞ、我ら一族で屠れたものを」
「ああ……あの場にいなかったから、そんな大口が叩けるのね。はっきり言って、大戦中に比べたら、今の兵士たちの練度はかなり低いわ。その程度で、魔神と戦えるなんて言うのは、身の程知らずよ」
……げ。
どうやらグレイさんの言葉で、レオナの怒りに火か点いたみたいだ。腕を組んで柳眉を逆立てるレオナへと、グレイさんは近づいた。
「貴様――魔導器風情がどの口を利くのか」
「別に……正直な感想ですけど。文句があるのなら、現状の護衛兵に言ったらどうです?」
売り言葉に買い言葉――と思ってたら、グレイさんが怒りを露わに戦斧に手をかけた。
「貴様――魔導器としての立場を教えてくれる!!」
グレイさんが戦斧を振りかぶった直後、僕はレオナの前に飛び出ていた。
勢いよく振り下ろされた戦斧が、リーンアームドの結界によって弾かれた。
「……やめて下さい。女の子に暴力なんて」
結界を張る僕の声に、グレイさんは僅かに目を見広げた。
そのグレイさんが口を開く前に、僕は早口でまくし立てた。
「どんな結果だったにせよ、レオナのおかげで街は壊滅しなくて済んだんです。その恩人に対して、この仕打ちは道理に反すると思います」
「貴様――」
グレイさんに睨まれたけど、僕は視線を逸らさなかった。正直、この手のやり取りはダントたちで慣れている。
やがて、戦斧を引いたグレイさんは、僕らを睨み付けながら言い放った。
「良いだろう。だが覚えておけ。貴様らなんぞ、一族にとっては兎も同然だとな」
ファインさんに東門へ行くように告げたグレイさんは、足早に去って行った。ファインさんも僕らに謝ってから、グレイさんのあとを追った。
「まったく、知らないって怖いよな。ま、気が向いたら援護を頼むわ」
ハービィさんが立ち去ったあと、レオナは大きく息を吐いた。
「アウィン……ありがと。あたしも、人のことは言えないかもね。服を気にして、なにも出来なかったし」
「女の子だから、仕方ないよ。服とか気になる……んだよね。それより、どうする?」
援護に行くか行かないか――そんな僕の問いに、レオナは肩を竦めた。
「行くだけ行きましょうか。必要なさそうなら、帰ればいいし」
服を脱ぐ場所を探さないと――僕とレオナは、とりあえず金の砂塵亭へと向かうことにした。
0
あなたにおすすめの小説
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる