消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

わたなべ ゆたか

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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

技術長の高慢と欺瞞の渦 その4

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 技術長の高慢と欺瞞の渦 その4


 護衛兵たちの視察を終えたジョージ大尉が執務室に戻ると、技術部隊からの封書が届いていた。
 その封書の差出人を見ないで執務机の隅に置くと、ジョージ大尉は部下に護衛兵の召集を命じた。椅子に腰を降ろしたあと、しばらくはなにもしないまま、ただ天井を見上げていた。
 溜息を吐きながら封書に手を伸ばしたのは、数分ほど経ってからだった。
 差出人の名前に眉を顰めながら、ジョージ大尉は文面に目を落とした。内容を読み終え、目を閉じながら思案に耽っている途中で、部屋のドアがノックされた。
 ノックの主に検討がついたジョージ大尉は、目を開けて姿勢を正した。


「……入り給え」


「失礼します」


 部屋に入る早々に、ファインは起立の姿勢で敬礼を送った。ジョージ大尉も敬礼を送り返すと、肩を竦めるような仕草で机の前にある椅子を勧めた。
 ファインが椅子に腰を降ろすと、ジョージ大尉は技術部隊――アラド技術長からの命令書を屑箱に放り込んだ。


「急に呼び出して、すまない。君に頼みたいことがある」


「なんでしょうか?」


「今晩――深夜といったほうがいいかな。護衛兵を集めることは可能か?」


 質問の真意が掴めなかったファインは、少し視線を逸らした。
 目的と理由――そして、自分が選ばれたこと。それらを頭の中で整理し、ジョージ大尉の立場で考える。
 そうして一つの推測を導き出したファインは、目を戻した。


「アウィンに関することですか?」


「おしい。正確には、あの魔導器も関係している。端的に言えば、彼らの身が危ないかもしれない、とだけ言っておこう。先ほどの用件は可能か?」


「そうですね……一人なら。あとは、心当たりに訊いてみますが――極秘ですか?」


「そのほうがいいだろう。下手に話が広まるのは、好ましくない」


 ジョージ大尉の返答に、ファインは起立してから敬礼した。


「わかりました。出来る限りですが、極秘裏に進めます」


「よろしく頼む」


 ファインが部屋から出て行くと、ジョージ大尉は人前では見せることのない、緊張から解放された顔をした。
 これで、できるだけの手は打った。正直、頼りない一手だが、レオナシアという魔導器の助けがあれば、なんとかなるだろう――そう結論づけて、思考を切り替えた。


「さて……わたしは、深夜にやるという実験の立ち会いか。まったく、わかりやす過ぎて涙が出てくる」


 椅子に深く腰掛けると、ジョージ大尉は徹夜で芝居に付き合うことを予想して、鉛よりも重い溜息を吐いた。

   *

 発掘作業を終えた僕は、レオナと一緒に第二坑道を出た。
 技術部隊のことや家での諸々の作業など、今日は忙し過ぎる一日だった。移動が多くて、膝と脹ら脛の筋肉と、足首が痛くなってる。
 今日はもう、なにごともないといいんだけど……なぁ。心配ごとが徒労に終わってくれれば、言うことない。

 終わってくれれば、なんだけど……なぁ。

 この街で暮らしていて、そんな都合の良いことなど滅多にない。イヤな予感というのは、拒否したくても間違いなくやってくる。


「ねえ、アウィン。今日のご飯はどうするの?」


 レオナの問いに、僕は少し考えた。今現在、台所を使うのは少々厄介だ。仕掛けと細工をしているため、竃に火をくべることすらできない。
 独りで暮らしていたときは、パンとチーズ、それにソーセージだけで良かったけど、レオナと暮らしている今は、そんな野宿っぽい食事で済ませられない。
 最低限、温かい食事は食べて欲しいんだ。
 僕は少しだけ考えてから、レオナに答えた。


「《金の砂塵亭》で食べようか。今の台所を使う勇気は、僕にはないよ」


「同感。だけど……あたし、今日はバイトの日なんだよね。大丈夫かな?」


「食事するくらいは、大丈夫だと思うよ?」


「いえ、違うのよね……ちょっと」


 溜息をつくレオナは、少し困ったような顔をしていた。《金の砂塵亭》で、なにか問題でもあるのかな?
 《金の砂塵亭》まで来ると、そこは護衛兵でごった返していた。常連である発掘技師は隅っこに追いやられていた。


「姐さん!」


 確か、ヤスンっていう名前の護衛兵だ。
 ヤスン……さんは、レオナに頭を下げてから、僕を見た。


「あ、アウィンの兄さんも一緒ですか。ということは、御食事で?」


「えっと、そのつもり……です」


 僕が答えを聞いたヤスンさんは、店内に戻ると護衛兵が座っていた二人掛けのテーブルを片付けた。座っていた護衛兵たちを強引に帰らせると、ヤスンさんは僕らを手招きしてきた。


「姉さんたち、こっちこっち!」


 ヤスンさんは、完全に舎弟モードになっている。僕は隣にいたレオナに、目を点にさせた顔で振り向いた。


「なんなの……この状況?」


「お願い……聞かないで」


 普通の女の子でいたいのに――と、レオナは半泣きで僕に答えた。
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