消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

わたなべ ゆたか

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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

技術長の高慢と欺瞞の渦 その5 後編

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 技術長の高慢と欺瞞の渦 その5 後編


 居間には、二人の兵士がいた。
 玄関から入って来たばかりみたいで、まだ武器すら構えていない。というより、床に塗られたにかわで、歩くのもままならないようだ。
 兵士たちは僕らを見つけて長剣や短剣を抜いたが、レオナは静かに光の刀身を伸ばした。


「あんたたち、住居不法侵入――だからね。こっちを恨むのは筋違いよ」


「は――?」


 兵士は『なにを言っているんだ、こいつ』という顔をした。
 だけど、そんな態度は長く続かなかった。


「剣圧最大――雷撃波」


 威力を抑えた雷撃波が、二人の兵士を薙いだ。その一撃で兵士たちの結界が剥がれた。


「え?」


 兵士たちが雷撃波の威力に驚いた一瞬に、レオナは素早く間合いを詰めた。

 回し蹴り一発。

 たったそれだけで、二人の兵士たちは開いたままの玄関から、表まで吹っ飛ばされた。
 これで終わりかな――と思っていたら、簡素な鎧に身を包んだアラド技術長が入って来た。


「まったく。役に立たん奴らだ」


「ホント、一〇分で全滅なんて、訓練が足りないんじゃない?」


 レオナの煽りに、アラド技術長は嫌悪感を露わに睨んできた。


「技術長……やっぱり、あなたの差し金だったんですか?」


 僕の問いに、アラド技術長は鼻を鳴らした。
 手に棒状のなにかを持ったまま、僕とレオナを順に見回した。


「ふん――魔導器の活躍は、噂通りのようだ。となれば、魔導器さえなんとかすれば、片は付く」


「――できるかしらね?」


 レオナが身構えると、アラド技術長が棒の先端を向けた。
 雷撃波を放つべく、レオナが右腕を振りかぶった瞬間、アラド技術長の指が動いた。


「あ――」


 短い声を出したレオナは、突然に膝から崩れ落ちた。


「レオナ!?」


 へたり込んだように座るレオナに駆け寄った僕は、太股のところに円筒形の物体がくっついているのを見た。
 円筒形からは、細い紐が棒の先端まで伸びている。


「これは対象の魔導器から、魔力を吸い取る魔導器だ。これで、その魔導器は無力となったわけだな」


「――っく」


 僕が円筒形の物体をレオナから外すと、アラド技術長は拳銃型の魔導器の銃口を僕に向けてきた。


「大人しくしろ。アウィン・コーナルだったか。貴様も技術部隊が連行する。大人しく言うことを聞けばなにもせぬが、抵抗するなら脚を切断させてもらう右でダメなら、左もだ」


 アラド技術長の言葉に、僕は胸中に怒りを抱きながら立ち上がった。


「どうして……どうして、そういうことが言えるんです!?」


 僕が一歩前に出ると、アラド技術長は拳銃を持つ腕を真っ直ぐに伸ばした。


「動くな!」


「防御っ!!」


 アラド技術長の命令と、僕の音声命令が重なった。
 周囲に結界が張られると、僕はアラド技術長へと駆け出した。


「この餓鬼――」


 問答無用とばかりに、アラド技術長は拳銃型の魔導器から魔力弾を撃ち出した。だけど、それはすべて結界が防いでくれた。
 結界がアラド技術長に触れたところで、僕は立ち止まった。これ以上は、結界が僕の中心からずれてしまい、警告が出てしまう。警告を無視すれば、結界は消失する。これは実験してわかったことだ。
 アラド技術長は、結界に護られながら小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。


「この程度で、どうにかなるとでも? わたしには、まだ部下が残っている。これ以上反抗するなら、攻撃を命れ――」


「攻勢モード」


 僕の命令で、結界が紅く染まった。これはダントやラントにもやった、結界での攻撃方法だ。
 紅い結界に触れていたアラド技術長は、突然の衝撃に後ずさった。だけど、僕はそれに合わせて動く。
 アラド技術長が玄関横の壁まで退いた――その途端、鎧の結界が消失した。


「うわあああっ!!」


 結界の衝撃に、アラド技術長の顔に裂傷ができていく。
 全身ががくがくと震え、血が壁や床に飛び散った。少しして、アラド技術長は白目をむいて全身の力が抜けた。
 僕が結界を解くと、壁に凭れながら床にしゃがみ込んだ。


「馬鹿な……なぜ、部下の攻撃がないのだ……」


「あ、もう終わったの?」


 がっくりと項垂れるアラド技術長を見ながら、ファインさんが玄関から入って来た。
 その後ろにいたハービィさんは僕に手を振ってから、部屋の中を覗き込んだ。


「外にいた兵士たちは、全員拘束したぜ?」


「なん……だと?」


 アラド技術長は、ぎこちなくファインさんたちに首を向けた。
 血まみれの顔に怒りの表情を浮かべ、威嚇するように言葉を吐いた。


「貴様ら、現在は……軍の作戦行動中だ――邪魔をするなら、ただではすまさん、ぞ」


「あ、そう言うと思ってました。けれど、作戦の立案書は街の護衛兵に提出してませんよね? なら、こちらは街の規則に則って、動くだけです」


「ま、街の規則――?」


「はい。住居の不法侵入と傷害未遂ですね。護衛兵への作戦立案書が提出されてませんから、民事での裁判になるはずです」


「民事……馬鹿な」


「馬鹿はそっちだと思いますよ? 言い分があれば、法廷で」


 ファインさんの指示で、二人の護衛兵がアラド技術長を連れて行った。
 僕はそれを見送らず、レオナの元に戻っていた。レオナの横に跪くと、ほぼ無意識にレオナの肩を抱いていた。


「レオナ、大丈夫?」


「大丈夫……じゃないけど。魔力を吸い取られた、だけみたい。さっきから、警告が五月蠅いわ」


「とりあえず、休もう。ベッドまで、肩を貸すよ」


「それより、こうしてくれてたほうが、楽……しばらくは、このままでいさせて?」


「それは、別にいいけど」


 僕の肩にレオナが頭を預けると、少しむくれたファインさんが近寄って来た。


「そうやって甘えるのって、狡くない?」


「……狡いもなにもないってば。この方が楽なだけ……今ちょっと動けそうにないの。それより、助っ人にくるなら、もっと早く、来て、よ……」


「無茶を言わないでよ。護衛兵を集めて、行動を決めるだけでギリギリだったの」


「あ、や……でも、助かりました。後始末とか、どうしようかと思ってて」


「そこは、任せな。家の鍵や、窓とか壊れてるからな。護衛兵に見張りでもさせるか?」


 ハービィさんに「そうですね」と答えながら、僕はどうやって家を直そうか――ということを考えていた。
 玄関や窓を見回していると、レオナは静かに息を吐いた。


「修理代は、技術部隊に請求しましょ。文句は言わせないわ」


 レオナの言葉に、アラド技術長はギョッとした目を向けてきた。けど、護衛兵に押されて、家から出て行った。
 入れ替わりに、ヤスンさんが家に入ってきた。


「姐さん、兄さん! 家の警備は任せてくだせぇ!」


 ヤスンさんの仲間だろうか、一緒に入って来た三人の護衛兵も笑顔だった。
 そんな彼らに、レオナは困ったような笑みを返していた。
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