53 / 57
消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う
邪な神託を求めて~そして封印へ その5
しおりを挟む邪な神託を求めて~そして封印へ その5
翌日の午前十時丁度。軍の施設にある格納庫にアラド技術長が現れた。
屋根が弧を描く造りの格納庫では、天窓が開かれて日差しを取り込んでいた。それだけではなく、燃焼炉を使用した照明が焚かれていて、魔神アイホーントの死骸を照らし出していた。
両手を木製の手枷で拘束されていたアラド技術長は、ジョージ大尉のいる所へ向かう途中で立ち止まると、魔神の身体を見上げた。
数秒、十数秒……そして三十秒を過ぎると、護衛兵の一人がアラド技術長の背中を肘で突いた。
「早く歩け」
「……そんなに慌てさせるな」
どこか余裕のある表情で、アラド技術長は護衛兵に返事をした。
視線を魔神アイホーントの死骸に向けながら、アラド技術長はゆっくりとした足取りで歩き始めた。
僕とレオナ、それにファインさんとハービィさんの四人は、格納庫の大扉の見える小屋で待機をしていた。
軍から双眼鏡というのを借りて、今は僕とハービィさんが格納庫の様子を見ていた。
レオナとファインさんは、後ろにあるソファで休んでいる。一応、三〇分交代で見張りをしよう――ということにしたんだ。
「作業までは、しばらくかかるかな?」
「ジョージ大尉は、時間は稼ぐと言ってましたよ。作業時間をできるだけ短くするみたいです」
「まあ、妥当なところだな。下手なことをされて、あんなのが復活でもしたら最悪だしな」
ハービィさんはそう言って溜息を吐くと、双眼鏡を外して目を細めた。
「ここからでも、あの大きさだもんな……よく斃せたもんだ」
「レオナのお陰です」
「……おまえさんは、そういう認識なんだな。別にいいけどさ」
ハービィさんの言った意味が、よく分からなかった。意味について訊ねようか――という考えが頭を過ぎったけど、なんとなく聞きそびれてしまった。
アウィンたちの後ろで休んでいたレオナシアは、ジッとアウィンを見ているファインの肩を突いた。
「ちょっと聞いてもいい?」
小声のレオナシアに怪訝な顔をしながらも、ファインは頷いた。
レオナシアはアウィン聞こえないよう、ファインに顔を近づけた。
「なんで、坑道でもアウィンを探してたわけ? 別に、同じ発掘技師の護りに就くわけじゃないんでしょ?」
「アウィンの側に、いたほうがいいのよ。アウィンに対する噂って、聞いたことある?」
「ないけど……」
声のトーンが落ちたレオナシアに、ファインはアウィンたちの様子を一瞥してから、さらに声を小さくした。
「アウィン・コーナルは……化け物だってやつ」
「……なに、それ。どういうこと?」
聞き直しながら、レオナシアはギクリと表情を強ばらせた。
アウィンは魔導器文明の始祖、コーナル・コーナルの子孫だ。そのコーナル・コーナルの正体が、アイホーントと同じく魔神の一柱だ。このことは、レオナシアとアウィンだけの秘密だった。
どこかから、この話が漏れた――でも誰から?
頭の中で『なぜ?』を繰り返していたレオナシアに、ファインは答えた。
「アウィンが魔神の身体に飛び移ったのを見た人がいるの。そのあとで魔神を斃したから……アウィンは化け物に違いないって」
「なによ、それ」
秘密とは異なる理由にどこかホッとしながら、レオナシアは憤った。
「魔神を斃してもらって、それで命が助かったのに……命の恩人を化け物扱いするなんて」
「恐怖が薄れてきてるのよ。だから、今度は異質なことが目立ってきちゃってる――んだと思う。そんなことを言ってる護衛兵は、三割くらいだけど」
「そんなに……こんなこと、アウィンには聞かせられないわよ?」
「あたしだって、そのつもり。だから、あたしが側にいなくちゃいけないの。うちは護衛兵を古くから輩出してる名門だから。ランズ家の者が近くにいれば、批判とかを言ってくる人はいないでしょうから」
「そういうことなのね。納得した」
レオナシアが緊張をときつつ頷いたとき、ハービィの声が室内に響いた。
「動いた。アラドの野郎が、魔神の身体に近づいた」
その言葉にレオナシアは窓に近寄って、約五十五リン(約五〇メートル)離れた魔神アイホーントを凝視した。
*
アラド技術長は、魔神アイホーントの身体に架けた梯子を登っていた。すぐ真後ろには、一定の距離をあけて護衛兵がついてきている。
格納庫の壁にある通路では四名の兵士が、ライフル型の魔導器を構えて、銃口をアラド技術長に向けていた。
不穏な動きをすれば撃つ――そんな警告を受けていたアラド技術長は、こんな対処しかできないことを小馬鹿にしたように、鼻で笑った。
(おまえらに、我が神の復活は阻止できぬさ。そして俺は、強大な力を手に入れるのだ)
愛おしげに魔神の外皮を撫でたアラド技術長は、手の平に鼓動を感じた。
身体は死んでいる――しかし組織の一部はまだ、生命の残り火を宿していた。内部にいる化身は、まだ死んでいない。
その確信を得たアラド技術長は、逸る気持ちを抑えきれずに、急いで梯子を登り始めた。
0
あなたにおすすめの小説
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最弱弓術士、全距離支配で最強へ
Y.
ファンタジー
「弓術士? ああ、あの器用貧乏な最弱職のことか」
剣と魔法が全てを決める世界において、弓は「射程は魔法に及ばず、威力は剣に劣る」不遇の武器と蔑まれていた。
若き冒険者リアンは、亡き叔父から譲り受けた一振りの弓「ストーム・ウィスパー」を手に、冒険者の門を叩く。周囲の嘲笑を余所に、彼が秘めていたのは、世界をナノ単位で解析する「化け物じみた集中力」だった。
リアンの放つ一矢は、もはや単なる遠距離攻撃ではない。
風を読み、空間を計算し、敵の急所をミリ単位で射抜く精密射撃。
弓本体に仕込まれたブレードを操り、剣士を圧倒する近接弓術。
そして、魔力の波長を読み取り、呪文そのものを撃ち落とす対魔法技術。
「近距離、中距離、遠距離……俺の射程に逃げ場はない」
孤独な修行の末に辿り着いた「全距離対応型弓術」は、次第に王道パーティやエリート冒険者たちの常識を塗り替えていく。
しかし、その弓には叔父が命を懸けて守り抜いた**「世界の理(ことわり)」を揺るがす秘密**が隠されていた――。
最弱と笑われた少年が、一張の弓で最強へと駆け上がる、至高の異世界アクションファンタジー、開幕!
異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~
松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。
異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。
「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。
だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。
牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。
やがて彼は知らされる。
その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。
金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、
戦闘より掃除が多い異世界ライフ。
──これは、汚れと戦いながら世界を救う、
笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる