消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

わたなべ ゆたか

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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

邪な神託を求めて~そして封印へ その5

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 邪な神託を求めて~そして封印へ その5


 翌日の午前十時丁度。軍の施設にある格納庫にアラド技術長が現れた。
 屋根が弧を描く造りの格納庫では、天窓が開かれて日差しを取り込んでいた。それだけではなく、燃焼炉を使用した照明が焚かれていて、魔神アイホーントの死骸を照らし出していた。
 両手を木製の手枷で拘束されていたアラド技術長は、ジョージ大尉のいる所へ向かう途中で立ち止まると、魔神の身体を見上げた。
 数秒、十数秒……そして三十秒を過ぎると、護衛兵の一人がアラド技術長の背中を肘で突いた。


「早く歩け」


「……そんなに慌てさせるな」


 どこか余裕のある表情で、アラド技術長は護衛兵に返事をした。
 視線を魔神アイホーントの死骸に向けながら、アラド技術長はゆっくりとした足取りで歩き始めた。


 僕とレオナ、それにファインさんとハービィさんの四人は、格納庫の大扉の見える小屋で待機をしていた。
 軍から双眼鏡というのを借りて、今は僕とハービィさんが格納庫の様子を見ていた。
 レオナとファインさんは、後ろにあるソファで休んでいる。一応、三〇分交代で見張りをしよう――ということにしたんだ。


「作業までは、しばらくかかるかな?」


「ジョージ大尉は、時間は稼ぐと言ってましたよ。作業時間をできるだけ短くするみたいです」


「まあ、妥当なところだな。下手なことをされて、あんなのが復活でもしたら最悪だしな」


 ハービィさんはそう言って溜息を吐くと、双眼鏡を外して目を細めた。


「ここからでも、あの大きさだもんな……よく斃せたもんだ」


「レオナのお陰です」


「……おまえさんは、そういう認識なんだな。別にいいけどさ」


 ハービィさんの言った意味が、よく分からなかった。意味について訊ねようか――という考えが頭を過ぎったけど、なんとなく聞きそびれてしまった。



 アウィンたちの後ろで休んでいたレオナシアは、ジッとアウィンを見ているファインの肩を突いた。


「ちょっと聞いてもいい?」


 小声のレオナシアに怪訝な顔をしながらも、ファインは頷いた。
 レオナシアはアウィン聞こえないよう、ファインに顔を近づけた。


「なんで、坑道でもアウィンを探してたわけ? 別に、同じ発掘技師の護りに就くわけじゃないんでしょ?」


「アウィンの側に、いたほうがいいのよ。アウィンに対する噂って、聞いたことある?」


「ないけど……」


 声のトーンが落ちたレオナシアに、ファインはアウィンたちの様子を一瞥してから、さらに声を小さくした。


「アウィン・コーナルは……化け物だってやつ」


「……なに、それ。どういうこと?」


 聞き直しながら、レオナシアはギクリと表情を強ばらせた。
 アウィンは魔導器文明の始祖、コーナル・コーナルの子孫だ。そのコーナル・コーナルの正体が、アイホーントと同じく魔神の一柱だ。このことは、レオナシアとアウィンだけの秘密だった。

 どこかから、この話が漏れた――でも誰から?

 頭の中で『なぜ?』を繰り返していたレオナシアに、ファインは答えた。


「アウィンが魔神の身体に飛び移ったのを見た人がいるの。そのあとで魔神を斃したから……アウィンは化け物に違いないって」


「なによ、それ」


 秘密とは異なる理由にどこかホッとしながら、レオナシアは憤った。


「魔神を斃してもらって、それで命が助かったのに……命の恩人を化け物扱いするなんて」


「恐怖が薄れてきてるのよ。だから、今度は異質なことが目立ってきちゃってる――んだと思う。そんなことを言ってる護衛兵は、三割くらいだけど」


「そんなに……こんなこと、アウィンには聞かせられないわよ?」


「あたしだって、そのつもり。だから、あたしが側にいなくちゃいけないの。うちは護衛兵を古くから輩出してる名門だから。ランズ家の者が近くにいれば、批判とかを言ってくる人はいないでしょうから」


「そういうことなのね。納得した」


 レオナシアが緊張をときつつ頷いたとき、ハービィの声が室内に響いた。


「動いた。アラドの野郎が、魔神の身体に近づいた」


 その言葉にレオナシアは窓に近寄って、約五十五リン(約五〇メートル)離れた魔神アイホーントを凝視した。

   *

 アラド技術長は、魔神アイホーントの身体に架けた梯子を登っていた。すぐ真後ろには、一定の距離をあけて護衛兵がついてきている。
 格納庫の壁にある通路では四名の兵士が、ライフル型の魔導器を構えて、銃口をアラド技術長に向けていた。
 不穏な動きをすれば撃つ――そんな警告を受けていたアラド技術長は、こんな対処しかできないことを小馬鹿にしたように、鼻で笑った。


(おまえらに、我が神の復活は阻止できぬさ。そして俺は、強大な力を手に入れるのだ)


 愛おしげに魔神の外皮を撫でたアラド技術長は、手の平に鼓動を感じた。
 身体は死んでいる――しかし組織の一部はまだ、生命の残り火を宿していた。内部にいる化身は、まだ死んでいない。
 その確信を得たアラド技術長は、逸る気持ちを抑えきれずに、急いで梯子を登り始めた。
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