消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

わたなべ ゆたか

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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

邪な神託を求めて~そして封印へ その8

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 邪な神託を求めて~そして封印へ その8


 一ヶ月後。
 発掘技師たちの努力によって、《箱》の修復は完了した。ただし、完全な復元には至っておらず、所々は歪みを残していた。
 復元を行っている期間、旧第三坑道では急ピッチで縦穴が掘られた。
 半径は約五リン(約四メートル六〇センチ)、深さは約二〇リン(約一八メートル八〇センチ)。《箱》のすぐ前へと通ずる縦穴は、魔神の身体を運び込むためのものだ。
 技術部隊のクレーンで、関節ごとに切断、または肉体をブロック単位に切り分けられた魔神の身体が《箱》の前へと降ろされていた。
 そこから、再びクレーンで身体の各パーツが《箱》の内部へと収められていった。
 運搬や切断作業を含め、二日がかりで魔神を《箱》に収め終えた日の夕刻、厳重な警戒の中、ジョージ大尉の指揮で一人の男が《箱》の前へ連れてこられた。

 袋を被らされた頭部は常人よりも大きく、それに歪な形状だ。            身に纏った白衣は薄汚れており、何日も入浴していないらしく、身体からは汗の腐ったような臭いが漂っていた。
 両腕の手枷に繋がれた鎖は、前を歩く兵士の手まで伸びている。
 足の裏から伝わる感触、そして周囲に漂う土埃――それらの情報から、その人物は自分がどこを歩いているのか理解したようだ。


「お、おい……わたしを何処へ連れて行くつもりだ? 牢に……牢に戻してくれっ!!」


 袋の中で喚くアラド元技術長は、あれほど逃れたかった牢へ戻ることを渇望していた。外患誘致、裏切り――それらの罪を犯した軍人の末路など、一つしかない。
 そして、牢から出されたということは、刑の執行が近いということだ。
 アラド元技術長が《箱》の前に到着すると、ジョージ大尉は厳しい目を向けた。


「アラド技術長――とても残念だ。君とはあまり良い関係ではなかったが、それでも功績と実力は、ある程度の評価はしていたのだよ。それが裏切り――全人類への裏切りとはな」


「ち――違うんだ、大尉。わたしは……夢で――そう、夢の中で、あの神からの甘言に騙されてしまっただけなんだ。
 それを証拠に、今のわたしの姿を見るといい。哀れなものだろう? 罪は充分に受けているようなものじゃないか。そうだろう?
 こんな姿になったわたしを死罪など――それは非情過ぎる処分だと思わないか」


「ああ……神の言うことももっともだ。だから、安心していい。君は死罪ではない」


「え――? ほ、本当か?」


 声に感謝と喜びが入り交じったアラド元技術長は、ジョージ大尉の声がする方向へ拝むような仕草をした。
 そんな姿を前にして、ジョージ大尉は感情を押し殺した声で告げた。


「アラド技術長殿を中に入れろ」


「――はっ」


 短く応じた兵士が、鎖を引っ張りながらアラド元技術長を《箱》の中へと連れて行った。鎖の先端を魔神の亡骸に縛り付けた。
 周囲が薄暗くなったことに気づいたアラド元技術長が、不安そうに周囲を見回した。


「ジョージ大尉、大尉! ここは何処だ!? なにをするつもりだ!?」


「アラド――君に執行される刑は、封印だ。魔神の身体とともに、《箱》に封印されてもらう。これは、軍の参謀本部並びに、総司令部からの命令だ」


「そ、そんな――そんな!!」


 生きたまま封印など、拷問よりも凄惨な末路が待っている。餓死が先か、それとも狂うのが先か――どちらにせよ、それは死刑宣告よりも遙かに地獄だ。
 ジョージ大尉は、アラド技術長の絶叫を無視して、部下に命じた。


「閉じろ」


 クレーンや人力を総動員して、《箱》の大扉が閉じていく。
 アラド元技術長は逃げようと藻掻いたが、鎖に繋がれて《箱》から出ることはできなかった。
 大扉が完全に閉じると、もう声は聞こえなくなった。


「総員、クレーンの解体を始めろ! 資材は縦穴の上にあるクレーンで引き上げる。すべての資材、そして人員の退避後、坑道の爆破を行う」


 ジョージ大尉の命令で、兵士たちは行動を開始した。

   *

 僕がアラド技術長――元技術長の刑の執行を聞いたのは、第三坑道の爆破が行われた翌日のことだった。
 生きたまま封印という刑に、僕は複雑な気持ちになっていた。


「……アウィンが責任を感じることなんか、なんにもないのよ?」


 刑の執行を教えてくれたファインさんは、そう言ってくれたけど……もっと違う結末はなかったのかと、思わずにはいられない。
 第二坑道での仕事を終えて帰宅する途中、護衛兵の集団とすれ違った。


「おい――あれって噂の」


 その声が聞こえてきた突端、隣を歩いていたレオナが僕の腕を引っ張った。
 早足で歩いて護衛兵から離れると、レオナは怒りを抑えるような顔で、大きく息を吐いた。
 僕はレオナに、力なく言った。


「あ、レオナ? 噂のことなら知ってるから。化け物って言われてるの」


「知ってたの!?」


 驚いた顔のレオナに、僕は頷いた。
 大体のところはダグラスさんから聞いてるし、なにやらヒソヒソ声で話している光景を見れば、さすがに想像がつく。
 そういう陰口を言われるのはイヤだけど、問答無用で襲われるよりはマシだ。
 レオナは脱力した顔をしながら、大きく息を吐いた。


「知ってたなら、教えてよ……でも、酷い話よね。助けて貰ったのにさ」


「仕方ないよ。そう見えちゃったんでしょ。噂に対して僕が出来るのは、普通の人間でいることくらいだよ」


「噂が収まるのを待つ……か。消極的だけど、それしかないのかな」


 そこで、会話が途切れた。
 そのまま僕らが帰宅したんだけど、玄関の前でジョージ大尉が待っていた。


「待ってたよ。少し話があるのだが……」


「イヤな話ですか?」


 レオナの問いに、ジョージ大尉は僅かに視線を逸らしながら「まあ、そんなところだ」と答えた。


「アーハムと同じく、発掘都市と呼ばれるフォーリアという街があるんだが……そこで、《箱》が発見された。その《箱》を開けようと、街の軍が動いているらしいのだが」


「開けないで下さい。そして、埋め直して下さい」


「僕もそう思います。開けないで、埋めましょう」


 僕らが口を揃えて《箱》を埋めるよう提案したけど……ジョージ大尉は深い溜息を吐くだけだった。


「実は、そう返信をしたのだが……意地でも安全に開けると言ってきた。そこで、君たちに援護を依頼したいと……」


「絶対にやめさせて下さい」


 僕とレオナは、同時にジョージ大尉へ詰め寄った。
 一難去って、また一難。できれば……藪は突かないで欲しいと、切にお願いしたい。

                                      完

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本作を読んで頂き、誠にありがとうございます!

わたなべ ゆたか です。

約二ヶ月間、駆け抜けました……。

読んで頂いた方々、並びに投票して頂いた方々、本当にありがとうございました。
投票開始日から、順位アップしてました。

続きは、間が空くと思います。状況次第ですけど。

少しでも楽しんで頂ければ幸いです。

ありがとうございました! またの機会に、よろしくお願いします!
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