消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

わたなべ ゆたか

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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

邪な神託を求めて~そして封印へ その7

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 邪な神託を求めて~そして封印へ その7


 魔造動甲冑に乗ったレオナと僕が格納庫に接近したとき、魔神アイホーントが内部で破壊の限りを尽くしていた。
 あの熱線は使ってなかったけど、それでも脚や右腕の一撃が、内部の機材や施設を壊していった。
 先ほどレオナが撃った魔力砲の一撃で、脚の一本が関節から崩れ落ちていた。
 身体の腐敗は進行しているみたいだけど、なぜ急に動き出したんだろう? 以前に戦ったときより動きは鈍い……というか、兵士や護衛兵の動きに、二呼吸分遅れて動いている感じだ。


「突っ込むからね」


「うん」


 僕が身体を踏ん張ると、魔造動甲冑の速度が上がった。
 右腕から伸びた光る刀身で斬りかかったけど、魔神アイホーントは右腕の外皮で受け止めた。だけど、その熱か衝撃のためか、腐ったような汁を撒き散らしながら、外皮がごっそりとずれ落ちた。
 外皮の下から、触手のような組織が露出した。触腕というのか、その先端には魔導器らしい金属製の筒があった。
 あの熱線を撃ち出していたのは、これみたいだ。
 一撃を受けた衝撃で少し後退した魔神アイホーントの背に、僕は人影を見た。
 そこではアラド技術長が、なにか一抱えほどの物体を抱えるようにしていた。調査中に動き出したのか――と僕が思った後ろで、レオナが怒気を孕んだ声をあげた。


「眷属――っ!! あの馬鹿、余計なものを見つけたのね!!」


 光の刀身を消したレオナが、魔力砲をアラド技術長に向けた。


「そこをどきなさい! その眷属はここで斃さないと」


 レオナの忠告に、アラド技術長はこっちを睨みながら眷属を庇うように手を広げた。
 なにを考えているんだ――と、僕が思った直後、右からジョージ大尉の声が聞こえてきた。


「殺すんだ! やつは我々を裏切り、魔神と手を組んだんだっ!!」


「な――っ!?」


 絶句した僕とレオナに、一瞬だけど隙ができた。
 その僅かなあいだに、魔神アイホーントが脚を伸ばして、胴体と下腹部の繋ぎ目を二階あたりにある手摺りのある廊下に近づけた。
 眷属を連れてアラド技術長が廊下に飛び移ると、魔神の身体は力が抜けたように、床に崩れ落ちた。


「我が神――これから、どうすれば」


〝安心しろ。貴様には、我がいるのだ。我の力をその身に宿せば、何者にも負けはしないだろう〟


「おお――」


 眷属みたいな蜘蛛の異形を見るアラド技術長は、まるで母親にすがる赤子のように、全幅の信頼を抱いた目をしていた。
 跪くように蜘蛛の異形へと顔を近づけたアラド技術長に、魔神の身体をよじ登ったレオナは、魔力砲の砲門を向けた。


「今すぐ、その眷属から離れなさい!」


 レオナの怒声にアラド技術長がこっちを見た――その直後、蜘蛛の異形が跳躍して、アラド技術長の頭の上に飛び乗った。
 蜘蛛の異形は、八本の脚をアラド技術長の頭に突き立てた。鮮血が飛び散る中、アラド技術長は痛みからのたうち回った。


「うわああっ! 神よ! これは――! これは――!?」


〝これは、誉れである。貴様の身体は、我のものとなるのだ。貴様が新たな、魔神アイホーントとなるのだ。誉れを抱きながら、身体と魂を捧げるがいい〟


「そ、そんな――っ!!」


 アラド技術長が寄生される――この状況下で、レオナは躊躇しなかった。
 砲門をアラド技術長に向け直すと、即座に撃った。砲弾はアラド技術長に命中した――しかし寸前に人間の限界を超えた力で、一〇リン(約九メートル二〇センチ)以上も跳躍して、攻撃から逃れていた。
 廊下の手摺りに片手でぶら下がったアラド技術長の口からは、まだ悲鳴に似た叫びをあげていた。


「あんなに小回りの利く相手に、この姿じゃ不利だよ」


「そうね。甲冑を解くから気をつけて」


 姿勢を低くしてから、レオナは甲冑を解いた。ニリン(約一メートル八四センチ)ほど落ちた僕は、足を滑らせそうになりながら魔神の背に着地した。
 レオナは元の姿に戻るや否や、すでに異形となったアラド技術長へと向かっていた。
 脹ら脛の球体を光らせながら跳躍したレオナは、魔力弾を撃ちながら間合いを詰めた。そして魔力弾を避けた異形へ、光の刀身で斬りかかった。
 しかし、異形の蜘蛛から出た触腕とアラド技術長の両手が、刃が身体に届く寸前でレオナの腕を止めた。


「この――」


〝まだ、やらせるわけにはいかぬ。貴様の身体も取り込んでくれる〟


 異形は新たに触腕を身体から出すと、レオナの顔に伸ばしていった。
 レオナは離れようとしたけど、触腕とアラド技術長の手が二の腕と前腕をガッチリと固定して、なかなか離れられない。

「く――この!」


 レオナが恐怖の表情を浮かべたのが見えた瞬間、僕は腰から拳銃型の魔導器を抜いていた。
 即座に狙いをつけて、引き金を引く。
 銃口から撃ち出された魔力弾が、レオナに迫る触腕を撃ち抜いた。そのまま貫通した弾は蜘蛛の頭部を掠め、もう一本の触腕の半分ほどを切り裂いた。
 レオナの腕が解けるのを見て、僕は叫んでいた。


「レオナ、今だ!!」


「剣圧最大――雷撃波!!」


 レオナの右腕から伸びる雷光が、周囲の壁を切り裂きながら異形へと振り下ろされた。
 異形は逃げようとしたけど、レオナのほうが素早い。雷光は異形の頭部――蜘蛛にある肉塊――と胴体の一部を切断した。


〝ぎゃ――〟


 蜘蛛の異形から、短い悲鳴がした。アラド技術長はしばたく悲鳴を上げていたけど、数分ほどで落ち着きを取り戻した。


「あ……わたしは、どうなったのだ……」


「眷属に融合されかかってる。もう除去は不可能だから、そのまま生きるしかないわね」


 レオナの返答に、アラド技術長は――目は蜘蛛の異形の胴体で見えないけど――絶望的な顔をしながら、項垂れてしまった。


「アラド技術長。貴様を拘束する。軍規違反の数々――特に、裏切り行為の罪状は最も重い。外患誘致に等しい罪状が下されると思え」


 ジョージ大尉が手を挙げると、兵士たちがアラド技術長の身体を拘束した。魔導器のライフルや槍の穂先を向けられながら、アラド技術長は牢へと戻っていった。

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