屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)

わたなべ ゆたか

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第八部『聖者の陰を知る者は』

プロローグ

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第八部『聖者の陰を知る者は』


 プロローグ


 タムール大陸の南よりに、インムナーマ王国という大国がある。その中央よりの平原に、首都である城塞都市、王都タイミョンが存在していた。
 その王城のすぐ側にある大聖堂の一室で、法王である、ユピエル・ハーバートンは修道僧からの報せを受けていた。
 白地の法衣に赤いガウンを羽織っているユピエルは、小柄な男だった。年の頃は、もう五〇を超えているだろう。ズケットと呼ばれる半球状の帽子から零れた頭髪は、殆どが白髪となっており、光の加減によってはシルバーグレイにも見える。
 ドアへと向いておかれた執務机に座っているユピエルは、その深い皺の刻まれた目を瞬かせた。


「……その話は、真実なのでしょうか? 王国内に、それほどに大きな異教の神殿が存在するとは」


「残念なことに、真実で御座います。話では、異国の娘が滞在し、神殿のある村に住む男と結ばれたようです。それと……こちらは本来であれば、あってはならぬことなのですが……」


 言い淀む修道僧へ、ユピエルは鷹揚に片手を挙げた。


「あなたが罪を感じることは、なにもありません。報告を続けて下さい」


「――はっ。寛大な御言葉に、心からの感謝を申し上げます。神殿に入った男へ、嫁いだ者がいるようです」


「……それは、どういう意味ですか? 先ほどの男は、異国の娘と結ばれたのではないのですか?」


「左様に御座います。ですが、その男は村の女人とも結ばれたと……しかも、その女人は元騎士ということです」


 その報告を聞いて、ユピエルの顔に沈痛な表情が浮かんだ。


「残念なことです。人というのは、こうも淫欲に抗えないのでしょうか。使いを出し、説得と改宗をさせねばなりませんね」


「――はい。わたくしも、それを考えておりました。その騎士はセラという名らしいのですが、元はアムラダ様の信徒。我らの言葉に耳を貸すことでしょう」


 ユピエルは修道僧の発言に、羊皮紙に書簡を書き綴ろうとした手を止めた。


「……お待ちなさい。その――騎士はもしや、《白翼騎士団》に所属していたのではありませんか?」


「はい。法王様は、かの騎士団を御存知でいらっしゃるのですか?」


「……詳しく知っていた、という訳ではありません。ハイント領は、王家に連なる家系なのです。ハイント領の長女が騎士団を設立した際に、面会を受けたことがあります。セラというのは、副団長だったはずですが……」


 ユピエルは僅かに震える手で羽ペンを置くと、修道僧に告げた。


「その騎士の説得には、わたくしが赴きましょう」


「法王様、自ら――御言葉ですが元騎士への説得など、ほかの者に任せておけばよろしいかと」


「先ほども言いましたが、ハイント領は王家に連なる家系です。万が一にも失礼があってはなりませんこれは、法王としての責務なのです。これの件は法王の勅命により、最優先事項として処理致します。皆にも周知させ、出立の用意を急がせなさい」


「はっ。仰せのままにいたします」


 修道僧が退出したあと、ユピエルは執務机の引き出しを開けた。そこにある小箱を開けると、古びたペンダントが収められていた。
 アムラダのシンボルである、杖と太陽が組み合わさった飾りに手を触れたユピエルは、深い溜息を吐いた。

   *

 王都タイミョンにある図書館では、ジョシア・コールが目を丸くしていた。
 通常なら一介の司書が立ち入ることができない、豪奢な造りの応接間だ。大理石の壁やら、蝋燭が何十本も灯せるシャンデリア、テーブルや椅子は木製だが、柔らかい羽毛を包んだ生地で、背もたれや座面が覆われていた。
 ジョシアの対面に座っているのは、豊かな金髪をシニョンに纏め、今日は鮮やかな青のドレスに身を包んだ王家の末姫、キティラーシア・ハイントである。
 ジョシアは一定の敬意を示しつつも、キティラーシアの要望に添う形で、畏まり過ぎないような言葉遣いでの対応をしていた。


「お兄ちゃんが、結婚式を挙げるんですか?」


「ええ。レティシアからの文では、春を予定しているそうですの。わたくしも参列したいのですが、お城の行事や他国との会談もありますので、難しくて。ですから、わたくしの代わりに行って下さいませんか?」


「残念ですが……春になると図書館でも休みが取れなくなるんです。王都内にある学院に新入生が入ったり、役場に勤めだした人たちが、過去の資料を探しに来ることが増えますから」


 王都の図書館は、主に貴族階級の者たちが多く訪れる。学院や役場も、所属しているのは殆どが貴族階級の者たちだ。
 それだけに、その対応を滞らせることは出来ない。
 キティラーシアは少し残念そうな顔をしたが、すぐに明るい顔でポンと手を打った。


「でしたら、冬のあいだに御挨拶に行くというのは、どうでしょうか。それでしたら、お仕事をお休みすることもできますわよね」


「それは……ええ、可能だと思います。残る問題は、旅費なんですけど……なにぶん急な話ですから、貯蓄もしていませんし」


 ジョシアが苦笑いをすると、キティラーシアはおっとりと微笑んだ。


「その心配なら、わたくしに任せて下さいな。ちょうど、わたくしのお知り合いが、メイオール村へ行くらしいですので、同乗させて貰いましょう」


「え、あの……いいんですか? 平民のわたしが一緒なんて」


「ええ。信頼の置ける御方ですから、ご安心下さい」


 キティラーシアの言葉に、ジョシアは少し勇気づけられた。軽く深呼吸をして気持ちを落ち着けると、普段通りに微笑んだ。


「それであれば、是非にお願いしたいです。それで、メイオール村へ行くのは、どんな御方なんですか?」


「ユピエル法王猊下ですわ」


「……え?」

 あまりにも予想外な返答に、ジョシアは一瞬、自分の耳を疑った。あまりの衝撃に、あとは瞳孔から光の消えたまま、キティラーシアの発言(やや問題あり)に、頷くことしかできなかった。

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本作を読んで頂き、誠にありがとうございます!

わたなべ ゆたか です。

第八部の開始ですが……あ、ありのままに起こったことを書き連ねます。

最凶の音声使い~の大賞エントリーをしようとしたら、本作のエントリーが完了していたんです。

一瞬、マジでなにが起きたか理解できませんでした。

……寝不足でこういう処理をするもんじゃないですね。ただ、参加するからには頑張ります。マイペースにはなると思いますが、もしよろしければ、よろしくお願いします。

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

次回もよろしくお願いします!
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