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ドゥーベ辺境伯家 3

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ぶわっと感情が昂ぶり目尻に涙が溜まる。
ダメよ、泣いても解決しないのよ。自分が可哀想なんて思っても意味は無いの。
拳を作り握り込み、歯を食いしばる。
考えるのよ、考えなきゃ。今私に出来る事は何か、しなければいけないのは何か。
皆いい人そうだけど本当に信用していいのか分からないし。
それなりに社会に揉まれた里菜は人を見る目を養ってきたつもりだが、出会ってから時間が短すぎる為信頼していいものか判断がつず、この異常な状況で疑心暗鬼になっていた。
これからどうなるんだろう、誰かに頼りたい、この不安な気持ちを誰かに支えて貰いたい。
「ダメだな私」
ポツリと呟いた。
こんな私を職場の人が見たら笑われそう、そんなキャラじゃないでしょって。
でもこれが私、弱い私、だから強い私をいつも作ってた、それで今までなんとかやってきたんだから、これからもそうしなきゃ、子供のように泣く訳にはいかないもの。
拳を緩め肩の力を抜き、はぁと息を吐いた。
そのままウトウトし始めた時、コンコンとドアを叩く音が聞こえ、返事をするとアリーが入って来て夕食の準備が出来たと知らせてくれる。
乱れた顔と髪を手早く直してダイニングまで案内された。
そこにはドゥーベ辺境伯家の一同が揃っていた。
エドワイドさんとその奥様でマリーヌさん、銀髪でとても美人な人だ。
そして私にとっては兄になる人が二人いた。レイニードさんとアヴァンスさん。
気後れするくらい美形一家である。
「リナ、あぁリナ。また会えて嬉しいわ。あなたの成長を想像して毎年ドレスを用意してたのよ、ようやく着て貰えて本当に嬉しいわ」
毎年用意?じゃあこのドレスは。
「それはあなたのドレスよ、よく似合ってるわ」
にっこりとマリーヌさんが微笑む。
私の為に?どうして、いつ戻ってくるか分からないのに。
「どうしてって顔ね、リナが大好きだからよ、可愛い私の娘。あなたの成長を想像するのはとても楽しかったわ」
「ドレスありがとうございます。でも、私何もお返しするものがありません」
「おいおい、リナ。ドレスを作った礼を娘に求める親はいない。さっきも言ったが私達は家族なのだ、遠慮は必要ないのだよ」
「はい、ありがとうございますお父様、あの、お母様」
「ま、まぁぁぁ」
「リナ、レイ兄様と呼んでみてくれ」
「あ、それなら俺の事はアヴィ兄様と呼んでくれ」
この人達は私を本気で家族として受け入れてくれてるのだろうか。
里菜は緊張していた身体を緩ませた。
「さあ、食事をしよう」
料理はどれも美味しかった。
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