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60・建国祭が盛況なワケ
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「あの人、ディルですよね?」
「ええ。建国祭だからでしょうけど、魔力の気配を抑えていないわね」
美しい庭園にしつらえられたパーティー会場の中、ディルはそれぞれの席で食事や歓談を楽しんでいる賓客の元へ向かい、短いながらも丁寧に言葉を交わしている。
その長身の迫力と心身の鍛え抜かれた気配、まとっているだけで凶器とも思える魔力の威圧感まで、普段とは比べ物にならないほど研ぎ澄まされていた。
物静かな話し方ですら、相手を戦慄させるほどの凄みがある。
「かわいい……!」
「あなた、魔帝を見ての第一声がそれなのね」
「だって見てください。今もほら! 横柄な態度で周囲を困らせている人に気づいて、鋭い眼光を向けていますよ!」
「ええ。無礼者がもう二度とあんな態度を取られないほどの恐怖に突き落として、おとなしくさせているわね」
「ディルが不穏な気配をしっかりと判断して、魔帝として真面目に、健気に役目をこなしている姿……! すっごくかわいくないですか!?」
「かわいいという感想はあなただけでしょうね。でも畏敬の念を持つ者は多いみたいよ」
言われてみると魔帝の風格に人々は委縮しつつも、憧れに似た眼差しを投げかけているようだった。
本当は誰もが気づいているのかもしれない。
魔帝が容赦のない強さを持ちつつも、彼らの国にとって無益な争いを仕掛けないことを。
長話をしないディルは、賓客と一言二言話すとその席を離れる。
短い会話は必要以上に恐れさせない配慮だと思うけれど、話が終わるたびに視線をあちこちへ巡らせていた。
招待客の誰かを探しているのかもしれない。
ベルタさんがさっと私の前に立って、ディルの視界から私を遮った。
「レナーテ、ディルベルトがあなたに気付いたら、おそらく魔帝というより猫帝になってしまうわよ」
確かに私が手を振れば、ディルの魔帝スイッチが切れて穏やかな笑顔を返してくれる様子が浮かんでくる。
ニャーンとか鳴いてくれたりするかも……!
そんなの絶対にかわいいけれど、今は私の姿を見せない方がいいこともわかっている。
とりあえず目的でもある、ディルの魂剥離の症状が安定していることは確認できたし。
「ディルに見つからないうちに、この区画を離れることにします」
「そうだったわ。私、コカトリスの卵で作った限定アイスも食べに行きたかったの! せっかくだから付き合ってちょうだい」
「限定品、たくさんあるんですね」
「だから建国祭は盛況なのよ」
「なるほど」
年一回、ここでしか味わえないと思うと、どうしても食べたくなるのはわかる。
私はベルタさんに連れられて、彼女のお目当てのアイスがある区画へ向かうことにした。
去りぎわに振り返ると、ディルは今も賓客たちに挨拶をしている。
人々を恐怖で震え上がらせて、魔帝としての務めをしっかりと果たしていた。
あそこまで怖がられていたら、友達や恋人ができないのは当然かもしれない。
さみしくないのかな。
「ベルタさんはディルが魔帝になった理由、わかりますか?」
「あなたを愛しているからでしょうね」
「ええ。建国祭だからでしょうけど、魔力の気配を抑えていないわね」
美しい庭園にしつらえられたパーティー会場の中、ディルはそれぞれの席で食事や歓談を楽しんでいる賓客の元へ向かい、短いながらも丁寧に言葉を交わしている。
その長身の迫力と心身の鍛え抜かれた気配、まとっているだけで凶器とも思える魔力の威圧感まで、普段とは比べ物にならないほど研ぎ澄まされていた。
物静かな話し方ですら、相手を戦慄させるほどの凄みがある。
「かわいい……!」
「あなた、魔帝を見ての第一声がそれなのね」
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「ええ。無礼者がもう二度とあんな態度を取られないほどの恐怖に突き落として、おとなしくさせているわね」
「ディルが不穏な気配をしっかりと判断して、魔帝として真面目に、健気に役目をこなしている姿……! すっごくかわいくないですか!?」
「かわいいという感想はあなただけでしょうね。でも畏敬の念を持つ者は多いみたいよ」
言われてみると魔帝の風格に人々は委縮しつつも、憧れに似た眼差しを投げかけているようだった。
本当は誰もが気づいているのかもしれない。
魔帝が容赦のない強さを持ちつつも、彼らの国にとって無益な争いを仕掛けないことを。
長話をしないディルは、賓客と一言二言話すとその席を離れる。
短い会話は必要以上に恐れさせない配慮だと思うけれど、話が終わるたびに視線をあちこちへ巡らせていた。
招待客の誰かを探しているのかもしれない。
ベルタさんがさっと私の前に立って、ディルの視界から私を遮った。
「レナーテ、ディルベルトがあなたに気付いたら、おそらく魔帝というより猫帝になってしまうわよ」
確かに私が手を振れば、ディルの魔帝スイッチが切れて穏やかな笑顔を返してくれる様子が浮かんでくる。
ニャーンとか鳴いてくれたりするかも……!
そんなの絶対にかわいいけれど、今は私の姿を見せない方がいいこともわかっている。
とりあえず目的でもある、ディルの魂剥離の症状が安定していることは確認できたし。
「ディルに見つからないうちに、この区画を離れることにします」
「そうだったわ。私、コカトリスの卵で作った限定アイスも食べに行きたかったの! せっかくだから付き合ってちょうだい」
「限定品、たくさんあるんですね」
「だから建国祭は盛況なのよ」
「なるほど」
年一回、ここでしか味わえないと思うと、どうしても食べたくなるのはわかる。
私はベルタさんに連れられて、彼女のお目当てのアイスがある区画へ向かうことにした。
去りぎわに振り返ると、ディルは今も賓客たちに挨拶をしている。
人々を恐怖で震え上がらせて、魔帝としての務めをしっかりと果たしていた。
あそこまで怖がられていたら、友達や恋人ができないのは当然かもしれない。
さみしくないのかな。
「ベルタさんはディルが魔帝になった理由、わかりますか?」
「あなたを愛しているからでしょうね」
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