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5章
42・確認しなくては!
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その日はセルディが砦へ出向いたため、エレファナはバートに護衛してもらい、ポリーと共に城の周辺の林を散策していた。
「見てくださいポリー、できました!」
スカートの裾をふくらませて草地に座り込んでいたエレファナが、両手を頭上に掲げる。
エレファナの手にはシロツメクサとタンポポで編まれた花の冠がのせられていた。
「ポリーが教えてくれたので、上手に作れました!」
そうして立ち上がってポリーの元に駆け寄ると、彼女の丸く結わえた頭に丁重にのせる。
「思った通り、とても似合います。ポリーのかわいさが増しました」
「ま、まぁ……」
ポリーは普段から身を飾るようなものなど一切着けないため、その華やかな花冠をのせられてぎこちない態度だったが、エレファナが目を輝かせて感想を待っているので、少し恥ずかしそうに笑った。
「奥さま、ありがとうございます。でもこのようなかわいらしいものは、私より奥さまの方が似合いますよ」
「そうですか? 私はポリーに一番似合うように作ったつもりですが……失敗しましたか」
「い、いえ! よくよく考えてみると、私に一番似合いますね」
「! やはりそうですか! ポリーもそう思ってくれましたか!?」
「も、もちろんです。奥さまが丹精込めて作ってくださったこの美しい花冠は、私に一番似合っていますとも!」
ポリーは生まれて初めて自らを賛美しながら、背後でにやつく細身の息子を振り返った。
「……バート、なんですか。言いたいことがあるのなら、変な顔をせずに言いなさい」
「僕も母さんに一番似合っていると思います」
バートの言葉にエレファナが自信ありげな顔をするので、ポリーはまだ照れくさそうに微笑んだ。
その後も三人は、作った薬草を渡した騎士から「子どもの病が治った」と感謝されたことや、エレファナの採った果実を食堂で提供したところ、果物嫌いの使用人が夢中になって食べていたこと、「今日はブルーベリーがたくさん採れたらジャムを作ろう」など、和やかに話しながら歩く。
(あら、誰でしょうか?)
ようやくブルーベリーの木が見えて来たころ、遠く離れたところに見知らぬ三人の男たちが群がっていた。
(ドルフ領は砦を守ってくれる騎士や、通いの使用人以外は立ち入らないと聞きましたが……騎士の鎧とも、使用人の動きやすい服とも違う気がします)
男のひとりは派手めな貴族風の服に身を包み、なにやら指示をしている。
残りのふたりは彼の従者なのか、いかにも鍛えて屈強そうな男たちで、ブルーベリーの木と貴族風の男の間を往復しているようだった。
エレファナのそばで、バートとポリーが鋭く一言ずつ交わした。
「母さん」
「わかっています。奥さま、さぁこちらへ……」
すぐ駆けだしたバートの横を、しかしエレファナが軽々と追い越したので、親子は同時に息をのんだ。
「えっ、お待ちください奥さま!?」
「足元がわずかに宙に浮いて……そうか飛行術!」
(あの方たちはセルディさまの大切な木のそばで、一体なにをしているのでしょうか? 確認しなくては!)
エレファナはバートとポリーをあっという間に引き離す。
従者の男たちは素早い速度で迫りくる謎の女性に気づき、驚いた様子で声を上げた。
「おい、あの女は何者だ!? 波をつかまえたサーファーみたいな勢いで、こっちに向かって突進してくるぞ!」
「何者でもいいさ! おおい、そこの旨そうな生ハム色の髪をしたあんた! ちょうどよかった、助けてくれぇ!」
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スカートの裾をふくらませて草地に座り込んでいたエレファナが、両手を頭上に掲げる。
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「! やはりそうですか! ポリーもそう思ってくれましたか!?」
「も、もちろんです。奥さまが丹精込めて作ってくださったこの美しい花冠は、私に一番似合っていますとも!」
ポリーは生まれて初めて自らを賛美しながら、背後でにやつく細身の息子を振り返った。
「……バート、なんですか。言いたいことがあるのなら、変な顔をせずに言いなさい」
「僕も母さんに一番似合っていると思います」
バートの言葉にエレファナが自信ありげな顔をするので、ポリーはまだ照れくさそうに微笑んだ。
その後も三人は、作った薬草を渡した騎士から「子どもの病が治った」と感謝されたことや、エレファナの採った果実を食堂で提供したところ、果物嫌いの使用人が夢中になって食べていたこと、「今日はブルーベリーがたくさん採れたらジャムを作ろう」など、和やかに話しながら歩く。
(あら、誰でしょうか?)
ようやくブルーベリーの木が見えて来たころ、遠く離れたところに見知らぬ三人の男たちが群がっていた。
(ドルフ領は砦を守ってくれる騎士や、通いの使用人以外は立ち入らないと聞きましたが……騎士の鎧とも、使用人の動きやすい服とも違う気がします)
男のひとりは派手めな貴族風の服に身を包み、なにやら指示をしている。
残りのふたりは彼の従者なのか、いかにも鍛えて屈強そうな男たちで、ブルーベリーの木と貴族風の男の間を往復しているようだった。
エレファナのそばで、バートとポリーが鋭く一言ずつ交わした。
「母さん」
「わかっています。奥さま、さぁこちらへ……」
すぐ駆けだしたバートの横を、しかしエレファナが軽々と追い越したので、親子は同時に息をのんだ。
「えっ、お待ちください奥さま!?」
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「おい、あの女は何者だ!? 波をつかまえたサーファーみたいな勢いで、こっちに向かって突進してくるぞ!」
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