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6章

50・旦那さまの意外なイメージが浮かんできます

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 エレファナはまだ見ぬ王太子のシルエットとセルディが肩を組み、心を許し合って笑い合う意外な姿を想像して動揺する。

(セルディさまのお友達らしき王太子さまが、一体どんなご用なのでしょう!?)

 セルディの新たな一面に踏み込んでいる手ごたえに胸を高鳴らせ、エレファナは好奇心を抑えきれずに聞いた。

「王太子さまがくださったお手紙には、なにが書かれてあるのでしょうか?」

 セルディはエレファナの動揺している様子に気づいて返事をためらったが、しかし低く告げる。

「……俺に登城するようにと」

「!」

(王太子さまの居城へ直接お呼ばれしたということは、私が思った通り親しい気がします。王太子さまはセルディさまに相談でもあるのでしょうか? それとも共通の趣味などを楽しんだり、連れ立って遊んだりするためのお誘いでしょうか? セルディさまの趣味……私の全く知らない一面かもしれません)

「あ、あの。セルディさまは王太子さまからお呼ばれして、どのようなことをするのですか?」

「近々開かれる夜会に遊びに来いと」

「!」

(夜会に遊びに来い!? 夜会はセルディさまと王太子さまの共通のご趣味……? やはり意外です。夜会はドルフ帝国時代にもありました。私もちょっとは知っていますが、それと同じなのでしょうか?)

「セルディさま。この王国の夜会とは一体、どのようなことをするのですか?」

「そうだな……。今回は彼の弟である第二王子の主催のようで、若年層の交流に軸を置いているようだが、基本は変わらない。社交の場であるから、挨拶をしたり」

(『殿下! お会いできて光栄です!』『やぁセルディ! 来てくれて嬉しいよ!』)

「食べたり」

(『王城のパンは、うちの料理人の作るにゃんこパンにも負けないおいしさです!』『にゃんこパンか! 今度私も食べてみたいな!』)

「踊ったり」

(『セルディ、ハイタッチだ!』『御意!』)

「まぁよくある話だ」

(よくある話らしいのですが、なぜでしょう。楽しそうなセルディさまを夢想していると、私の知っている夜会とは似て非なるものが浮かんできました……。意外なイメージをかきたれられ過ぎています)

 エレファナがセルディと彼の友人らしき王太子のことを思い、たくましい想像力を働かせてそわそわしていることに気づかず、セルディは重苦しい口調で告げた。

「王太子殿下は君を紹介して欲しいそうだ」

「わ、私を!? 一体なぜでしょう?」

「どうやらフロリアンさまはエレファナが傾国の魔女だと勘付いて、その話を殿下の耳へ入れたようだ。一体どのような説明がなされたのかはわからない……。しかし殿下から手紙で事情を求められたので率直に答えると、殿下は君が人前に出ても安全だと判断してくださったようだ。聡明な方ではあるが、しかしなにか思惑も感じられるし、彼は自分の目で確かめないと気が済まないところもあるからな」

(ですから王太子さまが私を紹介して欲しいと……)

 エレファナが考え込んでいるので、セルディはその肩をそっと抱く。

「大丈夫だ。君が嫌ならばすぐにでも断るつも、」

「わかりました!」

「……ん?」



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