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第二章

薬草採取

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レイとイレーヌは初心冒険者定番の薬草採取をクエストに選んだ。

イレーヌは、ギルドの受付だったので当然薬草の知識は豊富だ。

「これがホイミ草でこれはマナ草、これは、惚れ惚れ草でこれはビンビン草、毒草も採ってね、コロリ茸にハライタ草
見つけても、全部取ったらだめよ、次にまた生えてくるように少しは残すのよ。」

「わかった。」

レイは1メートル四方の草を全てイベントリに入れて、また1メートルおいた場所のくさを取り込んで行く。
あたり一面をそうしてチェック柄のようにしてしまった。

これは要らない草といって草の山を出して、その脇に種類毎に分類された薬草を並べて出した。

「こんなに!もう十分よ
他の人のためにも、もう終りにしましょう」

ものの数分で、薬草摘みも終りになった。

「あ 魔物が来るよ!」

「このあたりは、そんなに強い魔物はいないはずよ。
何かわかる?」

「クレイジーバッファロー」

「えっ なんで?なんでこんな初心冒険者用の場所にCランクの魔物が!
何匹いるの?」

「20匹位」

「に 逃げるわよ」

「狩らないの?」

「狩られちゃうわよ」

「ぼくがやってもいい?」

「へっ? そ そうね
アンタ強いんだよね。
私を守りながら戦えるの?」

そうこう話してるうちに、
ドドドドドドと地鳴りがする

「イレーヌの周りに壁と結界張るね」

レイがそう言うと、イレーヌの周りに小窓が付いた土壁が現れてその上結界が施された。

イレーヌはその小窓から覗いて見ている。

クレイジーバッファローが次々とひっくり返っては姿が消える。
20匹余りのクレイジーバッファローが全て姿を消した。

レイがニコニコしてやって来て、土壁と結界を解いた。

「レイ 今の何よ、なんでクレイジーバッファローがやって来てはひっくり返って、消えるのよ」

「それは、ストーンバレットを眉間からせき髄へと撃ち込んで神経〆にして殺して、イベントリにしまっただけだよ」

「見えなかったわそんなの」

「ストーンバレットは小さいから」

「逃げようとか言ってた私がバカみたい。」

「大丈夫だよ、ぼくしか見てないし、クレイジーバッファロー美味しいよ。
神経〆にしたから、生臭みもないよ。」

「アンタ、食べることまで考えて殺したの?」

「うん、皮もどこも破って無いよ」

「アハハハハ、まったくアンタは、規格外ね。
とにかく、ギルドに報告しないといけないわね。」





二人は、ギルドに戻り採ってきた3割位の薬草を提出した。

「あの時間から出かけて、こんなにたくさんとったんですか?優秀ですね」

イレーヌが辞めたあと採用された受付嬢が驚いていた。

その娘の胸には「研修中ゴローナ」のプレートがあり、可愛らしい猫系の獣人だった。

「ゴローナさん、ギルドマスターのオージンに会いたいんだけど、大事な急用で」

イレーヌがそう言うと、ゴローナは奥へと直ぐに小走りで行った。
ゴローナは直ぐに戻って来て、カウンターを跳ね上げて

「どうぞ、お入りください。マスター室は、ご存知ですよね」
と言った。







「イレーヌ、急用とは?いったい」


「薬草採取用の森の入口付近で、クレイジーバッファロー20匹に襲われました。
Cランクの魔物が、集団で初心冒険者向けの場所に現れるのは、異常だと思い報告に来ました。」

「まじで?ちょっと信じ難い話だが」

その時レイがクレイジーバッファローの魔石をゴロゴロと出して見せた。

「確かに、クレイジーバッファローの魔石だ。
でも、どうやってそんなにたくさん、たった二人で倒せたんだ?」

「二人じゃありません。レイが一人で倒したんです。
私はレイが作った土壁に隠れてました。
カードの討伐記録も見てください」

「むむむ そうか、わかった。魔石はギルドで買い取ろう。少しは肉も持ってきたのか?」

オージンが唾をゴクンと飲み込む音が聞こえた。

「全部丸ごと持ってますよ。」

「な なんと、もしかして『マジックバッグ』持ちか?」

「ええ、まあ。時間停止機能も付いてますので、鮮度抜群ですよ。」

「凄いなそれは、一度に出されては解体も間に合わないので助かる。
ギルドに卸してくれるんだろう?3日おきのペースで頼めるかい?」
オージンは、また唾を飲み込んだ。

「解体はスキルで出来るので不要です。
在庫もしておきたいし、配りたい先も有るので、10匹分だけでもいいですか?」

「ああ、もちろんそれで構わないよ。
解体が済んでいるなら、1匹分あとで厨房に卸してくれ。」
オージンはまた唾を飲み込んだ。

「それとだ、レイ君を家族カードでは無く、通常のカードとする。
ランクはBで。
クレイジーバッファローが出た森に調査隊の一人として参加してもらいたい。
もちろん、イレーヌも一緒だ」

「それって強制参加ですか?」

「イヤイヤ、断られると困るんだ。ここのギルドも人材不足でね。
あの場所でクレイジーバッファローが出たとなると、Aランク以上を集めて調査したいところだが、それだけの実力者はそういないのだ。指名依頼とするので、是非受けてもらいたい。
頼む、やってくれ。」

「1つ条件をだしてもいいですか?」
レイが口を開いた。

「なんだねレイ君、私で叶えられる条件なら」

「じゃあ、クレイジーバッファローのフルコースを僕たち二人に奢って下さい。
ちなみにぼくは5人前でおねがいします。」

「アハハハハ、材料持ち込みの君には、頼まれなくても奢るよ。私も今から食べるのがたのしみだよ。」

「さっきから何度も、唾飲みこんでましたね。オージンさんも好物なんでしょう。」

「もちろんだよ。クレイジーバッファローが嫌いだって奴は会ったことが無い。
レイ君、腹いっぱい食べてくれ」
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