上 下
11 / 34
第二章

食った分だけ

しおりを挟む
クレイジーバッファローのフルコースは、その日から早速始まった。
まずは焼肉で部位毎に切り分けた肉を網焼きで食べまくり。〆はもも肉が握り寿司になって出てきた。
2日目はフレンチ、3日目は中華、4日目は、すき焼きとしゃぶしゃぶ、
5日目はステーキ、6日目はハンバーガー、7日目は牛丼と芋煮
そして、この時期レイはまた睡眠をたくさんとった。

イレーヌは、レイと出会ってまだひと月程度だが、その間のレイの急成長は、異様なほどだった。
最初の頃は年齢より小さく見えて、かつヒョロヒョロに痩せていた。
今は、年齢よりも3歳位歳上に見えるほどになっている。

今日は調査チームの顔合わせが予定されている日なので、レイをいつまでも寝かせてはおけない。

「レイ 起きて! 起きなさい。今日は調査チーム顔合わせだから、寝てられないのよ」

イレーヌはレイの布団をはぎ取った。
レイはむにゃむにゃ言葉にならない声を出して、めをつぶったまま、手で布団をさがしている。

「まったく 子どもなん……!」

イレーヌは息を飲んだ。

レイのレイがパンツから顔を出して天に向かってそびえ立っていたのだ!

イレーヌの目は、その一点に釘付けになっていた。

イレーヌは、この世界ではとっくに結婚適齢期を過ぎた24歳だったが、その手のことには奥手で、一度も経験が無かった。
それと言うのも、イライザから聞かされた「ゴブリンに犯された話」のせいかも知れない。
痛くて恐い印象が強くて、最近では、前にもまして、男性とは手が触れるだけで、ビクッとなるようになっていた。

レイもこれで女性を襲うのかしら?

いやレイは絶対そんなことしないわ。

レイに求められたら?

いやこんなオバサンにそんなことあるわけないわ。

でも、私の裸を見たときに綺麗だって、言ってたわよね

私の初めては、レイのこれ?
脈打ってビクンビクンしている。

ちょっとだけ触ってみようと思ったら

「う~~ん」とレイが声を出したので、ビックリして、布団をかけてやった。

今見られたら、私の顔は真っ赤に違いない。
二度三度と深呼吸してから、再度布団の上からレイを揺すって起こした。

レイは、イレーヌに揺り起こされ目を開けると、目の前でイレーヌの大きな乳房が揺れている。レイは慌ててくの字になって

「起きるから、イレーヌ!ちょっとあっちに行ってて」

そう言って慌ててズボンを履いて

「トイレ!」と言って、部屋から出て行った。

レイが15歳になったら、私は32か。やっぱりそんなことないわよね。
イレーヌはちょっと火照った自分の体を抱くようにして

「バカね」

と呟いた。







調査チームの顔合わせでは、Aクラスばかり3人で構成されたパーティが1つ。
ほかはメンバーの内1人だけAクラスのパーティが4組
それとレイたちのパーティの計6組だ。

レイたちだけがAクラスメンバーがいないパーティで、しかも二人構成だった。

あるパーティのリーダー格っぽい人が、私たちを見かけると寄ってきて

「先日はうちのゴロツスキーが迷惑をかけて済まなかった。酒を飲まなければ、そんなに悪いヤツではないのだが。申し訳なかった。
ここでは協力しあって任務を遂行しよう。」

一瞬なんのことかと思ったが、少し離れた所でハゲ頭をペコペコさげてるおじさんがいて、納得した。

「もう、気にしてませんから、魔物のエサにはしませんからご安心を、とお伝え下さい」

その他のパーティは、イレーヌがギルドの受付をしてたときに見知った顔で、絡んで来ることも無かった。



「それでは、調査チームの会議を始めます。
わたしは、『ダッシュ』のリーダー シゲルです。
この調査チームの中で『ダッシュ』のみが全員Aクラスメンバーということで、『ダッシュ』のリーダーである不肖私が僭越ながら司会進行役をつとめさせていただきます」


「予め皆さんには、戦力について自己申告していただいてます。これに基づき今回の作戦を進めたいと思います。
そのため、申告に虚偽が含まれた場合、作戦に支障をきたすことになりかねません。
パーティ『イレーヌとレイ』のレイさんにお尋ねします。ここに書かれてる魔法全系統全種類は本当ですか?
まだお若いようで、自分を過大に見せたくて書かれたのではないですか?
これでは、大賢者ジーナと並ぶ者となりますが」

「イレーヌやっていいヨね」

「ハァもう好きにして」

レイは体に光を纏い、空中に浮いた。両足から光の粒がシャワーのようにこぼれ落ちながら消えて行く

「では、何からお見せしましょうか?」

「そうですね光魔法は既にお見せいただいてますので闇魔法を」

「では、さほど危害のない呪い『シムケン』」

「それはどういった アイーン 呪いですか アイーン」

「アイーンがしたくてたまらなくなる呪いです」

「そうですか アイーン
確かに アイーン さほど危害は アイーン ありませんね アイーン」

「あちこち痒くなる呪いもありますが、どうですか?折角の機会ですので、やりましょうか?」

「勘弁して アイーン
下さい アイーン
この呪い アイーン
解く方法は アイーン
ありますか アイーン」

「明日には自然と解けますからご心配無く」

「できれば アイーン
今すぐ アイーン
解いて アイーン
いただきたい アイーン」

「そうですかぁ
では、解きますよ
えんや~こ~らやっと
どっこいじゃんじゃん
こ~らやっと
どうですか?これで呪い『シムケン』は解けるはずです」

「えーと あー うー
本日は晴天なり
大丈夫みたいですね。
攻撃系は、危険ですので、最後に、治癒・回復系統を見せてください。」

「そうですね。部位欠損とかの人が居ると分かりやすいですが………
そちらの、メガネをかけた女性のかた。
お手伝いいただけますか?」

三十代半ばの如何にも魔法使いといった格好の女性がそばに来た。

「嫌なのよね。あなたみたいに若い人のそばは、余計歳とって見えるから」

「すみません。ご協力感謝します。」

「私どこも悪い所なんて無いわよ」

「メガネはいつ頃から使ってますか」

「子どもの頃からよ。両親もメガネだし」

「では、ちょっとメガネをはずして下さい。」

「恥ずかしいわ。鼻にもメガネの跡が付いてるし」

「すぐ終わりますから、おねがいします。」

「そ~~お 本当にすぐ終る?」

「ええ もちろん
少し目を閉じてて下さい」

レイは、そう言うと女性のメガネを外して

「パンプルピンプルパムポップン」と唱えた

「はい、もう良いですよ。目を開けて」

「えっ ウソ、見える見えるわ」

レイは『イベントリ』から手鏡を出した。

「こちらの手鏡で見てください、メガネ跡も無いはずです」

「えっ? なに? 私の顔、艶々して、シミもシワもタルミも無いじゃない。
まるで10代の娘みたい」

女性は立ち上がると、自分の体をあちこち触ってる

「お尻もピンとして、お腹周りもスッキリして、カサついてた脚もツヤツヤしてる
若返ってる!若返ってるわ!
ねぇあなた 明日になったら元のオバサンってこと無いわよね」

「大丈夫です。美魔女をお楽しみ下さい。
ちなみにメガネには鑑定を付与しましたので、よかったら引き続きお使い下さい」

このあと、レイは女性冒険者に取り囲まれ、会議は収拾つかなくなった。

イレーヌが困惑しているレイの前で、仁王立ちになり、

「アンタたち、バカなの?
群がって頼んだら次々若返らせてもらえるなんて甘いこと考えて無いでしょうね。
そんなことしたら、レイに向かって世界中から女のスタンピードが起きるわよ。
この能力を見せてしまった以上、ここにいる皆さんには、男性も含めて『レイの若返らせる能力は、第三者に絶対話さない、教えない』契約をしていただきます。『契約に反した場合は、その者の命をもって償う』とします。」

「そんな一方的な!
俺は嫌だぜそんな契約は」

「なぜ嫌なんですか?レイの能力を喋らなければいいだけですよ。あなたにデメリットは無いでしょう。」

「その気がなくても、酔っぱらってつい話しちゃったら、死ぬんだろ。嫌だよ」

「契約しない方には、一生解けない呪い『加トちゃんケンちゃん』をプレゼントしますそれでいいかしら?」

「どど どんな呪いだよ。」

「言葉を発しようとすると
『ペッ ヘックシュ アイーン』
に全て変換されます。
因みに書いても同様です」

結局部屋にいた全員が契約した。

「契約済んだ人で、若返りたい人は、こちらへどうぞ
今回のみの特別サービスですよ」


混乱は収拾してその日の会議は終わった。



イレーヌは、レイにそんな能力があるなら、自分がレイを好きになってもいいのかなぁと考えていた。
しおりを挟む

処理中です...