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第三章

ティン砲

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「あの女から仕留めるぞ
ゴローナは隠れてて」

レイはそう言うと、ゴローナを離して、一人急降下した。

ゴローナは、『操作』スキルで空中に留まったまま『隠蔽』で隠れている。


「なんだお前は!」
ヒール・デ・フンデはそう叫んだ次の瞬間にはもう首をハネられていた。
彼女の胴体は、右手で斬り落とされた頭の髪を掴んで拾い、左手はティン砲に添えた。
すると、ヒール・デ・フンデの体はティン砲に吸収され、ティン砲から彼女の頭が、生えた。

「そっちが本体か、なかなか面白い」

ティン砲は、どんどん形を変えてゆき、ヒール・デ・フンデを形作り肩には、バズーカと機銃が載っている。

「今お前を粉々にしてやるよ」
ヒール・デ・フンデがトリガーをひく

ズババババババ
ドッカーン
ズババババババ
ドッカードッカーン

レイは結界をまといその上に土壁をつくった。

土壁が破壊されモウモウと土煙が上がる中を隠れ蓑にレイは移動して、サンダーボルトを放った。

ヒール・デ・フンデに着弾すると、彼女は膝から崩れ、四つんばいになった
体が、バチバチスパークして光を発している。
すると、彼女の体が1.5倍位に大きくなった。

「ハハハハハ わざわざ力をごちそうしてくれるのかい。気持ちいいわ。」

そう言うと、そいつは駆け出して、周りの魔物をどんどん取り込んで行く。
体の大きさもそれに連れて大きくなっていく。

レイの方を向いたと思った瞬間、口を大きく開いて魔力ブレスを吐いた。
レイは、それを避けずに、打ち返した。
魔力ブレスは、ヒール・デ・フンデの脇を通り過ぎ、峠へと登って来る魔物たちをなぎ倒して行った。

レイは、即座にヒール・デ・フンデに肉迫し、背中の二つの魔力嚢を斬り落とした。

「よ、よくも私のティン玉を!」

その時それまで隠れていたゴローナが飛び出してきて、ティン玉を結界で包み持ち去った。

「待て!」

「お前の相手は俺だ!トウ!」

レイはヒール・デ・フンデの胸に手を突き刺して核を握り潰した。

「まずい、ヤバイってこれ!」

ゴローナは、結界で包んだティン玉がどんどん膨れ上がるのを感じて、空の方に打ち上げた。

『転移』で、レイが来たと思った次の瞬間、また別の場所に『転移』した。

ドッカーン ドッカーン

夜空に特大の花火が2発上がった。

「さて、後はこの魔物たちを片付ければ、いいな」



「アハハハハハ
全部吹き飛んでしまえ~
ギガスレイブ!」



ちゅどーん!




峠も、魔物も跡形なく消え去り、巨大なキノコ雲がその爆発の激しさを物語っていた。



「ねぇレイ あなた悪い顔をしてたわよ。
それと、また全部消し飛ばしたのね。
この魔物たちを、動かしてたのが、どんなヤツとかは、また聞き出せないじゃない。」


「ああ、ごめん。でも、なんとなくわかるよ。」

「えっ そうなの?」

「ヒール・デ・フンデとか魔物をぶっ飛ばしたからか、『探知』がレベルアップしたみたいだ。
南のフジタカ山の樹海に強い魔素を感じるから、そこに行こう。」






レイとゴローナの二人は、フジタカ山の樹海を進んでいる。

「ねぇ、アレって」

「自殺した人かな」

木の枝から首吊りした人が、ぶら下がっている。

死臭を放ち腐った骸は、虫が住み着いているようだ。

その人を結界で包み、ロープを斬ってから、足元の土を掘り起こし埋葬した。


魔素の濃い方に行くと、何人もの人が、首をくくっているゾーンに来た。

「気持悪いね。みんな弔う?」

「そうだなぁ。でも、その前にアイツ隠れてるつもりなのかな?」

「えっ なに?」

「あそこの首吊り男
 裸に海パンのヤツに攻撃してみろよ」


ゴローナがその男に向けてクナイを投げると




「危なっ! なんて物 投げるんだよ!」

「あんた何で、死んだふりして、ぶら下がってたのよ」

「そりゃあ、獲物を安心させて不意打ちする為に決まってるじゃん」

「獲物は、アンタのほうよ」

「そんなの関係ねぇ
そんなの関係ねぇ」

海パン男は、変なポーズをして踊っている。

『影縛り』ゴローナの術で海パン男は固まった。

「ねぇレイ、こんなザコ相手するだけ時間の無駄よね。
でも一応聞いてみる?」

「どうせ、たいした情報は持って無いだろ。始末したら」

「ちょ ちょっと待った旦那!
俺はこう見えても魔王七魔将の一人、モッコリ・ミナイデだ。
だから、強いんだぞ!
恐いだろ。」

「お前 ヒール・デ・フンデは知ってるか?」

「もちろんだ。ヤツは、俺と同じく魔王七魔将の一人だ。ヤツのティン砲は一発で町をふっ飛ばす威力だ」

「俺はそのヒール・デ・フンデを倒して、ここに来たんだ。お前あいつより弱いだろ。
魔王の居場所を教えたら、苦しまないように殺してやる。教えないなら、さんざんいたぶってから殺す。」

するとモッコリ・ミナイデの体がどんどんしぼんでいった。
まるでぶら下がっていた木に吸収されたみたいに見えた。
辺りを見回すと、やはり先程迄人がぶら下がっていたのに、それが見えなくなっていた。

「ビュン」木の枝がムチのようにしなって襲ってきた。

レイはもちろんゴローナにもそれは当たらない。

「ねぇレイ、コイツ私にやらせて」

「ああ、いいけど」

「サンキュー」

ゴローナは、霧を吹いた。


すると先程まで蠢いていた木がおとなしくなって、葉を落としてどんどん萎びていく。

ゴローナが一本の木の所にいって
「にやっ!」
と爪で引っ掻くと、あたりの木は消滅して、ゴローナの手には魔石が有った。

あまりにあっけなく終わったので

「ゴローナ、どうやったんだ?」

「幻術にゃ」

ゴローナの説明では、幻を見せて弱った所を仕留めたそうだ。

ーーーーーーー

モッコリ・ミナイデ視点

なななんだこの霧は、枯葉剤?
ヤバイヤバイ
あいつ毒使いかよ
苦しい息が出来ない
水 水をくれ!

え え こんな時に
ファイヤーボールだと!

ああ、燃える 燃える
熱い熱い
体が灰になっていく。

もう、俺は終わりだ、畜生め。なんて女だ!
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