神の手違いで転生先の人が生きていたので、2重人格になりました。

烏帽子 博

文字の大きさ
12 / 36
第一章

ジョンの失踪

しおりを挟む
ジョンの悪行は、次々と証言者が現れて、余りに多くなり、特に悪質と思われることに絞って、裁判が開かれることになった。

しかし、そこにジョンの姿は無かった。
王族だから ということではなく、ジョンは姿をくらましたのだ。
裁判は、被疑者不在のままに開かれる世にも稀な欠席裁判となった。



「彼は、嫌がっているのにスキルで縛って、服をハサミで切って、私を裸にしたんです。
それから指を………
ああ~~、言えません
とにかくおもちゃにされました。うううっ」

「女の敵~~~」

「死刑だ!死刑!」

「去勢しちまえ~」






「騎士学院時代。彼とパーティを組むのは、皆嫌がっていました。
彼はパーティの誰が倒した魔物だろうと、全て自分の手柄にするんです。
それから、仲間の女性に対しても、性的サービスを強要しました。
またある時、ダンジョンから彼一人だけ生還したことが有ります。
仲間をスキルで束縛して、生贄にしておいて、一人だけ逃げ帰ったことがあります。
これはたまたま、居合わせた別のパーティの者が見ていて、生贄にされた人を助けたことにより発覚しました。
全て彼の犯行では無いでしょうが、このとき以前にも、彼のみが生還した事例が2回有ります」


「人でなし~」

「死刑だ 死刑!」

「生きてる価値なし!」

「地獄に落ちろ」






そしてジョンの側室となったリリーが登場した
側室とはいえ、妃殿下がその夫の罪状を語るのは、皆驚きの目でみた。

ジョンは、まだ当時メイドだった私を、スキルで束縛し犯しました。
私が行かないと、他のメイドが襲われます。
私さえ我慢して犠牲になれば他の人が救われると思い、私はジョンの言いなりになりました。
メイドの中には、ジョンに取り入って、側室の座を狙ってると言う人もいました。
実際後に側室となりましたので否定はしません。
でも、私の中でジョンは悪魔です。
わたしはそれから悪魔の子を宿しました。
子どもに罪は有りません。
そんなことは分かってるんです。
でも、愛せないんです。
自分で産んた我が子を!
ジョンの血が流れていると思うと恐ろしくて恐ろしくて。
我が子は、孤児院に預けました。
わたくしは、修道院に入りました。
わたくし始め、数多くの人の人生をおのれの欲望のままに踏みにじった者に、どうか厳しい裁きを与えて下さい。
彼のせいで死んでいった者、辛い思いをした者に心の平安が訪れるように祈ります。

裁判所の中ではアチコチからすすり泣く声が聞こえた。


そして、決闘の場において降参した後に襲いかかったこと、裁判前に逃走したことを踏まえて、死刑が確定し、その首には賞金がかけられた。


「なぁロベルト、ジョンの脱走を誰か手助けしたはずだよな。」

「ユウトわかってるよ。でもその人の名を口にしちゃあダメだよ。」

「どうするんだよ、ジョンの犠牲者が増えるぞ」

「君の手でジョンを始末出来ないかな。
ぼくには、出来そうもないよ」

「汚れ役かぁ。まぁロベルトの体を間借りしてたんだし、それくらいやるよ」

「すまないユウト。いつも頼ってばかりで」

「いいってことよ」





その晩ユウトは、ロベルトの体から抜け出して、次兄のパンチに取り憑いた。

パンチの記憶をなぞれば、ジョンを手の者と救い出して、西の森の別荘に匿っていることがわかった。

翌朝ユウトはロベルトと交代してメインキャラになった。

そしてジョーンズ王との面会に臨んだ。

「王様、おそれながら、お願いがございます。

ジョン追討部隊を編成して、ジョンを討取りたいと存じます。

取り逃がしたままでは王家としての面目が立ちません。
まして、もしジョンが逃走先で問題でも起こせば、王家に非難の声があがると思われます。

どうか、わたくしにジョン討伐の勅命を下さい」

こうして、王の勅命を得たユウトは、気心の知れた近衛兵の中から15人程引き連れて西へと向かった。

その中には、どうしてもついてくると言ってきかないマリーンの姿も、あった。

あと一息で別荘に付くところで、作戦会議を始める。
「ジョンのスキルは『威圧』『束縛』です。
したがって、彼が抵抗した場合、彼以上の気を持ってない者は対抗することが出来ません。
これから名をあげる者以外は、ジョンを見かけたら、直ぐに逃げて、私を呼ぶこと。
いいですね。功を焦っても、殺されるか、人質に取られるのが落ちです。
では、名を呼びます。呼ばれた者は、前に出てきて下さい、
アトス、ポルトス、アラミス、ダルタニヤン
以上4名
アトスとポルトス
アラミスとダルタニヤン
この形でバディを組んで行動して下さい。
決して単独行動はしないで下さい。
他の人も必ず二人一組を作って行動して下さい。
ジョン以外で抵抗する人との交戦は、極力避けていただきたいが、やむおえない場合は認めます。
武装していない人、無抵抗な人を玄関前に集めて下さい。
以上です。」

別荘は東に表門、西に裏門が有る。
アラミスとダルタニヤン
他4人が裏門を固め
本体が表門から中へと進む

「お待ち下さい。私、グリム伯爵家のヘンゼルと申します。訳有って、これより先に、行かせるわけにはいきません。
出来ればこのままひいていただきたい。」

するとアングリさんが、一歩前に出て
「我々は、王よりジョン元皇太子殿下討伐の勅命を拝した討伐部隊である。
我々に仇なすことは、国への反逆と見なす。
それでもなお抵抗するか?」

「妹が!グレーテルが人質にとられて居るのです。
お許し下さい。」

「バカ者!
そのジョン元殿下を手玉に取ったロベルト殿下がこちらにはおるのだぞ、貴殿など、なんの抵抗にもならん。
無駄な血を流すな。グレーテル殿は我らが全力を持ってお助けする。」

ヘンゼルは暫く逡巡したが

「………………
全員に告ぐ、武装解除せよ、抵抗せず投降せよ」

「ご英断です!」

「アトス ポルトス マリーンは付いてこい、他の者はグリム伯爵と共にここで待機
裏門のアラミス ダルタニヤンに突入の合図を送れ」

ジョンの行動は探知で把握出来ている。
一緒に居るのはグレーテルだろう。
今のところ、無事なようだ。
探知で示している所に向かって居る最中に、ジョンとグレーテルの反応が消えた。



「ユウト、反応が消えた部屋に、隠し通路が有るんだよ。王族しか知らない通路が。」

「ナイスだロベルト!」


「アトスはこの先の鳳凰の間で隠し通路を探してくれ。ダルタニヤンとアラミスが合流したら、隠し通路に入ってジョンを追い込んでくれ。
ポルトス マリーンは俺と来てくれ!
先回りして、ジョンが出てくるところを押さえる。」

「アトス、この部屋だ、頼んだぞ!」
アトス一人を置いて、北側の窓から飛び出した。
ポルトス マリーンが続いて窓から飛び出してくる。

ジョンは、人質を連れている。その上、片足片手を無くしている。そう速くは走れないはずだ。
ロベルトの記憶によれば、この先の祠に出口が有るはずだ。

俺たちが祠に着く。
まだジョンはこちら迄来てないようだ。

暫くして、祠の出口からジョンが姿を表した。

「ジョン、諦めろよ。」

「なに!ロベルト!貴様が追手か。そこから動いたらこの女の命はないぞ!」

「クッ。どうしたら……
なんて俺が言うとでも思ったかい。
闘技場同様に一瞬で首を落としてあげるよ。
それとも、もっとアチコチ切り刻まれたいかな」

その時数人の騎士が馬に乗り駆けつけて来た。

「ロベルト!ちょっと待って、待ってくれよ!」
その声はパンチ兄だった。

「ロベルト、ジョンを逃がしてやってくれよ。
もう足も手も片方しか無いんだ。充分じゃないか。
ここで死んだことにして、逃がしてやれないかな。」

「パンチ兄さん、あなたは何を言ってるか、分かってるんですか?
私たちは王の勅命を拝した追討部隊です。
そのような不正が出来るはずが有りません。
そして我々の邪魔をするなら、反逆者となりますよ」

「だから、ここに居る者だけの秘密にすれば」

「それは、全員殺して口封じでもしない限り無理です。」

「ぼくは、ジョンもロベルトも味方したいよ」

「パンチ兄に同行して来た騎士に命じる。
パンチ兄を拘束しなさい。
従わない者は、国家反逆者と見なす。」

一瞬の動揺が騎士たちにあった。
しかし、パンチ兄は同行してきた騎士によって拘束された。

その様子を見ていたジョンが、叫んだ

「ふざけるな、俺は王になるべく生まれた………ぐふっ」

ジョンは、話し終えることもなく崩れ落ちた。

マリーンの剣がジョンの胸に深く突き刺さっている。
ジョンから解放されたグレーテルさんをマリーンは抱き支えている。





ジョンの命はマリーンの手によってついえた。





「兄さん」パンチが駆け寄ろうとするが、拘束されていて動けない。



ポルトスがジョンのところにゆき死亡を確認する。
「お亡くなりになってます」

「パンチ兄の拘束を解きなさい。もう必要ない。」



パンチはジョンの所に駆け寄り、ジョンを抱き締めた。

「兄さんごめんね。力になれなかった。
子どもの時から兄さんと一緒にこの国を守っていこうと思ってたけど、なにもできなかったよ。
兄さん一人守ることも、ぼくはできなかった。
ごめんね兄さん。」





「これにて、我らジョン追討部隊の任務は達成された。
ジョンの亡骸と共に凱旋し任務を全うしたものとする」

呆然としているパンチをよそに、王城への帰路につく準備をする。


「パンチ兄も騎士団も俺は見ていない
見たのは、我が部隊の者がジョンを倒し、人質を助けた姿だけだ」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

【魔法少女の性事情・1】恥ずかしがり屋の魔法少女16歳が肉欲に溺れる話

TEKKON
恋愛
きっとルンルンに怒られちゃうけど、頑張って大幹部を倒したんだもん。今日は変身したままHしても、良いよね?

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

処理中です...