神の手違いで転生先の人が生きていたので、2重人格になりました。

烏帽子 博

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第二章

ジーナ

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「ロベルトの婚約を機に、ジーナを王宮に連れ戻す」
王はそう宣言した。

ジーナはジョンとリリーの間に生まれた娘で、リリーは、意図しない妊娠の上、憎しみしかないジョンの血を引くジーナを素直に愛せないことをずっと悩んでいた。

ジョンがロベルトとの決闘の後に罪人となるのを機に、リリーはジーナを孤児院に預け、自分は修道院に入ったのだった。

「ジーナには、なんの罪も無い、わしの孫をいつまでも孤児院などには置いておけん」

こうしてジーナは、姫として復権し王宮に戻ることが、孤児院に知らせられた。

ジーナが一人で人形で遊んでいると、テッド、ビフ、タネンの悪ガキ3人がやって来た。

「テッド、ビフそいつを押えろ」

タネンはジーナから人形を
取り上げ、ナイフを出して切り裂いた。

ジーナは恐怖で言葉も出せずに、ただ目を見開いてその光景を見ていた。

「お前は、姫様に戻るそうだな。
罪人の娘のくせに。
俺たちは、大人になったら、お前らに税金むしり取られるんだ。
お前らがパーティしたり贅沢してる時に、俺たちは、血みどろになって働くんだ。
お前の親父は、王族だってだけで、何人もの人をこの人形みたいにしたんだ」

ジーナを押えているテッドとビフの手が緩んだ隙きにジーナはナイフを持つタネンの手首を掴んだ。

二人がもみあいになり、テッドとビフが再びジーナを押さえにかかろうとした時

「痛てー」タネンが脇腹を押えて転がっている。
そこからは血が滲んでいて、ジーナの手にはタネンのナイフが握られていた。

テッドとビフは「人殺しだぁ。助けて~」とタネンを置いて逃げていった。

ジーナは、ナイフを自分の首に突き立てて、血を吐き倒れた。













「ユウト ユウト」

「リンダか、いい宿主見つかったのか?」

「お願い 死なせたくないの、もう一度二重人格やってくれないかしら?」

「えー 嫌だよ」

「リリーの娘、ロベルトの姪が自殺したの」

「えっ まだ5歳位だよな、ジーナだっけ」

「望まれず生まれて、5歳で自死なんて可哀相過ぎるわ。
あなたの力で少しでも幸せな人生にしてあげて欲しいの」

「俺にそんな力が有るとは思えないが」

「ごちゃごちゃ言ってないで。
やるの、やらないの?
もう魂が抜け出しかけてるのよ」

「わかった、やるよ。
バイバイ ロベルト」








「ジーナ ジーナ」

「わたしを呼ぶのはだれ!」

「ロベルト叔父さんの友達のユウトだよ
ジーナ そっちの暗い方に行ったらいけないよ」

「どうして?」

「こっちの明るい方においでよ」

「どうして?」

「ジーナはもっと生きて楽しいことをしなくちゃ」

「わたしは死んだほうがいいの」

「ダメだよ。死んだほうがいいなんて言ったら。」

「わたしが姫様になるとその分タネンやテッドやビフみたいな平民が苦しむんでしょ」

「それは、間違ってるよ
平民の為を思って働く王族や貴族もいるよ。
そりぁあ平民よりはいい暮しをしてるだろうけど、それも世の中には必要なことなんだよ。
さぁ行こうよ。
ジーナの明るい未来に向かって」

「ほんとうにいいの?わたし罪人の娘だよ」

「いいんだよ。ジーナは何も悪くない。」






「ジーナ ジーナ」

「あっ 先生」

「ああ神よ、ありがとうございます。ジーナを戻していただき感謝します。」

ジーナの傷は塞がり出血も止まった。しかしなぜか首の傷痕だけが残った。

幸いタネンの傷も浅かった。

ジーナは自ら歩いてタネンの寝ている部屋にゆき

「タネン ごめんなさい」

「ジーナ なんで謝るんだよ」

タネンは、そう一言言って横を向いた。
それからは、何も言葉を発しなかった。

王宮に知らせが行き、騎士が直ぐにジーナを迎えに来た。
ジーナは、別れのあいさつも出来ないまま、連れ去られるかのように王宮へと連れて来られた。

王宮に着くと直ぐに王の間に通された。

「ジーナ怖かったろ。わしが悪かった。最初からあんなところに預けるべきでは無かったんだ。
すまないことをしたな。
おじいちゃんを許しておくれ」

「おじい様、孤児院のみんなを叱らないで。おねがいします」

「ああ わかったわかった、安心しなさい。
もういいからゆっくり部屋で休みなさい」


「ジーナ様 お部屋にご案内致します。
本日よりジーナ様付きのメイドを仰せつかりましたクラウディアです。
よろしくおねがいします。」

クラウディアは、見たところ20代なかばで、ジーナの母でもおかしくない落ち着いた感じの女性で、容姿も特段の美人ではないが、整っている方だ。
少し小太りで、出るところは出ている。

クラウディアについていって部屋に着いて一人になるとユウトが話し掛けて来た。

「ジーナ ユウトだよ
お話してもいいかな?」

「あっ ユウトお兄ちゃん?
わたしを暗闇から連れ出してくれたお兄ちゃんだよね。」

「そうだよ。ジーナ
ぼくは今ジーナの体の中に居るんだ。
ジーナが死にそうだった時にジーナの命をを助ける為にジーナの体に入ったんだよ。」

「じゃあわたしの命の恩人ね」

「そうだね。ジーナは賢いなぁ。
それでぼくからジーナにお願いが有るんだ」

「なぁに?」

「夜ご飯の後、ロベルト叔父さんに、少しの時間でいいから、ジーナと遊んで欲しいってお願いしてみてくれる?」

「ふ~ん、何して遊ぶの?」

「それでね、ロベルト叔父さんと二人に成ったら、ユウトお兄さんにちょっと体を貸してほしいんだ。」

「なんで?」

「あのね ぼくは、今ジーナの中に居るから、いつでもジーナとはお話ができるけど、他の人とはお話が出来ないんだ。」

「ふう~ん」

「それで、ジーナの体を貸してもらえば、ぼくがジーナになって、お話したり歩いたりも出来るんだ。」

「ふう~ん」

「………」

「どうしたの」

「ぼくは、ロベルトと話しがしたいから、その時体を貸してほしいんだ」

「いいよ でも後で返してね」

「もちろん ちゃんと返すよ」



※※※※※※※※※※※※


第二章ジーナ編

スタートしました。
これからどんな女性にジーナが、成長してゆくかお楽しみに。

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