上 下
35 / 36
第二章

ゴタゴタ

しおりを挟む
「停戦して、兵を引けですと!
この勝ち戦の情況で何を逃げ腰な!
敵から言ってきたならまだしもこちらから切り出すことではあるまいに。
そんな甘っちょろいことでは、周辺諸国から馬鹿にされますぞ!」

「ホーシ伯爵!そこはユリウス皇帝代理が説明したであろう。」

「オルドー お前まで目が曇ったか。侵略戦争の是非を問うてるのではない。
ここまできたら白黒つけるのが筋というものだし。
ハッキリする。」

そこで静かに、ユリウスが口を開いた。
「イッテツ・ホーシ伯爵
勝ち戦目前とは、あなたの目は、節穴ですか?
インディー王国には、たった一人で我が王宮を消し飛ばすほどの者がいるんですよ。戦えば、負けるのはこちらです。」

「なにを馬鹿なことを、皇帝代理は敵の情報操作に惑わされてるのだ、王宮が無くなるなどあるはずがない。」

「わたしは、その者を存じております。
ですから、王宮消滅は事実と信じます。
イッテツ・ホーシ伯爵の軍勢は精鋭揃いとうかがっております。
その方々がどれほどの実力か、わたしの仲間である兵と模擬戦をしていただけますか?」

「戦場で模擬戦で力試しか。力を競うなら敵の首の数でよかろうに。
まあ、皇帝代理は余興がお好きらしいな。
しかし、良いのですかな?結果は決まりきってますぞ、皇帝代理が恥をかくことになりますが」

「戦いたい戦士のガス抜きですよ。
ちょっと皆さんの実力も知りたいですし。5名選んで下さい。
1時間後に始めましょう」







「ユリウス皇帝代理!
そちらは4人しかおらんではないか。5人目はどうした!」

「5人目は、私ですよ、もっとも、私までもし番が廻ってきたら、降参しますから、遠慮なくどうぞ!」


「ジャンケンポン、アイコでしょ、ジャンケンポン」

ルーク
「やったー 俺が先鋒」

テイル
「次鋒 微妙ね」

キャロライナ
「中堅 出番無さそう」

カイト
「副将 こりゃ絶対廻って来ないなぁ」

キャロライナがルークに詰め寄ってる

「ルーク 先鋒代わってよ。あなた私まで順番廻す気無いでしょ」

「いいじゃん、キャロライナは、我が軍の美しき秘密兵器で!」

「美しき秘密兵器
もう、仕方ないわね~
でも、もしちょっとでも疲れたら、棄権していいからね」

「ねぇテイル~~
今度ランチ奢るからさぁ
順番代わってよ。
お願い!」

「どこのランチ?
マタタビ亭なら、代わってあげてもいいけど!」

「マタタビ亭!
あそこはちょっと、私には入りづらいわ。
海千山千の『マグロづくし』でどう?」

「いいわよ、でも私ニ人前食べるからね。」

こうして、次鋒がキャロライナ、中堅がテイルとなった。







模擬戦の一回戦は、ルーク対ヒウマだ

ルークは、最近ジーナ(ユウト)から『瞬足』をもらって少し調子にのっていた。

「ほう『縮地』を使うか、面白い」

「ヒウマさん 『縮地』って何ですか?」

「おぬし、今やったであろう。一瞬で間合いを詰める技を」

「ああ それ『瞬足』です」

「では、礼に『縮地』をみせてやろう」

ヒウマは、瞬時に間合いを詰めてルークに斬りかかる。
ルークは盾で受け止めた。

「速いけど軽いですね」

「ぬ わしの剣を軽いとな。
ならば、我が奥義をみせてやろう」

ヒウマの目に炎が灯ったように見える。右足を大きく蹴り上げたモーションから火の玉が飛んで来た。
盾で受けようとすると、火の玉が一瞬消えた。

火の玉は盾を躱し直接ルークに着弾し、そのタイミングに合わせて、ヒウマ本人も斬りかかる。

火の玉はルークの結界に阻まれ周りに散っていった。
ヒウマの繰りだす斬撃を盾で受け止めずにルークは槍を突き出した。

「かはっ」

ヒウマは、地面に転がりピクピクと痙攣している。

「一本 ルーク!」

ヒウマは、タンカで運び出された。

次鋒は火魔法 中堅は水魔法の使い手だったが、ルークは盾も使わずに受け止めて、槍を突いて勝利した。

「ん~~~ もう ルークったらぁ 一人で終わらせる気?
もう、疲れたらでしょう。代わりなさいよ。」

「キャロライナは美しき秘密兵器でいいじゃん」

「だって 見てるだけじゃつまんない」

「仕方ないなぁ。じゃぁ海千山千のワイルドオックスステーキとシチューのセット3人前奢ってくれたら、代わってあげるよ」

「仕方ないわね。奢るから。代わりなさいよ。」


「審判さん。ボク棄権します。後ろの姫が待てないみたいで……」

「君!そんな理由で、しかも審判の私の前で、買収されて」

「イヤイヤイヤ 次の相手 体がゴツいのにチュウタなんて可愛い名前の人
『弟や妹たちの為にぼくは絶対勝たなきゃいけないんだ』なんて言ってるのが聞こえちゃって。
あの年で、親代わりやって苦労してるんだなぁと思ったら、同情しちゃうでしょ。
いいじゃん、1つ位花もたせてあげても。
棄権がダメなら、降参で。
これでいいですか」

「まぁ仕方ないな。
チュウタ 一本勝ち」

「ホーシ君、君の仇は、ぼくが戦わずして勝ったよ。このファイトマネーは、弟妹の為に使うよ」

「チュウタさん、ちょっと面倒くさい人ですね。
はいユリウスチーム次鋒キャロライナさん」


「キャロライナさん
何でここで、ストリップを。
私、鼻血が、…
審判交代します。」

「はい、審判交代しました。皆のアイドル コトです。
あらっ???
チュウタさん どうしました?」

カイトが恐る恐るキャロライナに近づいて

「キャロライナ、火ついてないよ。いいの?丸見えだよ」

「いいのよ、もう平気」

キャロライナが仁王立ちで、腰に手を充てると、キャロライナのオッパイがブルンと揺れた。

「チュウタさん チュウタさん! シッカリして下さい。
タンカ タンカお願いします。」

チュウタは、鼻血を出して目を見開いたまま気絶していた。

「ホシチーム残るは、大将ミツルのみとなります。」


「ぼくにはアキコさんが居るんだ。
そんな はしたない格好で、ぼくの目をくらまそうとしても無駄だよ。」

「ちょっとは強そうなのが居るかと思ったのに……
全然ね」
キャロライナは、全身に炎を纏った。

炎が一瞬揺らいだ。

ミツルは倒れ、キャロライナはちゃんと服を着て炎も消えていた。

「タンカ もう一つタンカお願いします。
勝者キャロライナ!
ユリウスチームの勝ちです」


「ハハハ ウソだこんなのは何かの仕掛けがあったんだ。
ズルいぞ!」


「ホシ伯爵、落ちついて下さい。
認めたくない気持ちはわかりますが、これは事実です。
あなたの兵は、確かに一騎当千でしょう。
しかし、私の兵は一騎当万です。
そして…
ジーナは一騎当十万、いや百万かも知れません。
ほんの一瞬で我々全てを消滅させるほどの力を持っているんです。
停戦と撤退命令に合意して下さい。」

「ユリウス皇帝代理、本当なのか?本当にそんな化け物並の強さの者が存在するのか?」

「化け物並では無く、化け物以上の 化け物も逃げだす存在です。
死から蘇り力を得た『大賢者』なんです」

「わかった、停戦にも撤退にも同意しよう」



しおりを挟む

処理中です...