平民に落とされた元お嬢様は超時空スキル持ちの聖女に覚醒。ざまあもいいけど恋がしたい。

烏帽子 博

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奉仕活動

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「『灯り』しか魔法が使えないって言ってたわよね
ここまで使いこなしてたんだ。」

シスターメアリーは腕組みをして話し掛けてきた。

「ええ、貴族だった頃は、暇な時間が沢山有りましたから。」

「キラキラ光に包まれた聖女 絵になるわね。
シスターアマンダがお呼びよ、行きましょう。」

レミーは光を消し去り
子どもたちに向って

「みんなゴメンね~
お姉さんシスターアマンダの所に行かなきゃ
また遊ぼうね」

「うん またね」
「また キラキラしてね」
「お歌教えてね」

「大した人気者ね。
さっ 行きましょ」

シスターアマンダは、聖堂の隣の処置室で待っていた。
処置室の前には待合室が有り既に具合の悪そうな人が何人か来ていた。

処置室にはベッドが一つと、小さな女神像と椅子がいくつか有るだけだ。

「あら?レミーさん
手に血の跡が」

「すみませんシスターアマンダ
先程ジャガイモの皮をむいている時に、ナイフで手を切ってしまいました。」

シスターアマンダはレミーの手をとると

「傷は治ってるようね。
自分で治したのかしら。」

「はい、自分で治しました」

「やり方は女神様から教わったのかしら?」

「いいえ、やり方は知りませんでした。
たまたま、聖女様ゴッコをする子どものセリフを真似てみたら力が使えました。」

「ほぅ。子供が癒やしの呪文を知っていたのですか?」

「ええ 『この者を癒したまえヒール』と言う呪文です」

「なるほど。」

「シスターアマンダ、聖なる力を使うための方法をしるした本とか有りますか?
私勉強したいです」

「そんな本は有りません。
聖なる力の使い方は、全て口伝えと決まっています。紙などに書き記すことは、昔から禁じられています。」

「そうなんですか。
知りませんでした。
でもなぜ禁じられているんですか。」

「それは、あなたがシスターになれば、わかるはずです。
さぁ、もう詮索は止めて、患者さんを招き入れましょう。
シスターメアリー」

シスターアマンダが目配せすると、シスターメアリーがドアを開けて

「どうぞ、最初の方、お入り下さい」

人にに支えられながら杖をついて一人の男性が入って来た。

「シスターよろしくお願い致します。」

「かなりのお怪我ですね。この状態からですと、二度掛け、若しくは三度掛けが必要です。
このお布施ですと、一度しか出来ませんが、よろしいですか?」

「一度だけだとどうなりますか?」

「痛みはとれると思いますが、骨はこの形のまま癒着してしまうと思います。
ちゃんと歩くことは、生涯できなくなります。」

「俺が出すよ」

「すまん。いいのか?」

「返してくれるだろ。」

「ああ もちろんだ。」

「シスター、これで頼む、ちゃんともと通りに歩けるように治してやってくれ。」

怪我をしている男の連れが、金の入った袋を出した。

シスターアマンダは、袋の中を確認してから

「畏まりました。
レミー ちょっとこちらへ」

レミーがシスターアマンダのそばに行くと、シスターアマンダが小声で耳打ちした。

「あなた暗唱、つまり無詠唱でヒール使えるかしら?」

「はい、出来ると思います」

「では、この方を治して差し上げなさい。」

シスターアマンダは、レミーの背中に手を付けている。

レミーは怪我している男の膝にてをかざして、頭の中で呪文を唱える

男の患部が光り出して、そしてしばらくして、光が収まった。

「おおー 痛く無い、全然痛く無い。凄いぞこれは」

先程まで歩けなかった男は屈伸をしてから歩いてみせた。

「しかしなぁシスター
今この姉ちゃんが、一度『治癒』掛けただけだよな、それでもこれだけ金かかるのか?」

「私がこの者を触媒として背に手を付けて、三度掛けと同じパワーを送り込んだのです。
あなたも見ていましたよね。」

「ええ まぁ」

「よかったですね。良くなって。
あなた方に女神様のご加護を」

シスターアマンダは二人に二本指を立ててピースを切った。

〈二本指を立てるポーズは、キリスト教におけるクロスと同義 〉

二人は、礼をして部屋から出て行った。

それから10人程の患者さんをレミーは治療した。

怪我人も居れば、病人もいた。レミーが『治癒』を行う度にシスターアマンダはレミーの背に手を付けて、自分がやったと患者さんには言っていた。

「レミー 『聖なる力』の状態はどうですか、力が減ってきたとか、疲れたとか感じませんか?」

「はい、まだ全然大丈夫です。」

レミーはそれからまた30人程の患者さんを治療した。

「今日は、そろそろここまでにしましょう。
シスターメアリー 待合室にはあと何人居ますか?」

「はい3人です。」

「では、その方たちまでで、本日の診療は終了です。後は急を要する人以外は、後日再び来ていただきましょう。」

「畏まりました、シスターアマンダ」

全ての人の治療が終わると

「レミー 力の減り具合はどうですか?」

「特に減ってきた感じはしません」

「では、疲れは感じますか」

「ええ まぁ
患者さんを前にして緊張が続きましたから
疲れたかと言えば、疲れたと、思います。」

「では、明日 又今日と同じ位の数の患者さんを相手にできそうですか」

「はい、問題無いと思います」

「そうですか。
レミー、今からあなたをミス・レミーと呼ぶことにします。
シスターメアリー ミス・レミーにヤングシスターの服を着せなさい。
これ以後ミス・レミーは自室以外では常にヤングシスター用の修道服を着用すること。
それと、シスターメアリーの部屋に移りなさい。」

「ええー、私の部屋にですかぁ~」

「ヤングシスターが、孤児たちと同室ではおかしいでしょう。
指導よろしくお願いしますよシスターメアリー。」

「畏まりました、シスターアマンダ。」

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