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1章3節 欲まみれの浸食
1-5,6 (44・45話)
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午後7時すぎ。
ゆっくりと家に帰って一息つく。
夕飯のにおいが疲れを少しずつとっていく。
そう、あの叔父さんの作った料理が。
「おかえり、シン君」
「おかえり、兄ちゃん」
家族が迎えてくれる。
この温かさがシンを落ち着かせる。
夕飯のにおいと家のにおい。そして、叔父さんの好きなアロマのにおい。
自然にいるような爽やかな香りと外に帰ってきた時の少し汗のにおい。
入り混じるような感じなるが、それが安らぐような気分になった。
いつも帰りを待ってくれる叔父さんと妹の菜々香。
それだけで安心する。
「今日はどうでした?忙しかったでしょう」
「まあまあだよ。忙しい時と忙しくない日があるからね」
「忙しかってもサボるくせに」
イスに座ろうとするが、その言葉に唖然としたのかイスからずり落ちる。
本当なのかどうかはわからないが、その言葉に不意を突かれたようだ。
「サボるか!!何言ってくれてんだ!!」
「ホンマなんやないの?仕事やってるフリして実はサボってるっていう」
「サボってない。ちゃんとやることを1つ1つ潰していってんの。菜々香みたいに学校生活をエンジョイするなんてできないの。わかるか?」
ズバズバという菜々香に正々堂々と言い返すシン。
それを聞いて笑っている直也。
和やかなムードが毎日のようにある。
こんな日がいつでも続けばいいと思っていた。
「ほらほら、早くご飯食べな。冷めますよ」
菜々香の言うことなどお構いなしに放置するシンは直也の作った料理を食べる。
いつも作ってくれる叔父さんの料理は別格だ。
これを食べると元気になれる。
朝だろうが、夜だろうが関係なく。
この日々が毎日あったからここまで育ってきた。
すべては叔父さんのおかげ。
感謝してもしつくせないくらいに。
「ごちそう様、叔父さん」
「はい。ちゃんと食べましたね。さあ、洗い物をしなければいけませんね。シン君、もうちょっとしたらお風呂を入れてください」
「いや、今お風呂入れてくるよ。ちょっと部屋に行かなきゃいけないから。沸いたら言ってくれる?」
「わかりました」
そういってリビングを後にして洗面所に向かう。
お風呂を自動で入れて沸くのを待つ。
その間に2階に行って自分の部屋に戻る。
相変わらずの質素な部屋。
目覚まし時計の隣にポツンと置いてある携帯。
学校の時でも持っていかない自分の携帯。
重要な時にしか使わないようにと毎日学校の時は部屋に置いているのだ。
ベッドに座って携帯を触る。
ホーム画面にしようとするとメールが来ていた。
宛先は岩城だった。
そのメールを見ようと2回画面をタップした。
内容は帰りに聞いた事件の事だった。
そういえば、なぜシンは岩城のメールを知っているのだろうか。
それは今から4年前のあの事件の後のことだった。
ちょくちょくと事務所に来ては事件のことについて話をしていた。
それが面倒になるということで岩城の携帯を登録していたのだ。
シンはその事件のことについてのメールを見ていた。
一行一行ゆっくりと見ていく。
内容がわかるまで何度も何度も。
そして、一通り読み終えて返信をする。
「明日事務所まで来てほしい。詳しく話をしよう」と。
そんなことをしているうちにお風呂が沸きそうになる。
携帯を置いて1階へと降りて行った。
事件のことは今は忘れて自分の生活に戻っていった。
何不自由ない普通の男の子に。
翌日、学校が終わってそのまま事務所に向かっていった。
あの女の子を取っ払うように逃げてきたのだが。
急いで事務所に戻って2人の話を聞きに行く。
これも仕事の一環にしかない。
仕事を引き受けた以上やるしかないのだと。
数十分後、事務所に着いて自分の部屋に向かっていった。
ドアを開けるとそこには西崎と岩城の姿があった。
「シン君、急がせてすいません」
「いいんです。それよりその事件のことについて詳しく聞かせてもらえませんか」
休むことなく事件のことについて聞いていくシン。
聞いている間に息を整えようとする。
ゆっくりと息を吸って落ち着かせる。
それを毎回してきているからか慣れている。
黙々と事件の概要を説明していく岩城。
それの補足をする西崎。
なんでも事件発生は3日前の夜。
銀行内を警備していた3人の警官。
巡回をしている最中に発生した。
周りは何かが起きたようなことはなかったのだが、急に非常ベルが鳴ったことから事件が発覚した。
しかし、金庫内を見てはおらず、先に周辺を見回してから犯人がいるかどうかの確認をした。
発見できずにいた警官は金庫内をチェックしようと開けたら数千万あったお金がなくなっていたことに気づき警察に通報した。
事情聴取をしたのだが、全員がアリバイありとのことから捜査は難航になり、2人のもとにきたのだという。
普通なら気づくはずなのだが、まったく気づくことなくお金が持ち去られた。
神隠しにでもあったみたいに消えたという。
犯人らしき足跡も発見されず、こじ開けた形跡もない。
警察は銀行内にいた人物を重要参考人として聴取したが失敗に終わる。
ガラスを割られた形跡もない。金庫を無理矢理こじ開けた形跡もない。
監視カメラも確認したが、それらしきものは映ってはいなかった。
「なるほど。で、他にもありましたか?壊されたものとか」
「金庫内周辺はなかったみたいだが、取引される場所の非常ベルが壊されたぐらいだな」
それだけではまったく誰がやったのかは見当もつかない。
実際に現場に行ってみないことにはわからないことだらけになってしまう。
話だけではイマイチピンとこない。
現場がどんな状況だったのかを見てみる必要があると思い、現場を見ることができるかどうかを2人に確認した。
何とかしてみると西崎は言ってくれた。
「とりあえず今日はこの話を参考に考えてみます。何か見落としているところもあると思うので」
「わかりました。僕らの方でも何か発見あり次第こちらからメールします」
そう言って2人は警察庁に戻っていった。
話だけでどう起こっていたのかわかるのだろうか。
シンの頭脳が試される時がやってくる。
ゆっくりと家に帰って一息つく。
夕飯のにおいが疲れを少しずつとっていく。
そう、あの叔父さんの作った料理が。
「おかえり、シン君」
「おかえり、兄ちゃん」
家族が迎えてくれる。
この温かさがシンを落ち着かせる。
夕飯のにおいと家のにおい。そして、叔父さんの好きなアロマのにおい。
自然にいるような爽やかな香りと外に帰ってきた時の少し汗のにおい。
入り混じるような感じなるが、それが安らぐような気分になった。
いつも帰りを待ってくれる叔父さんと妹の菜々香。
それだけで安心する。
「今日はどうでした?忙しかったでしょう」
「まあまあだよ。忙しい時と忙しくない日があるからね」
「忙しかってもサボるくせに」
イスに座ろうとするが、その言葉に唖然としたのかイスからずり落ちる。
本当なのかどうかはわからないが、その言葉に不意を突かれたようだ。
「サボるか!!何言ってくれてんだ!!」
「ホンマなんやないの?仕事やってるフリして実はサボってるっていう」
「サボってない。ちゃんとやることを1つ1つ潰していってんの。菜々香みたいに学校生活をエンジョイするなんてできないの。わかるか?」
ズバズバという菜々香に正々堂々と言い返すシン。
それを聞いて笑っている直也。
和やかなムードが毎日のようにある。
こんな日がいつでも続けばいいと思っていた。
「ほらほら、早くご飯食べな。冷めますよ」
菜々香の言うことなどお構いなしに放置するシンは直也の作った料理を食べる。
いつも作ってくれる叔父さんの料理は別格だ。
これを食べると元気になれる。
朝だろうが、夜だろうが関係なく。
この日々が毎日あったからここまで育ってきた。
すべては叔父さんのおかげ。
感謝してもしつくせないくらいに。
「ごちそう様、叔父さん」
「はい。ちゃんと食べましたね。さあ、洗い物をしなければいけませんね。シン君、もうちょっとしたらお風呂を入れてください」
「いや、今お風呂入れてくるよ。ちょっと部屋に行かなきゃいけないから。沸いたら言ってくれる?」
「わかりました」
そういってリビングを後にして洗面所に向かう。
お風呂を自動で入れて沸くのを待つ。
その間に2階に行って自分の部屋に戻る。
相変わらずの質素な部屋。
目覚まし時計の隣にポツンと置いてある携帯。
学校の時でも持っていかない自分の携帯。
重要な時にしか使わないようにと毎日学校の時は部屋に置いているのだ。
ベッドに座って携帯を触る。
ホーム画面にしようとするとメールが来ていた。
宛先は岩城だった。
そのメールを見ようと2回画面をタップした。
内容は帰りに聞いた事件の事だった。
そういえば、なぜシンは岩城のメールを知っているのだろうか。
それは今から4年前のあの事件の後のことだった。
ちょくちょくと事務所に来ては事件のことについて話をしていた。
それが面倒になるということで岩城の携帯を登録していたのだ。
シンはその事件のことについてのメールを見ていた。
一行一行ゆっくりと見ていく。
内容がわかるまで何度も何度も。
そして、一通り読み終えて返信をする。
「明日事務所まで来てほしい。詳しく話をしよう」と。
そんなことをしているうちにお風呂が沸きそうになる。
携帯を置いて1階へと降りて行った。
事件のことは今は忘れて自分の生活に戻っていった。
何不自由ない普通の男の子に。
翌日、学校が終わってそのまま事務所に向かっていった。
あの女の子を取っ払うように逃げてきたのだが。
急いで事務所に戻って2人の話を聞きに行く。
これも仕事の一環にしかない。
仕事を引き受けた以上やるしかないのだと。
数十分後、事務所に着いて自分の部屋に向かっていった。
ドアを開けるとそこには西崎と岩城の姿があった。
「シン君、急がせてすいません」
「いいんです。それよりその事件のことについて詳しく聞かせてもらえませんか」
休むことなく事件のことについて聞いていくシン。
聞いている間に息を整えようとする。
ゆっくりと息を吸って落ち着かせる。
それを毎回してきているからか慣れている。
黙々と事件の概要を説明していく岩城。
それの補足をする西崎。
なんでも事件発生は3日前の夜。
銀行内を警備していた3人の警官。
巡回をしている最中に発生した。
周りは何かが起きたようなことはなかったのだが、急に非常ベルが鳴ったことから事件が発覚した。
しかし、金庫内を見てはおらず、先に周辺を見回してから犯人がいるかどうかの確認をした。
発見できずにいた警官は金庫内をチェックしようと開けたら数千万あったお金がなくなっていたことに気づき警察に通報した。
事情聴取をしたのだが、全員がアリバイありとのことから捜査は難航になり、2人のもとにきたのだという。
普通なら気づくはずなのだが、まったく気づくことなくお金が持ち去られた。
神隠しにでもあったみたいに消えたという。
犯人らしき足跡も発見されず、こじ開けた形跡もない。
警察は銀行内にいた人物を重要参考人として聴取したが失敗に終わる。
ガラスを割られた形跡もない。金庫を無理矢理こじ開けた形跡もない。
監視カメラも確認したが、それらしきものは映ってはいなかった。
「なるほど。で、他にもありましたか?壊されたものとか」
「金庫内周辺はなかったみたいだが、取引される場所の非常ベルが壊されたぐらいだな」
それだけではまったく誰がやったのかは見当もつかない。
実際に現場に行ってみないことにはわからないことだらけになってしまう。
話だけではイマイチピンとこない。
現場がどんな状況だったのかを見てみる必要があると思い、現場を見ることができるかどうかを2人に確認した。
何とかしてみると西崎は言ってくれた。
「とりあえず今日はこの話を参考に考えてみます。何か見落としているところもあると思うので」
「わかりました。僕らの方でも何か発見あり次第こちらからメールします」
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シンの頭脳が試される時がやってくる。
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