魔探偵探偵事務所

カクカラ

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1章4節 幸せの居場所

3-9 (104話)

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どう伝えるのだろうか。
ヒュプノスから伝えてくれるみたいだが、何を話すのかと言われればわからない。
このおばあさんを通じて発するわけだから本当の事を言うのだろうな。
依頼者に何を伝えるんだろう。

「伝えることって・・・何だろ・・・」

依頼者に伝えること。
それは一体何だろうか。
これまでの事がすべて繋がった時、真相がわかる。

「ヒュプノス、どうしてこの人にいたんだ?何か理由があって憑いたんだろ。それだけじゃない。他の人にも憑いていたんだよな?伝えたい何かがあって憑いたんだと俺は思っている。お願いだ、本当の事を話してくれないか?」
「人の願いを叶えるため。願いを叶えるためなら何としてでも伝えなければいけないんだ。本当の想いを、痛みを。そして、伝えきれなかった言葉を」

伝えられなかった想いや痛み、言葉。
本音では言えないことを伝えたい想いがヒュプノスを呼び寄せたんだ。
それが他の人にも伝染でんせんしてこうなったしまった。
事故なんだ・・・。
これは事件性もない。
間違いなく魔道による事故なんだ。
悲しい事故なんてむなしいだけ。
悲しみしか残らないなんて・・・。

「伝えることも伝えられず、ただ日々だけが過ぎていった。天井だけしか見れない場所にたった1人だけポツリといる。かかわるのはここにいる職員と同じ環境の人間だけ。家族にすら会えないまま、伝えられずに死を待つだけなんて辛い話。でも、相手になる人物は同じ環境の中にいる人間のみにしか伝えられない。他の人間に伝えられえるかと思えばそうはいかない。職員に伝えられるかと思えば伝えられないことだってある。筆圧ひつあつで伝えたくても書けないし、言葉でも伝えられるかと思えば無理もある。認知が入っていれば話す事も忘れてしまう。だからこそ伝える人間が必要だったんだ・・・」

この事を伝えてほしい。
出来事を風化ふうかしないようにと誰かに伝えてほしかったのだ。
だからこそ、依頼者のおばあさんに憑いたという。
職員に伝えたところで幽霊扱いにされてしまう。
除霊じょれいなんてされたら伝えたいことも伝えられずに終わってしまう。
それどころか人が寄ってこなくなる。
この原因で廃墟はいきょになっては元も子もない。
だからこそ誰かに伝えなければいけない。
安全なんだという安心感を持ってもらうためにも。

「それだけじゃないんだろ?伝えたらどうだ?」

何かを察知したシンはヒュプノスに話す。
これが最後の言葉。
交わした先にどんな未来が待っているのか。
それは交わした本人と魔道の関係なのだからわかるはずもない。
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