魔探偵探偵事務所

カクカラ

文字の大きさ
4 / 101
1章1節 始まりの魔探偵

1-5,6 (5,6話)

しおりを挟む
それから数時間後。
学校のチャイムとともに一斉いっせいに子供達が廊下ろうかを出ていく。
午後3時すぎ。授業が終わった時間。
シンのクラスも学活の時間が終わったところだった。
楽しそうに友達と帰る姿が見受みうけられる。
シンも帰ろうと黒いランドセルを背負せおった。
そこに後ろから声をかけられた。
振り向くと直とビリー。

「シン、一緒に帰ろ」
「うん」

3人は廊下に出て、下駄箱げたばこのところまで向かっていった。
仲良しの3人は常に同じ行動をとっている。
家に帰るまでずっと一緒。
下駄箱まで来ると、上履きから下靴したぐつに履き替えた。
外に出ると、放課後残って遊ぶものもいる。
ボールを使っての遊びや、アスレチックで遊ぶ。
人それぞれ自由な時間を過ごす。
帰って留守番るすばんをする子も少なくない。
時には児童館じどうかんのようなところで一時預かってくれる場所まで行く子供もいる。
親が共働きで面倒が見れない親が多い。
そういう子供が大半たいはんめる。
だけど、シン達の家には必ず誰かがいる。
なので、児童館に預けることもなくて済む。
校門こうもんを出て自分達の家に帰ろうとする時のことだった。

「ねぇ。今日は大丈夫なの?うちのお父さんに稽古をつけてもらおうなんて」
「大丈夫。ビリーのお父さんには言ってるんだろ?一度見てみたいんだー。ビリーのお父さんの姿」

ビリーの父親に稽古をつけてもらおうと前からビリーに頼んでもらい、許可きょかが出るかを待っていた。
すると、この日なら空いているからいいよとビリーから聞いて今からその場所に向かおうとしていた所だった。
ビリーの父親は初代魔探偵の側近そっきんにあたる人で、2・3番目に偉いとされている人物だった。
何をするにしても初代についておかなければいけない存在でもあるのだ。
たまたまこの日はお休みで稽古場の方が空いているというので今回は特別に稽古をしてもらえることになった。
週に何回かは稽古場の生徒せいとが来て稽古をしているらしいのだが、最近は人が少なくなって指で数えるくらいにまで減った。
ちょうど去年の今ぐらいは数百人という人が来ていた。
一時期いちじきは1ヶ月待ちまで出ていたくらいだった。
それが急に減って今ではガラガラな稽古場になったらしい。
入部希望にゅうぶきぼうの紙を貼っても誰も来ない。
経営けいえいにも少し苦しい事態じたいになっていた。
何かしらのことがなければここまで減ることはないが、シンはそのことは知らなかった。

「まだ魔探偵になること諦めてないんだ。本当にシンはよく危なっかしいのを希望するね」

数年前まで魔探偵を目指していた者が多かった。
若い子から少し年配ねんぱいの人まで。
幅広はばひろく魔探偵になりたいと思う者も増えていた。
側近でも何でもいいという者達が日々鍛錬たんれんをこなしてきた。
しかし、今は違う。
なりたいと願う子供がいても、親は反対していた。
なぜなら、自衛隊じえいたいと同じように命をかける仕事だから。
そんなものに決して入ってはいけないなんてルールの1つや2つは家庭内でも存在していたぐらい魔探偵に入ることはあまくはない。
そんな職にくぐらいなら安全で安心な場所にしてほしいと願う親も多かった。
しかし、3年前の事件のせいで魔探偵はものすごいレッテルを貼られていた。
人を犠牲ぎせいにしてまで魔探偵を続けたいかというデマまであったくらい。
それ以降、目指すものは急激に減った。
沢山たくさんあった稽古場も次々と閉鎖へいさしていくぐらいまでに発展はってんし、今では全国に数ヶ所しかないぐらいになってしまった。

「何でだよ。人を守るんだぜ。悪魔を倒す探偵なんて他にいないだろ?」
「そりゃないかもしれないけど、他にもあるでしょ?消防隊になりたいとか、海上自衛隊になりたいとか」

父親の姿を見て育ってきたシンにとって、魔探偵は特別な存在。
なりたいと願ってきた職業でもあるのだ。
今更いまさら夢を変えることなんてことはない。

「いいじゃない、直。シンがなりたいって言ってるんだし。見守るだけ見守れば?」
「ビリーはいいじゃない。お父さんが魔探偵の側近なんだから。でも、ビリーだってなりたいんでしょ、魔探偵。
いいね、親が魔探偵とか。うらやましいわ」

ビリーも父親のように魔探偵になりたいと決めていた。
親の背中というものは憧れてしまう。
男の子にはあること。
側近である父親をほこらしく思うビリーは父親のようになりたいと強く決めていた。
魔探偵であれば誰でもいい。
側近になれるくらいならお構いなしだ。

「魔探偵たって側近だろ?ビリーの叔父さんならならせてくれるじゃん。今でも稽古してるんだろ?」
「まあね。毎日銃の稽古してもらってるから本当に助かるよ」
「俺は剣だからな・・・誰も教われないし、困るよな・・・。そういうの羨ましいわ」

シンは剣使い。
父親も剣をあつかっていることからシンも使うことに決めていた。
しかし、剣を扱う稽古場はほとんど閉鎖されてしまい、どこも練習できる場所はなかった。
唯一ゆいいつできる場所がビリーの場所だった。
剣だけというとかなり遠い場所にあるため子供だけでは無理だった。
そんなことを話していながらビリーの稽古場まで歩いていった。


学校から歩いて15分ほど。
ビリーの言っていた稽古場に着いた。
大きさからすれば柔道じゅうどうをする体育館程度の大きさ。
3人は稽古場を見て立ち尽くしていた。

「どう?思っていた以上に小さいでしょ」

大きいイメージをしていたシンと直だが、想像していた以上に小さい。
ビリーが話してくれていたのよりもピンとこないレベルだ。
口を開けてポカーンとするシン。
背中を叩いて現実に戻そうとする直。
苦笑いするビリーを見つめる2人。

「本当にこれが稽古場なの?」
「何だろ・・・ビリーが話してくれたのとイメージが違ったからさ。 ちょっと戸惑とまどったよ」

シン達が想像していたのは体育館並みの大きさだと思っていた。
沢山たくさんの人数が入るといえば、体育館ぐらいしか思いつかなかった。
実際と想像とはケタが違うことを知ったのだ。
けど、思っていた以上に静かだった。
今日は稽古は休みなのだろうかとふと思っていた矢先やさき、ガラガラと扉の開いた音がした。
3人はその音に気付き、前を向いた。
そこには30代に見える道場着どうじょうぎ姿の男の人がいた。
この人がここの師範しはんなのだろうかと声をかけようとしていた。

「お父さん、ただいま」

それはビリーの父親、アルツ・グランシスだった。
グレーの短髪たんぱつがビリーに似ている。
本当にこの人がビリーの父親とは知らなかった。
ペコリとお辞儀じぎをする2人。
にっこりと愛想笑あいそうわらいをしたアルツ。
ようこそと言ってくれているみたいだ。
ビリーと2人で今日のことを話していた。
そのことを納得していたアルツはシンの顔を見た。

「君が金城君だね。 息子から聞いているよ」
「こんにちは。 今回はありがとうございます。 わざわざ時間をとってくださって」

いいよと言って笑ってくれたアルツを見たシンはこの人はいい人だと思い始めた。
ビリーからは怖いとしか言われていなかったので、想像するのが怖かった。
実際は優しい人ではないか。
ギャップというものは見なければわからないものだというのを知った。

「ここで立ち話もなんだ。 中に入りなさい。 彼女も入りなさい。 見学けんがくするぐらいなら大歓迎だいかんげいだよ」

下靴を下駄箱に入れて中に入った。
フローリングは冷たい。
足がひんやりしそうだ。
だけど、ここは銃専門の稽古場だと聞いていたが、銃らしきものは置いていない。
置いてあるとすれば竹刀しないが4本あるだけで、怪しいものは左にある黒いカーテン。
あそこには何があるのだろうか。
直はそのことについて聞いてみた。
すると、そこの黒いカーテンの先にあるのは銃の練習に使っていると言った。
ビリーもそこをよく使っているというので中を見せてもらった。
銃が撃てるように台が3つ置かれていた。
警察にある射撃訓練しゃげきくんれんのような部屋そっくりだった。
台の上には練習用の銃が3丁あって、どれもたまは入っていない。
使うときはプラスチック製の弾を使うそうだ。
台から5メートルくらいあるまとねらっていつも訓練をしているというのだ。
ビリーがここで練習を受けていることを知った直は改めてすごいと感じていた。
そして、本題に入った。
シンがアルツに稽古をつけてほしいというのを聞いて1つアルツは疑問ぎもんを持っていた。

「そういえば、うちの魔探偵が君の父親だと聞いたんだが、お父さんに稽古をつけてくれって言わなかったのかい? うちは銃専門だというのに」

その質問にシンは黙ってしまった。
清一郎だけには教わりたくないと思い、ここに来たのだがその質問が出てくるとは思っていなかった。
ビリーはすかさずそのことを口にした。
清一郎とシンはお互い別々に住んでいて、なかなか家にも帰って来ないこと。
帰ってきても息子の話は聞かないこと。
いろいろと話してみた結果、そのことにはれてはいけなかったことを謝罪しゃざいした。
アルツはそのためにビリーを通してここで稽古をつけてほしいということに気付く。

「すまないね、シン君。 私もそのことは聞かなくてね。 前は君のことを話していたら楽しそうな顔をしていたのに。 今は君のことすら話さなくなったからね。 仕事で忙しいのかもしれないけど」
「いえ、別にいいですから」

下を向いてしまい、元気をなくしてしまったシン。
アルツは竹刀のあるところまで向かっていき、竹刀を2つ持っていった。
それをシンに手渡そうとした。

「君のことはよくわからない。 魔探偵もそのことに触れてないし。 ただ、君は君の意志いしでビリーに頼んで稽古をつけてほしいと頼んだのだろ? だったらやろうじゃないか」

シンはアルツの顔を見て竹刀を受け取った。
間合まあいをとってお互いに竹刀を前に出した。
防具ぼうぐも何も着けていない。
お互い技の打ち合いをしようというのだろうか。
ビリーはシンのランドセルを窓際まどぎわに寄せて、正座せいざで2人のことを見た。
それを見よう見まねに直もやってみた。
もしかしたら、足がしびれるのではないかと思い。

「さて、これから打ち合いをするよ。 お互い防具はなし。 どこに打ってもらっても構わない。 距離きょりをとるのもいいし、片手で竹刀を持ってもらっても構わない。 それは自由だ。 ただし、竹刀が顔に向けられたらそこで終わりだ。 いいかな?」

そう言われてシンは目をつぶり、片手で竹刀を持った。
アルツはシンが打ちにくるのを待った。
そして、目を開けて竹刀を振りに振り下ろしていく。
打突だとつをしようが、横に振って当てていこうとするが、当たらない。
当たっても竹刀の真ん中の辺りに当たっていく。
はじかれていきそうにもなるが、そこにはシンのかんでやっていくしかなかった。
振りに振り下ろして疲れが見え始めたのか息があらい。
すかさずアルツは突きにいこうとした。
竹刀を縦にしてガードをこころみる。
しかし、それが知らない間に竹刀がはじかれていた。
竹刀の先が顔の正面にくる。
打ち合いが終わった。
わずか5分半の打ち合い。

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」

竹刀がはじかれる寸前すんぜん、突きに出ようとしていた。
なのに、一瞬いっしゅん向きが変わったようにも見えた。
どれがフェンシングの刃先はさきのようにほんの少し曲がった気がした。
でも、肉眼にくがんでは見えなかった。
ほんの一瞬の動きが竹刀をはじくなんて想像もつかなかった。

牙突がとつや間合いに頼りきってしまってはいけない。 時に守ることにも役立てられる。 振って体力を消耗しょうもうするだけでは意味がないよ」
「じゃあ、どうしたらいいですか?」

その言葉にアルツはあることを聞いてみた。
君は間合いからの突きに入ったことはあるかい?と。
それはなかった。
そんな発想はっそうもなく振り回していたのだから。
銃専門のアルツでも清一郎に教わった技があった。
それは護身術ごしんじゅつ
竹刀でもできる護身術を。
手だけではなく、物を持っていてもできるということを。
それを知ったシンはその技を教えてほしいとアルツに頼んだ。
あっさりとOKをもらったシンはアルツと一緒に護身術を3時間もかけて学んでいた。
ビリーと直もそれをジッと見つめ、シンの応援をしていた。
夜がくる数時間。
あっという間に過ぎていった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不思議なショートストーリーたち

フジーニー
ミステリー
さくっと読める短編集 電車内の暇つぶしに、寝る前のお供に、毎日の楽しみに。

【アラウコの叫び 】第4巻/16世紀の南米史

ヘロヘロデス
歴史・時代
【毎日19:20投稿】 4巻は、序盤は「推理もの」、中盤から後半は「ロマンスもの」が展開されます。 ・サンティアゴで起こる「事件」と「裁き」 ・「アンデスの悪魔」として悪名を轟かせた狂気の老人カルバハルの存在感 ・ニドス家の兄妹の「行く末」 ・イネスとバルディビアとの「出逢い」と「結末」 大きく分けてこの様な展開になってます。 ------------------- 1500年以降から300年に渡り繰り広げられた「アラウコ戦争」を題材にした物語です。 マプチェ族とスペイン勢力との激突だけでなく、 スペイン勢力内部での覇権争い、 そしてインカ帝国と複雑に様々な勢力が絡み合っていきます。 ※ 現地の友人からの情報や様々な文献を元に史実に基づいて描かれている部分もあれば、 フィクションも混在しています。 動画制作などを視野に入れてる為、脚本として使いやすい様に、基本は会話形式で書いています。 HPでは人物紹介や年表等、最新話を先行公開しています。 公式HP:アラウコの叫び youtubeチャンネル名:ヘロヘロデス insta:herohero_agency tiktok:herohero_agency

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

【戦国時代小説】 甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助

蔵屋
歴史・時代
 わたしは、以前、甲斐国を観光旅行したことがある。  何故、甲斐国なのか?  それは、日本を象徴する富士山があるからだ。     さて、今回のわたしが小説の題材にした『甲斐の虎•武田信玄と軍師•山本勘助』はこの甲斐国で殆どの戦国乱世の時代を生き抜いた。そして越後の雄•上杉謙信との死闘は武田信玄、山本勘助にとっては人生そのものであったことだろう。  そんな彼らにわたしはスポットライトを当て読者の皆さんに彼らの素顔を知って頂く為に物語として執筆したものである。  なお、この小説の執筆に当たり『甲陽軍鑑』を参考にしていることを申し述べておく。  それでは、わたしが執筆した小説を最後までお楽しみ下さい。  読者の皆さんの人生において、お役に立てれば幸いです。  

処理中です...