満月の夜は狼にお気をつけください。

時結莉黒

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序章

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『本日は…ザザ…夜は快晴、満月の…ザザ…美しい夜です…。』
 ノイズ混じりのラジオから流れ出す天気予報は快晴を指す。

 満月の夜には狼にお気をつけください。


 この国には二つの顔がある。ひとつは昼の顔。普通の人々が普通に暮らしている。もうひとつは夜の顔。薬物、人身売買、殺人暗殺…。悪のはびこる顔である。

 昼の人間が見ることは無い、世界とは…
▽ 

 月の光を背にある男は鼻歌を歌っていた。目の前には細目の恰幅のいい男が這いつくばりながら鼻歌の男から逃げていた。
 「ねぇ、おじさん。狼って知ってる?」
 鼻歌の男は細目の男の胸ぐらを掴み馬乗りになった。その喉元には白銀に光るナイフが突きつけられている。
 「おっ…狼?ふざけたことを言うな!
 それより、貴様は何故俺を襲う!金か?女か?薬か?欲しけりゃくれてやる!だから殺さないでくれ…!」
 細目の男は脂汗を流しながら、今自分を見下している男に向かって叫んだ。
 「狼ってね、清らかで美しい存在なんだよ。
 そんな"僕らに"歯向かったらどうなるかわかってるの?」
 「貴様…まさか!」
 「戯言ほざいてるくらいなら身体でわからせないとね。」

 白い光が照らす中、赤い花が咲き乱れた。


 「終わったよ~、早く出てきなよ。」

 鼻歌の男はどこを見るわけでもなく言うと家々の間からもうひとりの男が出てきた。

 「相変わらずエグいり方するなぁ。そんなに笑いながら殺すやつ今まで見たことないぞ、ジャック。」
 「そんなことないよ、ただ、僕らの縄張りを荒らしたらから当然の報いを受けてもらっただけだよ。」
 ジャックと呼ばれた鼻歌の男は赤に染められたナイフを弄んでいる。
 「てか、こいつ夜の顔の了解な~んもわかってねぇのか?
 他人の縄張りに入っている時点でかなりの大罪だが、他人がが売ってるドラッグにも勝手に高値で転売やがって。」
 「まぁまぁ落ち着けってバンディ、とりま消したからいいんじゃない?」
 さっさと死体これ片付けようぜ、とジャックが言うとバンディと呼ばれたもう一人の男もどこから出したのか麻袋やら薬品やらを出して処理していた。

 夜の顔、最小にして最強の組織「Wolf」
 彼ら「狼」に逆らうものなら、骨の髄まで喰い殺されるだろう。
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