朗読台本

Curoe

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細い指

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 私がまだ学生だった頃、私には恋人がいました。
恋人にも恋人がいました。そりゃ当たり前だろって話なんですけど、私以外の恋人がいたんです。
私は特にそれに関して咎めませんでした。
結局は私のところへ戻ってきてくれると信じていたからです。それと、
それを言ってしまったら、あの子と別れることになってしまいそうな、そんな気がしたからです。
でも、あの子の私じゃない恋人とはよく言い争いをしていました。
私が本当の恋人だ!…だったり、私の方があの子のことをよく知ってるんだぞ!だったり。

他の人は言うんです。そんな子とは別れちゃいなよって。
でも別れませんでした。あの子が好きだったからです。
それに私は自信がありました。なぜなら、あの子の家族公認でお付き合いしていたからです。
家族ぐるみでよく出かけたりしたものです。

中学校も卒業に近づいた頃、
私はあの子から違う高校に行くことを告げられました。
中高一貫校だったので、私は六年間ずっと同じ学校で過ごせるものだと思っていたのですが、
もともと不登校気味のあの子にとって、みんなと同じペースで生活するのはしんどかったみたいです。

あの子は通信制の学校に行きました。
それでも会えない距離になってしまったわけではないので、変わらずデートには行ったり、家族ぐるみでお出かけしたり、お泊まりしたりしていました。

ある日突然、ぱったりと連絡がつかなくなってしまいました。
私はあの子の妹に尋ねました。
どうして連絡が取れなくなっちゃったのかわかる?と
妹は、「ちょっと体調崩してるだけだから、回復したらまた連絡つくようになると思うよ」と答えました。
私は待ちました。
ずっとずっと待ちましたが、一年たっても連絡はつきませんでした。
ある時、あの子から連絡が来て、私は急いで確認しました。
そこには、「○○病院に来て欲しい。」
ただそれだけが書かれていました。

私は予定もありませんでしたから、急いで病院に向かいました。
あの子のお母さんが待っていました。
あの子のお母さんから一通の手紙を受け取りました。

「先立つことを許してください。
今頃きっとあなたとは言葉を交わせなくなってしまっていることでしょう。
妹にも、お母さんにも私は口止めしてたの。ごめんね、
もう病気治らないって聞いて、同じ学校にいるのが辛くて、違う高校に通うことにしちゃった。
それも突然でごめんね。

私クズなのにずっと好きでいてくれてありがとう。私にとってあなたが一番大事な存在でした。
何度も騙すようなこと言ってごめんなさい。
それでもついてきてくれるあなたに私は甘えていたんだと思います。
本来ならとっくに別れを切り出されてもいいはずなのに、あなたは最後まで私についてきてくれた。
嬉しかった反面、苦しかった

あなたのダンス、とても好きでした。
あなたの演技、とても好きでした。
あなたの歌声、すごく好きでした。
あなたの全てが、大好きでした。
もう会えなくなるのが寂しくて何度も何度も泣きました。
それでも私は
あなたにお願いがあります。
私より幸せになってください。
私が羨ましいと思えるほど幸せになてください。

あなたの幸せが永遠に続きますように。」

あれからもう何年も経って、私ももう21、あれから何人もの人と付き合ってみましたが、
あの子の事を忘れることができなくて…何だかその時の恋人に申し訳なくなって…長く付き合うことができずにいます。

私は…きっと…彼女の望み通りに幸せにはなれないことでしょう。

拝啓彼女きみ

もう少し待っててくれ。
私がそっちに行ってから、その約束を果たそう。
またその細い指を握れる時を夢見て……

それじゃあ…また……
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