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スクーター
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「予算が足りませんか?」
「ああ、足りないね」
忠弥が確認するように尋ねると、義彦は大きく頷きながら答えた。
原付二輪の販売で収入が増えている島津産業だが、飛行機を生産するにはさらなる規模の拡大が必要だった。
生産工場の拡大、機械の新規購A入、滑走路の整地と整備。各地に飛行機を飛ばすとなると飛行場を建設する必要が出てくる。
それだけの費用を自動二輪の販売だけで賄うのは無理だった。
「普及型や販売用の飛行機でなんとかなりませんか?」
「注文は入っているが、原価を補うだけだ」
できるだけ早く飛行機が普及して欲しいので、販売用と普及型は低価格に抑えている。
物好きな金持ちには結構な金をふっかけようと思ったが、飛行機の宣伝を考えると数を売りたいので安価に設定している。
そのため利益が出ない。
投資を呼びかけているが海の物とも山の物ともしれない飛行機に投資してくる人はまだ少ない。
「だから、そろそろ新商品を作らないとダメだ」
忠弥の初飛行の偉業を見て興奮した各地の富豪が飛行場の建設に手を上げているが、自らの収入も確保して毎年一定額の研究資金を提供し続け研究を継続させたい義彦だった。
一時的な興奮で金を出すと言っていても、原付二輪のように常に一定の収入が入ってくるわけでは無いし、自由に使える資金でも無い。
島津産業の独立性、引いては飛行機製作が自由に出来るように、島津産業の収入アップを図りたかった。
「飛行機生産には金が掛かりますからね」
忠弥は義彦の意見に納得していた。
飛行機は小型機でも格納庫で自動車三台分以上のスペースが必要だし、生産となると更に大きな工場が必要だし資金も掛かる。
今でも原付二輪の工場の隣の格納庫で製作を行っているが、毎日数百台の原付二輪を作る工場と数機の飛行機を組み立てる工場の大きさが同じという有様だ。
かつて日本にあった中島飛行機は創業期に出資して貰った川西から採算が合わないから工場を買い取れと迫られ、資金繰りに奔走したという。
この時は新たな資金源を見つけて中島は工場を買い取り、一大飛行機会社への道を進んでいくという。因みにこの一件を川西は人生最大の痛恨事と終生嘆いたそうだ。
飛行機作りには資金が必要であり、それを得るための新商品。
飛行機より小さい規模で大々的に生産できて人々が買ってくれるものが必要だった。
「ではスクーターを作りましょう」
「スクーター?」
耳慣れない言葉に義彦は頭をもたげた。
「簡単に言うと原付二輪を更に発展させたものです」
忠弥は自室から設計図を持ってきて説明した。
「コンセプトは誰にでも使えるバイクです。バイクはクラッチ操作やレバーの操作が難しいですよね」
「ああそうだ」
自転車のようにバランスを取りながらギアを入れてクラッチを繋げるのは難しい。
特に発進時など、不安定な低速時に様々な操作をしつつ加速させるという曲芸のような状態となる。
「それを一切省きます。簡単に言うとスロットルを捻って開くだけで加速するバイクを作ります」
「まさか!」
忠弥の言葉に義彦は驚いた。
内燃機関の多くにクラッチが付いているのは、駆動軸との回転数の相違を吸収させるためだ。
自動車のエンジンは最大で八〇〇〇から一万回転、アイドリングの状態でも六〇〇から八〇〇回転だ。そして車は時速百キロ以上から停止状態まで速度が変化する。
当然エンジンの回転数と駆動輪の間に差があるのでギアを噛ませる。そして最適なギアは速度域によって違う
例えばタイヤの円周が一メートルとして時速一二〇キロの時は駆動輪は二〇〇〇回転し、時速六〇キロの時は一〇〇〇回転。
エンジンの最適な回転数が一五〇〇とすると走行速度におけるタイヤの回転数に合わせてギアを変える必要が出てくる。
エンジンが駆動軸に接続されている時にギアを変えるのは不可能に近い。
そこでクラッチをエンジンと駆動輪の間に付けて、一度エンジンから駆動輪を離してギアを変える。それがクラッチの役目だ。
クラッチを付けることで低速域で使うロー、中速域のセカンド、サード、最速域のトップに分けてそれぞれの速度で最適なギアを、クラッチで一度エンジンと駆動軸の接続を離してからギアを選択して走らせる。
その操作は練習による熟練が必要になるため、特に二輪という不安定な状態で行うバイク人口増加のネック、産業規模拡大の障害になっていた。
原付二輪は低速で走らせる上、エンジン自体が小さく、クランクの回転をゴムのタイヤに伝えそれを自転車のタイヤに押し付けて動かし、不要な時はエンジン自体を動かしてタイヤから離すことでクラッチの代わりにしていた。
それでも手間は掛かるがシフト操作がない分バイクより簡単だ。
だが、その構造故に原付二輪は、パワーアップができずにいた。
特に配達業の人々からは重い荷物を運ぶとき、もっとパワーが欲しいと要望されており、さらなる出力増加を求められていた。
だが、エンジンを大型化してもギアが無いため、エンジンの出力と回転数に対してタイヤの回転が合わず、思うような成果が出ていない。
しかし忠弥の言うスクーターはそれを全て解決するという夢のような機械だ。
「ああ、足りないね」
忠弥が確認するように尋ねると、義彦は大きく頷きながら答えた。
原付二輪の販売で収入が増えている島津産業だが、飛行機を生産するにはさらなる規模の拡大が必要だった。
生産工場の拡大、機械の新規購A入、滑走路の整地と整備。各地に飛行機を飛ばすとなると飛行場を建設する必要が出てくる。
それだけの費用を自動二輪の販売だけで賄うのは無理だった。
「普及型や販売用の飛行機でなんとかなりませんか?」
「注文は入っているが、原価を補うだけだ」
できるだけ早く飛行機が普及して欲しいので、販売用と普及型は低価格に抑えている。
物好きな金持ちには結構な金をふっかけようと思ったが、飛行機の宣伝を考えると数を売りたいので安価に設定している。
そのため利益が出ない。
投資を呼びかけているが海の物とも山の物ともしれない飛行機に投資してくる人はまだ少ない。
「だから、そろそろ新商品を作らないとダメだ」
忠弥の初飛行の偉業を見て興奮した各地の富豪が飛行場の建設に手を上げているが、自らの収入も確保して毎年一定額の研究資金を提供し続け研究を継続させたい義彦だった。
一時的な興奮で金を出すと言っていても、原付二輪のように常に一定の収入が入ってくるわけでは無いし、自由に使える資金でも無い。
島津産業の独立性、引いては飛行機製作が自由に出来るように、島津産業の収入アップを図りたかった。
「飛行機生産には金が掛かりますからね」
忠弥は義彦の意見に納得していた。
飛行機は小型機でも格納庫で自動車三台分以上のスペースが必要だし、生産となると更に大きな工場が必要だし資金も掛かる。
今でも原付二輪の工場の隣の格納庫で製作を行っているが、毎日数百台の原付二輪を作る工場と数機の飛行機を組み立てる工場の大きさが同じという有様だ。
かつて日本にあった中島飛行機は創業期に出資して貰った川西から採算が合わないから工場を買い取れと迫られ、資金繰りに奔走したという。
この時は新たな資金源を見つけて中島は工場を買い取り、一大飛行機会社への道を進んでいくという。因みにこの一件を川西は人生最大の痛恨事と終生嘆いたそうだ。
飛行機作りには資金が必要であり、それを得るための新商品。
飛行機より小さい規模で大々的に生産できて人々が買ってくれるものが必要だった。
「ではスクーターを作りましょう」
「スクーター?」
耳慣れない言葉に義彦は頭をもたげた。
「簡単に言うと原付二輪を更に発展させたものです」
忠弥は自室から設計図を持ってきて説明した。
「コンセプトは誰にでも使えるバイクです。バイクはクラッチ操作やレバーの操作が難しいですよね」
「ああそうだ」
自転車のようにバランスを取りながらギアを入れてクラッチを繋げるのは難しい。
特に発進時など、不安定な低速時に様々な操作をしつつ加速させるという曲芸のような状態となる。
「それを一切省きます。簡単に言うとスロットルを捻って開くだけで加速するバイクを作ります」
「まさか!」
忠弥の言葉に義彦は驚いた。
内燃機関の多くにクラッチが付いているのは、駆動軸との回転数の相違を吸収させるためだ。
自動車のエンジンは最大で八〇〇〇から一万回転、アイドリングの状態でも六〇〇から八〇〇回転だ。そして車は時速百キロ以上から停止状態まで速度が変化する。
当然エンジンの回転数と駆動輪の間に差があるのでギアを噛ませる。そして最適なギアは速度域によって違う
例えばタイヤの円周が一メートルとして時速一二〇キロの時は駆動輪は二〇〇〇回転し、時速六〇キロの時は一〇〇〇回転。
エンジンの最適な回転数が一五〇〇とすると走行速度におけるタイヤの回転数に合わせてギアを変える必要が出てくる。
エンジンが駆動軸に接続されている時にギアを変えるのは不可能に近い。
そこでクラッチをエンジンと駆動輪の間に付けて、一度エンジンから駆動輪を離してギアを変える。それがクラッチの役目だ。
クラッチを付けることで低速域で使うロー、中速域のセカンド、サード、最速域のトップに分けてそれぞれの速度で最適なギアを、クラッチで一度エンジンと駆動軸の接続を離してからギアを選択して走らせる。
その操作は練習による熟練が必要になるため、特に二輪という不安定な状態で行うバイク人口増加のネック、産業規模拡大の障害になっていた。
原付二輪は低速で走らせる上、エンジン自体が小さく、クランクの回転をゴムのタイヤに伝えそれを自転車のタイヤに押し付けて動かし、不要な時はエンジン自体を動かしてタイヤから離すことでクラッチの代わりにしていた。
それでも手間は掛かるがシフト操作がない分バイクより簡単だ。
だが、その構造故に原付二輪は、パワーアップができずにいた。
特に配達業の人々からは重い荷物を運ぶとき、もっとパワーが欲しいと要望されており、さらなる出力増加を求められていた。
だが、エンジンを大型化してもギアが無いため、エンジンの出力と回転数に対してタイヤの回転が合わず、思うような成果が出ていない。
しかし忠弥の言うスクーターはそれを全て解決するという夢のような機械だ。
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