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ダーク氏の開き直り
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忠弥のアイディアと指摘を、かねてから自分が考えつき、フライングライナーに備えていたようなダーク氏の態度に苛立った昴は更に怒気を高めて尋ねる。
「ではどうして、秋津での飛行の時、旋回を行わなかったのですか!」
「必要が無かったからだ。秋津にて飛行の条件の中に旋回の必要性があったから示しただけの事だ」
「つまり貴方が二番手だという事の証明でしょう」
「だが私のフライングランナーが上昇下降旋回を行った事はこの旧大陸の方々が、その目で見ておられる。私が初めて飛行を行った事に間違いは無い」
「旋回に成功したのは忠弥のアドバイスを取り入れたからでしょう。動翼と静翼は忠弥のアイディアでしょうが。あなたの、たわみ翼は垂直尾翼にしかないから無理でしょうが」
「確かに忠弥君の動翼と静翼を活用するアイディアはよい。フライングライナーの場合は活用の仕方が問題あると考えられる。彼は上手く使った。私のアイディアを使って。私はそれを取り入れたのだ。動翼は私の物だよ」
「忠弥は個人で実験を続けてきたのですよ。貴方に教えを請うたことはありません。そもそも貴方公表していないでしょう」
「いや公表している」
そう言って動翼の特許を書いた書面を出した。
ただし、公表日が秋津のデモ飛行の日付に二重線が書かれその横にフライングライナーが初飛行した日付が書かれていた。
「私は科学協会の会長として、実験成果は世間に公表してきた。残念ながら私の公表日時がずれていたようだ。公式な日時より前に公表された情報を元に忠弥君が飛行機を組み上げ、有人動力飛行を行い空を自由に飛んだことは賞賛に値する。しかし動翼を発明したのは私で、それを使い人類初の有人動力飛行を行い得たのは私のフライングランナーだ」
「ただ単に真っ直ぐ飛んだだけでしょう」
「飛んだことは事実だ。旋回はやらなかっただけだ」
「忠弥に先を越されるのが嫌なだけでしょう。動翼を付けたことで操縦性をようやく得られたのでしょう」
「君のアイディアを使わせて貰った方が性能が向上するからね。素晴らしいアイディアだよ。しかしフライングランナーはたわみ翼で操縦性を得ていた。自由自在に飛べる」
「そんな事無いでしょう。忠弥が機体を傾けないと旋回できないことを教えたから旋回できるようになったんでしょう」
「君が自らのために人類初の称号を保持しようと考え、色々難癖を付けているようだが。人類初の有人動力飛行を成功させたのは、この私だ」
何者をも、例え髪であっても恐れぬ態度でダーク氏は断言した。
「人を空に飛ばしたのは私である事に間違いは無い。飛行を最初に成功させたのは私だ」
「自分の虚栄を守るためでしょう。そのために忠弥の功績を踏みにじるのですか」
「君らこそ自らの虚栄の為にこれほど乱暴な行為を行うのだろう」
ダーク氏は一度は忠弥の飛行を認めていたが、自らの栄誉、人類初の有人動力飛行が偽りであると言われるのが嫌だった。
科学協会において数々の業績を残してきて、最後の栄誉として考えたのが人類初の有人動力飛行だった。何度か実験に失敗し人々から嘲笑を受けたが、人を乗せて数百メートルの飛行に成功して何とか面子を保った。
しかし、ダーク氏に敵対する人間の中には、直線飛行だけで上昇下降旋回が行われていないため、飛行と言えるか疑問視する声があった。
当のダーク氏も思っていたが、直線飛行を成功させた後に操縦性を獲得すれば良いと考えていた。
しかし実験は上手く行かず、疑問視する声は大きくなるばかり。
だからダーク氏は旧大陸に赴きフライングランナーのデモ飛行を行う事で自分が人類初の有人動力飛行を行ったと人々に見せつけようとした。一度人々に自分のフライングランナーが飛ぶ姿を見せれば人類初の有人動力飛行を行ったのは自分だと記憶させられる。
だが、直後に秋津皇国から僅か十歳の少年が有人動力飛行に成功したとの報が入って来た。
ニュース映像付きで見たその飛行は完璧だった。フライングランナーが出来ない上昇下降旋回を僅か一〇才の少年が実現したことが信じられなかった。
偶然成功したと思っており気にはかけなかった。
だからツアーに出たときも、皇国から招待を受けたときもダーク氏は自信満々だった。
だがその自信は見事に忠弥の前で打ち砕かれた。
討論の時は虚勢を張っているようにしか見えなかったが、ダーク氏のフライングライナーの欠点を的確に指摘してきた。
焦ったダーク氏は実際の飛行で化けの皮を剥ごうとして観客の前でのデモ飛行を求めた。
しかし、目論見とは逆に実際に目の前で成功させてしまった。
偶然では無く実力であると認めざるを得なかった。
実際に飛行できたのはフライングライナーではなく玉虫であると。
そして、このままでは自分の功績が数十年にもわたる研究が否定される、とダーク氏は焦った。
そんな悪夢はなんとしても回避したい。
忠弥との対決飛行が終わった時に考え思いついた。
操縦性の有無が問題なのだからフライングランナーに操縦性を良くする機構を取り付ければ良い。
船中で改造を施し動翼を取り付けて旧大陸で空を飛んで見せた。
今度は操縦、上昇下降旋回を含めた飛行を。
動翼のアイディアも自分が思いついたように修正し発表日時の改ざんも部下に命じて行わせた。
新大陸で披露しなかったのは試験飛行で直線を飛んで性能と安全性を確認したと言ってやらなかったから、とした。
ツアーの最中にこれを言い続けることで自分が人類初であると人々に印象づけようとダーク氏は考えていた。
だからダーク氏は昴の言葉に開き直った態度で答えていた。
「ではどうして、秋津での飛行の時、旋回を行わなかったのですか!」
「必要が無かったからだ。秋津にて飛行の条件の中に旋回の必要性があったから示しただけの事だ」
「つまり貴方が二番手だという事の証明でしょう」
「だが私のフライングランナーが上昇下降旋回を行った事はこの旧大陸の方々が、その目で見ておられる。私が初めて飛行を行った事に間違いは無い」
「旋回に成功したのは忠弥のアドバイスを取り入れたからでしょう。動翼と静翼は忠弥のアイディアでしょうが。あなたの、たわみ翼は垂直尾翼にしかないから無理でしょうが」
「確かに忠弥君の動翼と静翼を活用するアイディアはよい。フライングライナーの場合は活用の仕方が問題あると考えられる。彼は上手く使った。私のアイディアを使って。私はそれを取り入れたのだ。動翼は私の物だよ」
「忠弥は個人で実験を続けてきたのですよ。貴方に教えを請うたことはありません。そもそも貴方公表していないでしょう」
「いや公表している」
そう言って動翼の特許を書いた書面を出した。
ただし、公表日が秋津のデモ飛行の日付に二重線が書かれその横にフライングライナーが初飛行した日付が書かれていた。
「私は科学協会の会長として、実験成果は世間に公表してきた。残念ながら私の公表日時がずれていたようだ。公式な日時より前に公表された情報を元に忠弥君が飛行機を組み上げ、有人動力飛行を行い空を自由に飛んだことは賞賛に値する。しかし動翼を発明したのは私で、それを使い人類初の有人動力飛行を行い得たのは私のフライングランナーだ」
「ただ単に真っ直ぐ飛んだだけでしょう」
「飛んだことは事実だ。旋回はやらなかっただけだ」
「忠弥に先を越されるのが嫌なだけでしょう。動翼を付けたことで操縦性をようやく得られたのでしょう」
「君のアイディアを使わせて貰った方が性能が向上するからね。素晴らしいアイディアだよ。しかしフライングランナーはたわみ翼で操縦性を得ていた。自由自在に飛べる」
「そんな事無いでしょう。忠弥が機体を傾けないと旋回できないことを教えたから旋回できるようになったんでしょう」
「君が自らのために人類初の称号を保持しようと考え、色々難癖を付けているようだが。人類初の有人動力飛行を成功させたのは、この私だ」
何者をも、例え髪であっても恐れぬ態度でダーク氏は断言した。
「人を空に飛ばしたのは私である事に間違いは無い。飛行を最初に成功させたのは私だ」
「自分の虚栄を守るためでしょう。そのために忠弥の功績を踏みにじるのですか」
「君らこそ自らの虚栄の為にこれほど乱暴な行為を行うのだろう」
ダーク氏は一度は忠弥の飛行を認めていたが、自らの栄誉、人類初の有人動力飛行が偽りであると言われるのが嫌だった。
科学協会において数々の業績を残してきて、最後の栄誉として考えたのが人類初の有人動力飛行だった。何度か実験に失敗し人々から嘲笑を受けたが、人を乗せて数百メートルの飛行に成功して何とか面子を保った。
しかし、ダーク氏に敵対する人間の中には、直線飛行だけで上昇下降旋回が行われていないため、飛行と言えるか疑問視する声があった。
当のダーク氏も思っていたが、直線飛行を成功させた後に操縦性を獲得すれば良いと考えていた。
しかし実験は上手く行かず、疑問視する声は大きくなるばかり。
だからダーク氏は旧大陸に赴きフライングランナーのデモ飛行を行う事で自分が人類初の有人動力飛行を行ったと人々に見せつけようとした。一度人々に自分のフライングランナーが飛ぶ姿を見せれば人類初の有人動力飛行を行ったのは自分だと記憶させられる。
だが、直後に秋津皇国から僅か十歳の少年が有人動力飛行に成功したとの報が入って来た。
ニュース映像付きで見たその飛行は完璧だった。フライングランナーが出来ない上昇下降旋回を僅か一〇才の少年が実現したことが信じられなかった。
偶然成功したと思っており気にはかけなかった。
だからツアーに出たときも、皇国から招待を受けたときもダーク氏は自信満々だった。
だがその自信は見事に忠弥の前で打ち砕かれた。
討論の時は虚勢を張っているようにしか見えなかったが、ダーク氏のフライングライナーの欠点を的確に指摘してきた。
焦ったダーク氏は実際の飛行で化けの皮を剥ごうとして観客の前でのデモ飛行を求めた。
しかし、目論見とは逆に実際に目の前で成功させてしまった。
偶然では無く実力であると認めざるを得なかった。
実際に飛行できたのはフライングライナーではなく玉虫であると。
そして、このままでは自分の功績が数十年にもわたる研究が否定される、とダーク氏は焦った。
そんな悪夢はなんとしても回避したい。
忠弥との対決飛行が終わった時に考え思いついた。
操縦性の有無が問題なのだからフライングランナーに操縦性を良くする機構を取り付ければ良い。
船中で改造を施し動翼を取り付けて旧大陸で空を飛んで見せた。
今度は操縦、上昇下降旋回を含めた飛行を。
動翼のアイディアも自分が思いついたように修正し発表日時の改ざんも部下に命じて行わせた。
新大陸で披露しなかったのは試験飛行で直線を飛んで性能と安全性を確認したと言ってやらなかったから、とした。
ツアーの最中にこれを言い続けることで自分が人類初であると人々に印象づけようとダーク氏は考えていた。
だからダーク氏は昴の言葉に開き直った態度で答えていた。
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