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忠弥の決意
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「巫山戯るな!」
ダーク氏の開き直った言動に昴は憤りを露わにする。
「あなたは自分の地位や名誉、何よりプライドを守りたくて事実をねじ曲げて、忠弥の手柄を奪おうとしているだけしょう!」
「な、何を言っているんだお嬢さん。それは違う」
自力で動力飛行を成功させたとはいえ年が五倍以上違う少年少女相手なら丸め込めると思っていたダーク氏は、昴の怒りを見て慌てはぐらかそうとする。
しかし、昴は黙っていない。
「いいえ、違いません。貴方は自分のプライドを守りたいが為に忠弥の功績を否定し、奪おうとしているのです。もし貴方が本当に飛べたとしたら改造する必要も無く、始めからそのまま飛行しているはずです。この旧大陸で何度も飛行しているのは人類初の有人動力飛行が自分の功績であるとひけらかすため、声高に言って人々に間違った認識を与えるためです」
「そんなことは」
「ではどうしてフライトを繰り返し、新聞記事をいくつも出しているのですか。自分の脆い立場を虚構で固めるためでしょう」
昴は鋭くダーク氏を追求していった。
元々、プライドが高く自己顕示欲が旺盛な昴だけに同類であるダーク氏の考えや心情、やり口はよく理解している。
それだけに手口の汚さがはっきりと見える。故に追求の手は的確で容赦なかった。
「だとしても旧大陸で有人動力飛行を成功させたのは私だ。これは誰もが認めることだろう」
「そうやって皇国での出来事を否定するのですか。旋回できずに海に墜落したことを」
「あれは不幸な失敗だった」
「では、その失敗を認めて、忠弥の技術を盗用し、その技術で旧大陸で飛んだことを認めてください」
「技術は常に進歩し新たな技術を取りいれる。素晴らしい機能があるなら取り入れて活用するのが科学であり技術だ。初飛行から改良を続けており、その過程で失敗はつきものだ。皇国での墜落はその一つだ。しかし新大陸では成功を続けている」
「忠弥に負けてから取り付けたのでしょう! それを隠すために皇国での墜落がたまたま失敗しただけだ、動翼は新大陸で既に付けていた。旧大陸で成功しているのは船中で改良したからだ、と言い張るのですか」
「その通りだ。事実なのだから」
「むきーっっっっっ! このゴミ屑馬鹿爺っ!」
ダーク氏の厚顔無恥な対応に昴は怒った。
「忠弥、宜しいのですか、このままでは貴方の功績は否定されますよ」
「いいよ」
身体を揺さぶってくる昴に忠弥は静かに答えた。
その態度に昴は固まってしまい、次いで震えながら忠弥に尋ねる。
「ちゅ、忠弥、それで良いのですか」
あまりにも簡単に何事もないように答える姿に昴は狼狽えた。
自分の功績を奪われているのに何事もないように微笑んでいることに昴は動揺した。
「この人と争う気なんか、僕には無いよ」
「君の負けを潔く認めたのか」
笑顔でダーク氏は答えた。
ずっとハッタリと虚勢で開き直ってきたダーク氏である。
数十年も生きてきたためこの程度の芝居は出来る。死ぬまで自分が人類初の有人動力飛行を行ったと主張しつづけ、その間に人々の認識がそのようになるよう演じ続ける覚悟もしていた。
飛行機を作り上げたとはいえ、ほんの十年ほどしか生きていない少年に根を上げさせる程度のことは簡単だと信じていた。
自分の思惑通りに進んでいる事にダーク氏は満足していた。
だが、忠弥は決して負けは認めていないし折れてもいなかった。
「いえ、一つ確認したいのですが、貴方は私が星形エンジンを自由に製作して使っても良いと仰りましたよね」
「ああ、言ったな」
「では、今後好きに使わせて貰います。そして動翼と静翼のアイディアも自由に使えるなら貴方にお譲りしますよ。しかし玉虫、私が作った飛行機は私のオリジナルの設計だ」
「そういうことだね。君は大した者だ」
「では、今後私が作る飛行機は私のオリジナルであり、私の功績という事ですね」
「そうだが」
繰り返し念を押してくる忠弥に、ダーク氏は徐々に不安になってきた。
「忠弥! こんな人間、いやゴミ屑に人類初の栄誉を奪われて良いのですか」
淡々と話を続ける忠弥に昴が怒鳴る。
「この件に関しては非常に長い言い争いになるよ。けど、そんな事に付き合っていられない」
「どうしてですか」
「自分が優れた飛行機技術者だと証明したいんだよ。何より空を飛びたい。そこでダーク氏と僕、どちらが優れているか飛行でハッキリと証明しましょう」
「どうやってだ。またデモ飛行を行うのかね?」
「ええ、また今度来たときに行いましょう。そして証明しますよ。あのケクラン塔のように」
ケクラン塔はパリシイの新しい建築物だが、著名人を中心に景観を損ねるため建築するべきでない、と反対運動が起こった。最終的に計画者のケクランが、完成後市民投票を行い景観を損ねるようなら解体すると宣言し建設し完成した。
だがケクランが丹精込めて設計したケクラン塔はパリシイの町並みにマッチしており市民達はこぞって完成を祝った。
「未知の物に対して、特に現物が無いのに優れているとか、素晴らしいとか言えませんので、私も実物を持ち込む事にします」
「手ぶら出来たのでは仕方ないね」
「はい、また旧大陸に来ますよ。僕の作った飛行機に乗って秋津皇国から、このパリシイに飛んで来ます」
ダーク氏の開き直った言動に昴は憤りを露わにする。
「あなたは自分の地位や名誉、何よりプライドを守りたくて事実をねじ曲げて、忠弥の手柄を奪おうとしているだけしょう!」
「な、何を言っているんだお嬢さん。それは違う」
自力で動力飛行を成功させたとはいえ年が五倍以上違う少年少女相手なら丸め込めると思っていたダーク氏は、昴の怒りを見て慌てはぐらかそうとする。
しかし、昴は黙っていない。
「いいえ、違いません。貴方は自分のプライドを守りたいが為に忠弥の功績を否定し、奪おうとしているのです。もし貴方が本当に飛べたとしたら改造する必要も無く、始めからそのまま飛行しているはずです。この旧大陸で何度も飛行しているのは人類初の有人動力飛行が自分の功績であるとひけらかすため、声高に言って人々に間違った認識を与えるためです」
「そんなことは」
「ではどうしてフライトを繰り返し、新聞記事をいくつも出しているのですか。自分の脆い立場を虚構で固めるためでしょう」
昴は鋭くダーク氏を追求していった。
元々、プライドが高く自己顕示欲が旺盛な昴だけに同類であるダーク氏の考えや心情、やり口はよく理解している。
それだけに手口の汚さがはっきりと見える。故に追求の手は的確で容赦なかった。
「だとしても旧大陸で有人動力飛行を成功させたのは私だ。これは誰もが認めることだろう」
「そうやって皇国での出来事を否定するのですか。旋回できずに海に墜落したことを」
「あれは不幸な失敗だった」
「では、その失敗を認めて、忠弥の技術を盗用し、その技術で旧大陸で飛んだことを認めてください」
「技術は常に進歩し新たな技術を取りいれる。素晴らしい機能があるなら取り入れて活用するのが科学であり技術だ。初飛行から改良を続けており、その過程で失敗はつきものだ。皇国での墜落はその一つだ。しかし新大陸では成功を続けている」
「忠弥に負けてから取り付けたのでしょう! それを隠すために皇国での墜落がたまたま失敗しただけだ、動翼は新大陸で既に付けていた。旧大陸で成功しているのは船中で改良したからだ、と言い張るのですか」
「その通りだ。事実なのだから」
「むきーっっっっっ! このゴミ屑馬鹿爺っ!」
ダーク氏の厚顔無恥な対応に昴は怒った。
「忠弥、宜しいのですか、このままでは貴方の功績は否定されますよ」
「いいよ」
身体を揺さぶってくる昴に忠弥は静かに答えた。
その態度に昴は固まってしまい、次いで震えながら忠弥に尋ねる。
「ちゅ、忠弥、それで良いのですか」
あまりにも簡単に何事もないように答える姿に昴は狼狽えた。
自分の功績を奪われているのに何事もないように微笑んでいることに昴は動揺した。
「この人と争う気なんか、僕には無いよ」
「君の負けを潔く認めたのか」
笑顔でダーク氏は答えた。
ずっとハッタリと虚勢で開き直ってきたダーク氏である。
数十年も生きてきたためこの程度の芝居は出来る。死ぬまで自分が人類初の有人動力飛行を行ったと主張しつづけ、その間に人々の認識がそのようになるよう演じ続ける覚悟もしていた。
飛行機を作り上げたとはいえ、ほんの十年ほどしか生きていない少年に根を上げさせる程度のことは簡単だと信じていた。
自分の思惑通りに進んでいる事にダーク氏は満足していた。
だが、忠弥は決して負けは認めていないし折れてもいなかった。
「いえ、一つ確認したいのですが、貴方は私が星形エンジンを自由に製作して使っても良いと仰りましたよね」
「ああ、言ったな」
「では、今後好きに使わせて貰います。そして動翼と静翼のアイディアも自由に使えるなら貴方にお譲りしますよ。しかし玉虫、私が作った飛行機は私のオリジナルの設計だ」
「そういうことだね。君は大した者だ」
「では、今後私が作る飛行機は私のオリジナルであり、私の功績という事ですね」
「そうだが」
繰り返し念を押してくる忠弥に、ダーク氏は徐々に不安になってきた。
「忠弥! こんな人間、いやゴミ屑に人類初の栄誉を奪われて良いのですか」
淡々と話を続ける忠弥に昴が怒鳴る。
「この件に関しては非常に長い言い争いになるよ。けど、そんな事に付き合っていられない」
「どうしてですか」
「自分が優れた飛行機技術者だと証明したいんだよ。何より空を飛びたい。そこでダーク氏と僕、どちらが優れているか飛行でハッキリと証明しましょう」
「どうやってだ。またデモ飛行を行うのかね?」
「ええ、また今度来たときに行いましょう。そして証明しますよ。あのケクラン塔のように」
ケクラン塔はパリシイの新しい建築物だが、著名人を中心に景観を損ねるため建築するべきでない、と反対運動が起こった。最終的に計画者のケクランが、完成後市民投票を行い景観を損ねるようなら解体すると宣言し建設し完成した。
だがケクランが丹精込めて設計したケクラン塔はパリシイの町並みにマッチしており市民達はこぞって完成を祝った。
「未知の物に対して、特に現物が無いのに優れているとか、素晴らしいとか言えませんので、私も実物を持ち込む事にします」
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