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技術の戦い
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「散々な一週間だったな」
翌週、ようやく纏まった損害報告を読み終えた忠弥は呟いた。
ベルケの執拗な反復攻撃により一週間で皇国軍航空隊は地上と上空で保有機の半数を喪失。
ベルケが初日に攻撃してきた本隊は勿論、師団に分遣していた機体も多くが損傷し飛行不能となっていた。
「申し訳ありません」
出撃して撃墜された相原大尉が頭を下げて謝る。
「いや、仕方ないさ。ベルケの方が一枚上手だった。連合王国も共和国も大損害を受けている」
忠弥は相原を慰めた。
連合も共和国も皇国の航空機による戦果を見て航空兵力を投入し始めていた。そして短期間で大量の航空機を投入するまでに至っていた。
それをベルケは一週間で壊滅状態にしてしまった。
寧ろベルケへの対応策がなかったために皇国よりも酷い状況――皇国軍の倍くらいの損害を出す事態となってしまった。
「だが、こちらも戦果がなかったわけではない。大尉が一機撃墜してくれたお陰で敵の新型の情報が手に入った」
忠弥は相原が撃墜したハイデルベルク帝国軍の新型機が収容されたテントに入って説明を始めた。
「我々の戦闘機と同じですね」
「ああ、全く同じだ。あちこち弄って軽量化し、機動性を増すための工夫がされている」
複葉機でありエンジンも同じだが、機体のあちこちで骨組みに対して肉抜きを行っている。
日本海軍のゼロ戦でも使われた手で、少しでも軽くして機動性を上げようという意志が見える。
「特に特徴的なのはプロペラ同調装置だ。こいつのお陰でプロペラに装甲板を貼る必要が無くなり軽量化と機体能力の向上に繋げている」
「どこでそんな物を手に入れたんでしょう」
帝国軍はプロペラ同調装置など作っていないはずで、そこが相原の疑問だった。
しかし、忠弥は事もなげに推測を言う。
「我が方の戦闘機を撃墜して捕獲した機体から回収して得たのでしょう」
「我々の機体をコピーしたのですか」
「ああ、何が必要か理解して躊躇無く採用している。さすがベルケだよ」
飛行機とは技術だ。
技術は誰でも出来る事の積み重ねであり、忠弥が出来るのならば、ベルケにも出来る。
ここ最近戦闘機の損失もあり、撃墜した機体を回収して自ら回収して調査し、改良を加えて投入してきたのだろう。
「厄介な敵だね」
言葉とは裏腹に忠弥は嬉しそうに言う。
戦争とはいえ、素晴らしい飛行機を作ろうとする姿勢、なりふり構わず、敵の技術でも積極的に分析して取り入れていくベルケの姿勢には好感が持てた。
「ですが、このままだと我々は制空権を失います。今も何処かで帝国軍の攻勢が」
「大変です!」
その時伝令が駆け込んできた。
「ラスコー共和国軍が守るヴォージュ要塞に帝国軍が攻撃を仕掛けてきました」
ヴォージュ要塞はラスコー軍が担当する戦線の中央にあり、ここを突破されると連合軍最大兵力を誇るラスコー軍は分断されて崩壊するだろう。
「直ちに迎撃戦闘機を送るように、とのことです」
「師団配備の航空機を移して貰えるのか」
「いえ、そのような命令は」
「無いなら無理だな。少数を送っても逐次投入となり、意味が無い」
「しかし、命令ですが」
「もう少し、待ってからにする」
「司令部は怒りますよ。場合によっては軍法会議の可能性も」
「そうだろうね。でも、打つ手はある」
暫くして軍司令部で会議が開かれ、忠弥も呼び出されれた。
「中佐、君の戦功は十分承知している。そして我が皇国、いや、人類の英雄である事も十分に承知している」
抑制気味に神木大将は言っていたが、忠弥に対する苛立ちが含まれているのは明らかだった。
「だが君は今は軍人だ。命令に従わなくてはならない」
「無意味な命令は拒絶するべきだと考えます」
「何故無意味と言える。味方が困っているのに向かわないとはどういう事だ」
ここ数日、忠弥は軍司令部の命令に反して航空機を出すことを止めていた。
それどころか派遣されていた航空機も引き上げ、自分の手元に置いていた。
「投入される兵力が少なすぎます。師団配備の戦闘機も纏めて部隊を編成し赴かなければ無理です」
「だが、武人として戦場に赴かないのはどうなのだ」
「指揮官として部下を犬死にさせるわけにはいきません。それに、敵機を撃墜するために出撃しています」
実際、忠弥は何度も出撃していた。
撃墜数は順調に増え、損害は減っていた。
だがそれは残存機を集めて帝国軍の一角に集中投入する作戦であり他の地域への出撃はしない――隣であろうと助けに向かわなかった。
そのため、忠弥達が居ない地域では、帝国軍航空隊が自由に活動し攻撃を仕掛け、砲撃を誘導していた。
そのため攻撃を受ける地上部隊から文句が出ていたし、指揮下の兵力が損害を受けている状況に神木大将は苛立っていた。
「兎に角、命令を下す。航空大隊は現在保有する全ての航空機を以て救援に向かえ。ただし師団に分遣された機体は除く」
「出来ません。分遣された分も戻して貰って集中投入します」
「貴様hあ」
「失礼します」
その時伝令が入って来た。
「今会議中だ」
「ですが、本国よりの訓令です。本日を以て、帝国軍は海軍、陸軍に次ぐ新たな軍として空軍を創設。航空大隊は派遣軍の指揮を離れ、空軍の指揮下に入るように、との命令です」
「なに!」
驚いた神木大将は電文を受け取り読むと、身体が震え始めた。
翌週、ようやく纏まった損害報告を読み終えた忠弥は呟いた。
ベルケの執拗な反復攻撃により一週間で皇国軍航空隊は地上と上空で保有機の半数を喪失。
ベルケが初日に攻撃してきた本隊は勿論、師団に分遣していた機体も多くが損傷し飛行不能となっていた。
「申し訳ありません」
出撃して撃墜された相原大尉が頭を下げて謝る。
「いや、仕方ないさ。ベルケの方が一枚上手だった。連合王国も共和国も大損害を受けている」
忠弥は相原を慰めた。
連合も共和国も皇国の航空機による戦果を見て航空兵力を投入し始めていた。そして短期間で大量の航空機を投入するまでに至っていた。
それをベルケは一週間で壊滅状態にしてしまった。
寧ろベルケへの対応策がなかったために皇国よりも酷い状況――皇国軍の倍くらいの損害を出す事態となってしまった。
「だが、こちらも戦果がなかったわけではない。大尉が一機撃墜してくれたお陰で敵の新型の情報が手に入った」
忠弥は相原が撃墜したハイデルベルク帝国軍の新型機が収容されたテントに入って説明を始めた。
「我々の戦闘機と同じですね」
「ああ、全く同じだ。あちこち弄って軽量化し、機動性を増すための工夫がされている」
複葉機でありエンジンも同じだが、機体のあちこちで骨組みに対して肉抜きを行っている。
日本海軍のゼロ戦でも使われた手で、少しでも軽くして機動性を上げようという意志が見える。
「特に特徴的なのはプロペラ同調装置だ。こいつのお陰でプロペラに装甲板を貼る必要が無くなり軽量化と機体能力の向上に繋げている」
「どこでそんな物を手に入れたんでしょう」
帝国軍はプロペラ同調装置など作っていないはずで、そこが相原の疑問だった。
しかし、忠弥は事もなげに推測を言う。
「我が方の戦闘機を撃墜して捕獲した機体から回収して得たのでしょう」
「我々の機体をコピーしたのですか」
「ああ、何が必要か理解して躊躇無く採用している。さすがベルケだよ」
飛行機とは技術だ。
技術は誰でも出来る事の積み重ねであり、忠弥が出来るのならば、ベルケにも出来る。
ここ最近戦闘機の損失もあり、撃墜した機体を回収して自ら回収して調査し、改良を加えて投入してきたのだろう。
「厄介な敵だね」
言葉とは裏腹に忠弥は嬉しそうに言う。
戦争とはいえ、素晴らしい飛行機を作ろうとする姿勢、なりふり構わず、敵の技術でも積極的に分析して取り入れていくベルケの姿勢には好感が持てた。
「ですが、このままだと我々は制空権を失います。今も何処かで帝国軍の攻勢が」
「大変です!」
その時伝令が駆け込んできた。
「ラスコー共和国軍が守るヴォージュ要塞に帝国軍が攻撃を仕掛けてきました」
ヴォージュ要塞はラスコー軍が担当する戦線の中央にあり、ここを突破されると連合軍最大兵力を誇るラスコー軍は分断されて崩壊するだろう。
「直ちに迎撃戦闘機を送るように、とのことです」
「師団配備の航空機を移して貰えるのか」
「いえ、そのような命令は」
「無いなら無理だな。少数を送っても逐次投入となり、意味が無い」
「しかし、命令ですが」
「もう少し、待ってからにする」
「司令部は怒りますよ。場合によっては軍法会議の可能性も」
「そうだろうね。でも、打つ手はある」
暫くして軍司令部で会議が開かれ、忠弥も呼び出されれた。
「中佐、君の戦功は十分承知している。そして我が皇国、いや、人類の英雄である事も十分に承知している」
抑制気味に神木大将は言っていたが、忠弥に対する苛立ちが含まれているのは明らかだった。
「だが君は今は軍人だ。命令に従わなくてはならない」
「無意味な命令は拒絶するべきだと考えます」
「何故無意味と言える。味方が困っているのに向かわないとはどういう事だ」
ここ数日、忠弥は軍司令部の命令に反して航空機を出すことを止めていた。
それどころか派遣されていた航空機も引き上げ、自分の手元に置いていた。
「投入される兵力が少なすぎます。師団配備の戦闘機も纏めて部隊を編成し赴かなければ無理です」
「だが、武人として戦場に赴かないのはどうなのだ」
「指揮官として部下を犬死にさせるわけにはいきません。それに、敵機を撃墜するために出撃しています」
実際、忠弥は何度も出撃していた。
撃墜数は順調に増え、損害は減っていた。
だがそれは残存機を集めて帝国軍の一角に集中投入する作戦であり他の地域への出撃はしない――隣であろうと助けに向かわなかった。
そのため、忠弥達が居ない地域では、帝国軍航空隊が自由に活動し攻撃を仕掛け、砲撃を誘導していた。
そのため攻撃を受ける地上部隊から文句が出ていたし、指揮下の兵力が損害を受けている状況に神木大将は苛立っていた。
「兎に角、命令を下す。航空大隊は現在保有する全ての航空機を以て救援に向かえ。ただし師団に分遣された機体は除く」
「出来ません。分遣された分も戻して貰って集中投入します」
「貴様hあ」
「失礼します」
その時伝令が入って来た。
「今会議中だ」
「ですが、本国よりの訓令です。本日を以て、帝国軍は海軍、陸軍に次ぐ新たな軍として空軍を創設。航空大隊は派遣軍の指揮を離れ、空軍の指揮下に入るように、との命令です」
「なに!」
驚いた神木大将は電文を受け取り読むと、身体が震え始めた。
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