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ヴォージュ要塞
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ヴォージュ要塞。
中世からの交通の要所であるヴォージュに作られた要塞。
この町を巡って様々な勢力の間で幾度も争いが起きた。
そのためヴォージュに攻めてくる軍隊を撃退するため街は城郭都市となり、度重なる改築が行われている。
近代でも交通の要衝であることは変わらず、技術の進展に伴い要塞の強化が何度も行われている。
具体的には大砲による相互援護が可能な距離に堡塁を街を中心とした円周上に配置して、敵軍を迎え撃つ近代要塞となっていた。
街を攻略する時は勿論、迂回して進撃しようとすれば要塞の長距離砲の攻撃を受け、大損害を被ってしまうという寸法だ。
そのためハイデルベルク帝国軍は進軍上の障害であるヴォージュを攻略しラスコー共和国へ突入するべく要塞攻略に乗り出していた。
他にも理由はあった。
皇国や連合王国を撃破したとしても大陸の外の島国であり、降伏するとは考えにくい。
一方ラスコー共和国は西部戦線の連合軍の最大兵力を誇る上、緒戦で大損害を受けている。動員によって戦力を回復しているが、何時までも出来るとは限らない。
ここでラスコー共和国に大打撃を与えれば、講和への道も開けるとハイデルベルク帝国軍上層部は考えた。
ヴォージュ要塞にラスコー共和国軍を引きずり出しあわよくば中央突破して包囲殲滅しようと計画し実行していた。
そのため帝国軍は一個軍一五万を動員して要塞攻略戦を開始した。
軍固有の砲兵部隊が有する野戦砲三〇〇門に新たに配備された攻城砲部隊が指揮する重砲八〇〇門による猛烈な砲撃が日の出から午前中一杯行われ、要塞の前衛にある野戦陣地陣地を破壊。直後に歩兵部隊が突入して第一線を占領した。
一方のラスコー共和国軍は要塞の死守を決定。
増援を送り、陣地の奪回を目指し突撃を繰り返しており、帝国軍との間で壮絶な戦闘が各所で繰り広げられる事となった。
しかし、ラスコー軍は不利だった。
上空から偵察機により要塞に配備された部隊や大砲の正確な位置がハイデルベルク帝国軍に筒抜けだった。
偵察機を排除するべく戦闘機を飛ばしてもベルケ率いる戦闘機部隊が上空を飛んでいるために迎撃に向かったラスコー共和国軍の飛行機は返り討ちにあってしまった。
この日もベルケはヴォージュ要塞の上空を飛んでいた。
下を見ると味方の偵察機が、砲兵隊に向けて弾着観測をしている。
修正は見事なもので、要塞の砲台周辺へ次々と砲弾が命中していく。
そこへ歩兵達が突撃していく。
通常ならば、配備された機関銃の掃射で倒れてしまうのだが、予め上空から見つけ出した陣地を砲撃で潰しているので損害は少ない。
かくして勇敢で心強い味方は、敵陣地を制圧する事が出来る。
元々、陸軍の将校であるベルケは地上部隊の損害が少ないことを喜んだ。
幼年学校、士官学校の同期には歩兵もいて、当然この戦争に従軍している。
激戦が続き戦死を聞くことも多くなっている。彼らが無事に生き延びてくれることはベルケにとっても嬉しい。
そのために自分が出来る事は何でもする。空を飛んで出来るのならなおさらだった。
「敵機発見」
その時、一機の航空機が向かってくるのが分かった。
「ラスコー共和国の迎撃機だな」
遙か遠くを飛んでいるが、機体の形状から共和国の機体と判断した。
すぐさま機首を見つけた敵機に向けて急行する。
敵は偵察機を排除するために出撃しており、味方を守るために早急に撃退する必要がある。
高い高度にいたこともあり、ラスコー共和国機の前方上方、太陽の中から襲撃する。
相手も気がついたようだがもう遅かった。
ほぼ正面から突入したベルケは引き金を引き、機銃を発砲。偵察機のエンジンを破壊し、落としていった。
「一機撃墜」
ラスコー共和国軍の航空機を落としてベルケは満足した。
度々迎撃の航空機を上げてくるラスコー共和国軍だが、偵察機の後席に機関銃を付けただけの航空機であり、戦闘機の自分たちには敵わない。
機関銃のある後方からの襲撃を避けて、正面から突入して銃撃し、撃破するのが容易い。
再び高度を取ろうとした時、ふと地上を見ると地上部隊の兵士達が空に、ベルケに向かって手を振っていた。
「空の騎士か」
彼らの声はベルケの耳に届かなかったが、何を言っているかは理解できた。
要塞攻略中の兵士達がベルケの戦いを見て付けたあだ名を、ベルケは口ずさんだ。
地上から見ればベルケの戦い方は、正面から敵に挑んでいく騎士の槍試合に見えなくもない。
古より語り次がれる騎士物語のような煌びやかな戦場ではなく、戦友達が大砲と機関銃によって次々と消耗品のように消えていく現代戦を見て誰もが心を荒ませていった。
そんな彼等にとって古の騎士物語そのままの戦い方を上空で見せてくれるベルケは希望の光であり英雄に相応しかった。
「悪くは無いか」
軍上層部が第一軍の降伏で航空機の威力に目覚め、ベルケに航空部隊を編成するように命じたのは僥倖だった。
最初こそ試行錯誤だったが、何度も出撃し、多大な犠牲を払って敵の戦闘機を撃墜して回収し分析してまで情報収集に励み最強の戦闘機部隊を作り上げた。
軍上層部の無理解で機材は少ないが、自分たちの戦いを見て航空部隊へ志願する人間が増えている。
何とか、規模を拡大したいと考えているが、軍上層部は偵察機の拡大に熱心だ。
敵の偵察機に手ひどくやられたため、戦闘機の配備も認めてくれていたが、非常に少数で十数機からなる各飛行隊に二、三機しか戦闘機は配備されず、残りは偵察機だった。
ベルケの強硬な意見により戦闘機のみの飛行隊が編制され、敵の航空機を掃討することが出来たが、相手はあの忠弥であり、油断できない。
兎に角、味方の為にも上空の制空権を確保しようとベルケ率いる第一戦闘機隊一二機は要塞上空を飛んでいた。
「むっ」
その時、西の方から多数の飛行編隊がやって来るのが見えた。
中世からの交通の要所であるヴォージュに作られた要塞。
この町を巡って様々な勢力の間で幾度も争いが起きた。
そのためヴォージュに攻めてくる軍隊を撃退するため街は城郭都市となり、度重なる改築が行われている。
近代でも交通の要衝であることは変わらず、技術の進展に伴い要塞の強化が何度も行われている。
具体的には大砲による相互援護が可能な距離に堡塁を街を中心とした円周上に配置して、敵軍を迎え撃つ近代要塞となっていた。
街を攻略する時は勿論、迂回して進撃しようとすれば要塞の長距離砲の攻撃を受け、大損害を被ってしまうという寸法だ。
そのためハイデルベルク帝国軍は進軍上の障害であるヴォージュを攻略しラスコー共和国へ突入するべく要塞攻略に乗り出していた。
他にも理由はあった。
皇国や連合王国を撃破したとしても大陸の外の島国であり、降伏するとは考えにくい。
一方ラスコー共和国は西部戦線の連合軍の最大兵力を誇る上、緒戦で大損害を受けている。動員によって戦力を回復しているが、何時までも出来るとは限らない。
ここでラスコー共和国に大打撃を与えれば、講和への道も開けるとハイデルベルク帝国軍上層部は考えた。
ヴォージュ要塞にラスコー共和国軍を引きずり出しあわよくば中央突破して包囲殲滅しようと計画し実行していた。
そのため帝国軍は一個軍一五万を動員して要塞攻略戦を開始した。
軍固有の砲兵部隊が有する野戦砲三〇〇門に新たに配備された攻城砲部隊が指揮する重砲八〇〇門による猛烈な砲撃が日の出から午前中一杯行われ、要塞の前衛にある野戦陣地陣地を破壊。直後に歩兵部隊が突入して第一線を占領した。
一方のラスコー共和国軍は要塞の死守を決定。
増援を送り、陣地の奪回を目指し突撃を繰り返しており、帝国軍との間で壮絶な戦闘が各所で繰り広げられる事となった。
しかし、ラスコー軍は不利だった。
上空から偵察機により要塞に配備された部隊や大砲の正確な位置がハイデルベルク帝国軍に筒抜けだった。
偵察機を排除するべく戦闘機を飛ばしてもベルケ率いる戦闘機部隊が上空を飛んでいるために迎撃に向かったラスコー共和国軍の飛行機は返り討ちにあってしまった。
この日もベルケはヴォージュ要塞の上空を飛んでいた。
下を見ると味方の偵察機が、砲兵隊に向けて弾着観測をしている。
修正は見事なもので、要塞の砲台周辺へ次々と砲弾が命中していく。
そこへ歩兵達が突撃していく。
通常ならば、配備された機関銃の掃射で倒れてしまうのだが、予め上空から見つけ出した陣地を砲撃で潰しているので損害は少ない。
かくして勇敢で心強い味方は、敵陣地を制圧する事が出来る。
元々、陸軍の将校であるベルケは地上部隊の損害が少ないことを喜んだ。
幼年学校、士官学校の同期には歩兵もいて、当然この戦争に従軍している。
激戦が続き戦死を聞くことも多くなっている。彼らが無事に生き延びてくれることはベルケにとっても嬉しい。
そのために自分が出来る事は何でもする。空を飛んで出来るのならなおさらだった。
「敵機発見」
その時、一機の航空機が向かってくるのが分かった。
「ラスコー共和国の迎撃機だな」
遙か遠くを飛んでいるが、機体の形状から共和国の機体と判断した。
すぐさま機首を見つけた敵機に向けて急行する。
敵は偵察機を排除するために出撃しており、味方を守るために早急に撃退する必要がある。
高い高度にいたこともあり、ラスコー共和国機の前方上方、太陽の中から襲撃する。
相手も気がついたようだがもう遅かった。
ほぼ正面から突入したベルケは引き金を引き、機銃を発砲。偵察機のエンジンを破壊し、落としていった。
「一機撃墜」
ラスコー共和国軍の航空機を落としてベルケは満足した。
度々迎撃の航空機を上げてくるラスコー共和国軍だが、偵察機の後席に機関銃を付けただけの航空機であり、戦闘機の自分たちには敵わない。
機関銃のある後方からの襲撃を避けて、正面から突入して銃撃し、撃破するのが容易い。
再び高度を取ろうとした時、ふと地上を見ると地上部隊の兵士達が空に、ベルケに向かって手を振っていた。
「空の騎士か」
彼らの声はベルケの耳に届かなかったが、何を言っているかは理解できた。
要塞攻略中の兵士達がベルケの戦いを見て付けたあだ名を、ベルケは口ずさんだ。
地上から見ればベルケの戦い方は、正面から敵に挑んでいく騎士の槍試合に見えなくもない。
古より語り次がれる騎士物語のような煌びやかな戦場ではなく、戦友達が大砲と機関銃によって次々と消耗品のように消えていく現代戦を見て誰もが心を荒ませていった。
そんな彼等にとって古の騎士物語そのままの戦い方を上空で見せてくれるベルケは希望の光であり英雄に相応しかった。
「悪くは無いか」
軍上層部が第一軍の降伏で航空機の威力に目覚め、ベルケに航空部隊を編成するように命じたのは僥倖だった。
最初こそ試行錯誤だったが、何度も出撃し、多大な犠牲を払って敵の戦闘機を撃墜して回収し分析してまで情報収集に励み最強の戦闘機部隊を作り上げた。
軍上層部の無理解で機材は少ないが、自分たちの戦いを見て航空部隊へ志願する人間が増えている。
何とか、規模を拡大したいと考えているが、軍上層部は偵察機の拡大に熱心だ。
敵の偵察機に手ひどくやられたため、戦闘機の配備も認めてくれていたが、非常に少数で十数機からなる各飛行隊に二、三機しか戦闘機は配備されず、残りは偵察機だった。
ベルケの強硬な意見により戦闘機のみの飛行隊が編制され、敵の航空機を掃討することが出来たが、相手はあの忠弥であり、油断できない。
兎に角、味方の為にも上空の制空権を確保しようとベルケ率いる第一戦闘機隊一二機は要塞上空を飛んでいた。
「むっ」
その時、西の方から多数の飛行編隊がやって来るのが見えた。
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