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忠弥の反撃
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「司令、本国より気象報告です。天候は回復しつつあると報告が入っています」
「そうか」
後方飛行場の作戦指揮所に入った忠弥は通信員の報告を受け満足した。
緯度三〇度から六〇度にかけての上空には偏西風が吹いている。そのため、天候は西から変わりやすい。
前線の西側にいる忠弥達連合国軍は帝国より早く気象の変化を知ることが出来る。
気象の知識と地の利を得ていた忠弥の作戦は既に始まっていた。
そして雨が降って双方作戦不能となる状況を利用して次の作戦に備えていた。
指揮所に作戦に参加する全ての飛行隊と中隊長達を集めたのも作戦の最終確認を行うためだ。
「各飛行隊の状況は?」
忠弥は副長である相原少佐に尋ねた。
「全飛行隊、準備完了。後方飛行場の飛行隊も作戦開始と同時に前方飛行場へ展開し作戦行動を起こします。前方飛行場の機体も全力出撃します。戦闘機隊と地上襲撃機隊は前線飛行場から襲撃出来るように調整しています」
「よし、飛行場の状況は?」
「悪天候ですが、工兵隊などの力を借りて滑走路、駐機場の破壊箇所の埋め立ては完了。雨が上がり次第、排水し出撃準備を整えるそうです」
「よし、補給は?」
「各飛行場への鉄道及び軽便鉄道の建設は工兵と砲兵の協力により完成しました。砲弾輸送用の軽便鉄道を奪われることに難癖を言っていましたが、認めさせました。燃料、弾薬、爆弾、予備の部品、操縦士と整備士への食料、水、嗜好品も搬入終了。少なくなれば後方から直ぐに補給します」
「よろしい。支援体制は?」
「要塞部隊から支援の了解は取り付けました。既に前線近くから予備隊を中心に前線飛行場への配備は完了。前方飛行場と後方飛行場も軍予備を回して貰い、配置に付いています。掩体壕の中で待機中です」
「よし」
準備が完成したことに忠弥は満足した。
「作戦開始からどれだけ短時間で飛行機を上空に送り出し、何度も攻撃できるかが鍵だ。全員、作戦開始後、二四時間が勝負になる。気合いを引き締めてくれ。何か質問は?」
全員が黙ったままだった。
「宜しい。では作戦開始まで総員飛行隊で待機。開始と同時に作戦通りに出撃せよ。作戦開始後は計画通りに進めてくれ」
『はい!』
全員が大声で唱和した。
「まだ雨は止まないな」
掩体壕に入れられた兵士は愚痴った。開けられた窓の蓋を開けて外を見るが雨が激しく降っているだけだ。
彼は不満だった。クタクタで寝ていたところで起こされて掩蔽壕で待機する事になったからだ。
「しかし帝国の連中を倒すはずなのにこんな後方にいて良いのか」
彼の不満はそれだけではない。
彼は徴兵されたばかりで前線に出ていったことがなかった。愛国心に燃えて徴兵を受け容れて仲間と共に軍服を着て、前線で勇敢に突撃すると漠然と思っていた。
だが、訓練中に送り込まれた先は飛行場。そこで、穴を埋める訓練と実践を行っているだけだ。
それも雨の中だ。
激しい雨の中ポンチョ一つで爆弾で作られた穴に入り込み水をかき出し、シャベルで土を入れて埋め、ローラーでならす。
それを雨の中、一日中だ。
しかも泥でめり込む部分は土をかけてやり直し。
そんな事を雨の中、ずっと続けていた。
こんなことをして勝てるのかという、疑問がよぎっていた。
「他の仲間は要塞を守るために前線で戦っているのに」
その姿を古参の下士官は、苦笑いを浮かべながら聞いていた。自分にもそんな時期が合ったと。
初期の要塞戦に参加して仲間の多くが殺された砲撃で吹き飛ばされたり掩蔽壕ごと埋まったり。運良く生き残っても帝国軍との白兵戦で傷ついていった。
部隊が消耗して後方へ下げられた時、下士官が生き残っていたのは奇跡だった。その奇跡の付属品として下士官へ昇進し、配属された新兵を任された。
多少現実を見てきたため、彼は現状がどれほど幸運であるか知っているし、新兵のぼやきは分かる。そして現実を見れば新兵も自分の様になるだろうと考えていた。運良く生き残ればの話だが。
その前に戦争が終わってくれれば良いとも思っていた。
「こんな所で俺たちが働いて役に立つんですかね」
「上官に言われたことを遂行するまでだ」
新兵に聞かれて下士官は答えた。命令されてやって来ている。
それに効果があるかどうかは、上官が決める事だ。
だが今回の作戦では協力する航空部隊が勝ってくれれば帝国軍に大打撃を与えられると聞いている。
それなら飛行場で航空隊を支えるくらいは苦ではなかった。
「うん? 雨が弱まってきましたね」
新兵の言った通り、雨が弱まってきた。
「そうか」
後方飛行場の作戦指揮所に入った忠弥は通信員の報告を受け満足した。
緯度三〇度から六〇度にかけての上空には偏西風が吹いている。そのため、天候は西から変わりやすい。
前線の西側にいる忠弥達連合国軍は帝国より早く気象の変化を知ることが出来る。
気象の知識と地の利を得ていた忠弥の作戦は既に始まっていた。
そして雨が降って双方作戦不能となる状況を利用して次の作戦に備えていた。
指揮所に作戦に参加する全ての飛行隊と中隊長達を集めたのも作戦の最終確認を行うためだ。
「各飛行隊の状況は?」
忠弥は副長である相原少佐に尋ねた。
「全飛行隊、準備完了。後方飛行場の飛行隊も作戦開始と同時に前方飛行場へ展開し作戦行動を起こします。前方飛行場の機体も全力出撃します。戦闘機隊と地上襲撃機隊は前線飛行場から襲撃出来るように調整しています」
「よし、飛行場の状況は?」
「悪天候ですが、工兵隊などの力を借りて滑走路、駐機場の破壊箇所の埋め立ては完了。雨が上がり次第、排水し出撃準備を整えるそうです」
「よし、補給は?」
「各飛行場への鉄道及び軽便鉄道の建設は工兵と砲兵の協力により完成しました。砲弾輸送用の軽便鉄道を奪われることに難癖を言っていましたが、認めさせました。燃料、弾薬、爆弾、予備の部品、操縦士と整備士への食料、水、嗜好品も搬入終了。少なくなれば後方から直ぐに補給します」
「よろしい。支援体制は?」
「要塞部隊から支援の了解は取り付けました。既に前線近くから予備隊を中心に前線飛行場への配備は完了。前方飛行場と後方飛行場も軍予備を回して貰い、配置に付いています。掩体壕の中で待機中です」
「よし」
準備が完成したことに忠弥は満足した。
「作戦開始からどれだけ短時間で飛行機を上空に送り出し、何度も攻撃できるかが鍵だ。全員、作戦開始後、二四時間が勝負になる。気合いを引き締めてくれ。何か質問は?」
全員が黙ったままだった。
「宜しい。では作戦開始まで総員飛行隊で待機。開始と同時に作戦通りに出撃せよ。作戦開始後は計画通りに進めてくれ」
『はい!』
全員が大声で唱和した。
「まだ雨は止まないな」
掩体壕に入れられた兵士は愚痴った。開けられた窓の蓋を開けて外を見るが雨が激しく降っているだけだ。
彼は不満だった。クタクタで寝ていたところで起こされて掩蔽壕で待機する事になったからだ。
「しかし帝国の連中を倒すはずなのにこんな後方にいて良いのか」
彼の不満はそれだけではない。
彼は徴兵されたばかりで前線に出ていったことがなかった。愛国心に燃えて徴兵を受け容れて仲間と共に軍服を着て、前線で勇敢に突撃すると漠然と思っていた。
だが、訓練中に送り込まれた先は飛行場。そこで、穴を埋める訓練と実践を行っているだけだ。
それも雨の中だ。
激しい雨の中ポンチョ一つで爆弾で作られた穴に入り込み水をかき出し、シャベルで土を入れて埋め、ローラーでならす。
それを雨の中、一日中だ。
しかも泥でめり込む部分は土をかけてやり直し。
そんな事を雨の中、ずっと続けていた。
こんなことをして勝てるのかという、疑問がよぎっていた。
「他の仲間は要塞を守るために前線で戦っているのに」
その姿を古参の下士官は、苦笑いを浮かべながら聞いていた。自分にもそんな時期が合ったと。
初期の要塞戦に参加して仲間の多くが殺された砲撃で吹き飛ばされたり掩蔽壕ごと埋まったり。運良く生き残っても帝国軍との白兵戦で傷ついていった。
部隊が消耗して後方へ下げられた時、下士官が生き残っていたのは奇跡だった。その奇跡の付属品として下士官へ昇進し、配属された新兵を任された。
多少現実を見てきたため、彼は現状がどれほど幸運であるか知っているし、新兵のぼやきは分かる。そして現実を見れば新兵も自分の様になるだろうと考えていた。運良く生き残ればの話だが。
その前に戦争が終わってくれれば良いとも思っていた。
「こんな所で俺たちが働いて役に立つんですかね」
「上官に言われたことを遂行するまでだ」
新兵に聞かれて下士官は答えた。命令されてやって来ている。
それに効果があるかどうかは、上官が決める事だ。
だが今回の作戦では協力する航空部隊が勝ってくれれば帝国軍に大打撃を与えられると聞いている。
それなら飛行場で航空隊を支えるくらいは苦ではなかった。
「うん? 雨が弱まってきましたね」
新兵の言った通り、雨が弱まってきた。
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