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潜水艦
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忠弥の攻撃により基地が破壊された帝国軍は、残った飛行船を緊急離陸させ、避難させた。
だが、一方的に攻撃されたことを潔しとしない飛行船はこしゃくな水上機とその仲間を見つけて仕留めるべく、洋上へ敵を探しに出ていった。
そのうちの一隻が忠弥達の潜水艦に接触したのだ。
「艦長! どうしますか!」
乗員に動揺が走る。
潜水艦には六門の魚雷発射管と大砲が一門しかない。
どれも水上攻撃用で飛行船を狙うことは出来ない。
空から攻撃されることを想定していないため、対空機関銃などない。
潜水艦に飛行船への攻撃など出来なかった。
「手を振って!」
その時忠弥は叫び、飛行船に向かって手を振った。
「何でですか!」
「手を振って味方だと思わせるんですよ。攻撃させないようにすれば良い」
「なるほど! おい、総員! 飛行船に向かって手を振るんだ!」
甲板に上がっていた乗員が飛行船に向かって手を振る。
巨大な船体が潜水艦の上空一杯に広がり、その圧迫感のため乗員に緊張が走る。
接近してきた飛行船だが、爆弾庫を開けること無く、ゴンドラの銃座も銃口を向けることも無く飛び去ろうとした。
不時着した味方の飛行機の乗員を潜水艦が引き上げていると思い込み上空を通過しようとした。
しかし、そのとき不時着した水上機の自爆装置が作動。
巨大な水柱を上げてしまった。
気が付かれたか、と一同は不安になる。
「急速潜航!」
艦長が大声で命令すると乗員は大急ぎで艦橋のハッチに飛び込む。
忠弥達もハッチのはしごを駆け下り、艦内へ。
次々と乗員が滑り込む間にも潜水艦はベントを解放し海水を取り込み潜航を始め、艦首から海面下へ入り込む。
最後に先任士官がハッチを塞ぎ、ハンドルを回してロックし、潜水艦は完全に海の中に入った。
「ウェルカムボート、ミスター・二宮、アンド、ミス・島津。歓迎します。本艦はあなた方のおかげで助かりましたし、王国は救われました。国王陛下の艦を預かる者として、陛下の代理として感謝申し上げます」
「ありがとうございます」
互いにずぶ濡れの状態で忠弥と艦長は挨拶を交わした。
「とはいう物の、出来たばかりの艦ですし、潜水艦というものは濡れているものでして」
海中という空間を進む潜水艦は密閉されており潜航中の換気は不可能。
そのため湿度が上がり、ほぼ百パーセントに近く、結露しやすく濡れやすい。
「お気になさらず、飛行機乗りも油まみれですし」
航空用エンジンの出来がよろしくなくオイル漏れが日常茶飯事で、顔やゴーグルにオイルが付きやすい。
パイロットが白いマフラーをしているのは、お洒落ではなく、首をよく動かすため、擦れるのを防止するためと、飛んできて付いてしまったオイルを拭うための実用品だ。
「ははは、そう言って貰えると嬉しいですね。どうぞ、お部屋を用意しています。先任士官室を空けさせて用意させております」
艦長室はあるが、海の慣習として船の最高権力者である艦長は直接の上官以外に艦長室を譲る事はない。例え、国王陛下が乗艦しても艦長室を渡すことはない。
それでも譲れと迫れば慣習を破る不届き者として、追い出されるだろう。
飛行機と同じく新しい技術である潜水艦だが古よりの慣習は付いてくるのだ。
「感謝します」
それでも狭い艦内で個室を与えられるのは嬉しかった。
「昴を案内してやってください。私は士官室で皆さんと一緒に居ます」
さすがに女性の昴と一緒に居ることは出来ない。
飛行機馬鹿の忠弥でも、その程度の配慮はする。
「待ちなさい、一緒に入りなさい」
だが昴は拒絶し、同じ部屋に入るように命じた。
「いや、拙いだろう」
「何かと無茶をする忠弥は、つきっきりで見ていないとダメだだからよ」
「空の上だけだよ。海の中を進む潜水艦の中で何も出来ないよ」
「どうだか。潜水艦から発進できる飛行機を作り出しそうよ」
「それも面白いからやってみたいんだよね」
「ほらいわんこっちゃない。そうやって何処でも飛行機と関連付けて妄想するんだから。兎に角、その濡れた状態を何とかするから、部屋に行くわよ」
「って、僕の方が上官なんだけどな」
「濡れた状態のままだと部下が恥ずかしく思うので身だしなみをしっかりしてください」
「……はい」
忠弥は昴の命令に従い、あてがわれた部屋に入った。
その直後は裸にヒン向きタオルで拭おうとする昴と拒否しようとする忠弥のやりとりが狭い潜水艦の中で響いたが、二人の名誉のために乗員達は口を閉ざした。
潜水艦の中では乗員達は救国の英雄の乗艦と、乗艦時の機知とコミカルなやりとりが好評で二人は快く迎えられた。
特に艦長は潜水艦の地位向上のための方策を色々考えており、忠弥の潜水艦から飛行機を発進させるというアイディアに興味津々であった。
忠弥と艦長は互いの専門知識を持ち出し、アイディアを実現するための艦の設計を行い始めた。
それがのちに凄い事になるのだが、未来の話だ。
様々なエピソードはあったが王国本土防空作戦は成功した。
飛行船基地、とくに格納庫とエンジン整備所が破壊された影響は大きく出撃に支障を来すようになった。
それ以上に、攻撃されたことが衝撃であり、飛行船の安全の為に内陸へ避難。防備態勢が整うまで使用は中止になった。
その準備の為に本土爆撃は暫く中止となった。
帝国が爆撃中断している間に王国は防空体制を整え、爆撃が再開されても返り討ちにするだけの準備を整えた。
こうして王国本土は平穏が保たれることになる。
だが、戦争は未だに続いており、忠弥達には新たな戦場が待っていた。
だが、一方的に攻撃されたことを潔しとしない飛行船はこしゃくな水上機とその仲間を見つけて仕留めるべく、洋上へ敵を探しに出ていった。
そのうちの一隻が忠弥達の潜水艦に接触したのだ。
「艦長! どうしますか!」
乗員に動揺が走る。
潜水艦には六門の魚雷発射管と大砲が一門しかない。
どれも水上攻撃用で飛行船を狙うことは出来ない。
空から攻撃されることを想定していないため、対空機関銃などない。
潜水艦に飛行船への攻撃など出来なかった。
「手を振って!」
その時忠弥は叫び、飛行船に向かって手を振った。
「何でですか!」
「手を振って味方だと思わせるんですよ。攻撃させないようにすれば良い」
「なるほど! おい、総員! 飛行船に向かって手を振るんだ!」
甲板に上がっていた乗員が飛行船に向かって手を振る。
巨大な船体が潜水艦の上空一杯に広がり、その圧迫感のため乗員に緊張が走る。
接近してきた飛行船だが、爆弾庫を開けること無く、ゴンドラの銃座も銃口を向けることも無く飛び去ろうとした。
不時着した味方の飛行機の乗員を潜水艦が引き上げていると思い込み上空を通過しようとした。
しかし、そのとき不時着した水上機の自爆装置が作動。
巨大な水柱を上げてしまった。
気が付かれたか、と一同は不安になる。
「急速潜航!」
艦長が大声で命令すると乗員は大急ぎで艦橋のハッチに飛び込む。
忠弥達もハッチのはしごを駆け下り、艦内へ。
次々と乗員が滑り込む間にも潜水艦はベントを解放し海水を取り込み潜航を始め、艦首から海面下へ入り込む。
最後に先任士官がハッチを塞ぎ、ハンドルを回してロックし、潜水艦は完全に海の中に入った。
「ウェルカムボート、ミスター・二宮、アンド、ミス・島津。歓迎します。本艦はあなた方のおかげで助かりましたし、王国は救われました。国王陛下の艦を預かる者として、陛下の代理として感謝申し上げます」
「ありがとうございます」
互いにずぶ濡れの状態で忠弥と艦長は挨拶を交わした。
「とはいう物の、出来たばかりの艦ですし、潜水艦というものは濡れているものでして」
海中という空間を進む潜水艦は密閉されており潜航中の換気は不可能。
そのため湿度が上がり、ほぼ百パーセントに近く、結露しやすく濡れやすい。
「お気になさらず、飛行機乗りも油まみれですし」
航空用エンジンの出来がよろしくなくオイル漏れが日常茶飯事で、顔やゴーグルにオイルが付きやすい。
パイロットが白いマフラーをしているのは、お洒落ではなく、首をよく動かすため、擦れるのを防止するためと、飛んできて付いてしまったオイルを拭うための実用品だ。
「ははは、そう言って貰えると嬉しいですね。どうぞ、お部屋を用意しています。先任士官室を空けさせて用意させております」
艦長室はあるが、海の慣習として船の最高権力者である艦長は直接の上官以外に艦長室を譲る事はない。例え、国王陛下が乗艦しても艦長室を渡すことはない。
それでも譲れと迫れば慣習を破る不届き者として、追い出されるだろう。
飛行機と同じく新しい技術である潜水艦だが古よりの慣習は付いてくるのだ。
「感謝します」
それでも狭い艦内で個室を与えられるのは嬉しかった。
「昴を案内してやってください。私は士官室で皆さんと一緒に居ます」
さすがに女性の昴と一緒に居ることは出来ない。
飛行機馬鹿の忠弥でも、その程度の配慮はする。
「待ちなさい、一緒に入りなさい」
だが昴は拒絶し、同じ部屋に入るように命じた。
「いや、拙いだろう」
「何かと無茶をする忠弥は、つきっきりで見ていないとダメだだからよ」
「空の上だけだよ。海の中を進む潜水艦の中で何も出来ないよ」
「どうだか。潜水艦から発進できる飛行機を作り出しそうよ」
「それも面白いからやってみたいんだよね」
「ほらいわんこっちゃない。そうやって何処でも飛行機と関連付けて妄想するんだから。兎に角、その濡れた状態を何とかするから、部屋に行くわよ」
「って、僕の方が上官なんだけどな」
「濡れた状態のままだと部下が恥ずかしく思うので身だしなみをしっかりしてください」
「……はい」
忠弥は昴の命令に従い、あてがわれた部屋に入った。
その直後は裸にヒン向きタオルで拭おうとする昴と拒否しようとする忠弥のやりとりが狭い潜水艦の中で響いたが、二人の名誉のために乗員達は口を閉ざした。
潜水艦の中では乗員達は救国の英雄の乗艦と、乗艦時の機知とコミカルなやりとりが好評で二人は快く迎えられた。
特に艦長は潜水艦の地位向上のための方策を色々考えており、忠弥の潜水艦から飛行機を発進させるというアイディアに興味津々であった。
忠弥と艦長は互いの専門知識を持ち出し、アイディアを実現するための艦の設計を行い始めた。
それがのちに凄い事になるのだが、未来の話だ。
様々なエピソードはあったが王国本土防空作戦は成功した。
飛行船基地、とくに格納庫とエンジン整備所が破壊された影響は大きく出撃に支障を来すようになった。
それ以上に、攻撃されたことが衝撃であり、飛行船の安全の為に内陸へ避難。防備態勢が整うまで使用は中止になった。
その準備の為に本土爆撃は暫く中止となった。
帝国が爆撃中断している間に王国は防空体制を整え、爆撃が再開されても返り討ちにするだけの準備を整えた。
こうして王国本土は平穏が保たれることになる。
だが、戦争は未だに続いており、忠弥達には新たな戦場が待っていた。
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