龍馬の息子 知識チートで海援隊と共に明治を駆け抜け日露戦争を楽勝にする!

葉山宗次郎

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第一部 日露開戦編

坂本龍馬と日韓議定書

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「何時此方へ」
「先ほどじゃ。蒸気タービンを積んだ、いろは丸はこじゃん速いのう。仁川から円島まであっちゅうまじゃ。ああ、そう、堅苦しい挨拶なぞするな。親子の間にそんなモノ必要ないからのう」

 海龍商会総帥であり、鯉之助の父親、坂本龍馬が手を振り笑いながら言った。
  鯉之助と秋山は、敬礼を下ろした。

「よう戦ったのう」
「全ては総帥のお陰です」
「謙遜するな。お主の戦いがなければ、此方も上手くはいかなかった。大した息子じゃ。時折本当に息子か信じられないことがある」
「はは、ありがとうございます」

 褒める龍馬がテーブルの上のスコッチを見ていたので、鯉之助は仕方なく、空いているグラスを持つと酒を注ぎ込み渡した。
 受け取った龍馬は香りを楽しみつつ、一気に飲み干した。

「うーん、さすが大英帝国のスコッチ。良い味じゃのう」
「それで、首尾の方は?」
「万全じゃ。大韓帝国は、日本に助けを求めてきた。ロシアの脅威に対して国を守って欲しいと言ってきておる。我らはそれを大義名分として半島各地に進出する」
「そうでしょうね」

 海援隊の上陸支援を受けた陸軍第一二師団はソウルへ突入、朝鮮国王を確保した。
 <露館播遷>の再来、ロシア公使館へ逃げ込むのを防ぐためだ。

「ロシア公使達は? 公使館警備の兵隊は?」

 大韓帝国は独立国であるため各国が公使館を置いている。
 ロシアも同じで公使館を守る警備兵六七名が駐留している。
 彼らが留まるとなれば、日本兵ろのトラブルが懸念されるし、大韓帝国へも影響する。
 万が一大韓帝国皇帝がロシア公使館に再び逃げ込み籠城されたら、日本の半島進出の大義名分が無くなり、国際的に危うい立場になって仕舞う。
 むしろロシアに日本を排除するよう依頼することさえ考えられる。
 大国ロシアを相手に戦う今、国際的な支持、朝鮮半島へ駐留する切り札を失うのは日本にとって危険すぎる。
 そんな不安を見透かした龍馬はにやっと笑いながら言う。

「大丈夫じゃ。ロシア公使館の連中は仁川でワリヤーグが沈んだことを知って仰天し、さらにロシア太平洋艦隊が大打撃を受けて旅順に逃げ込んだことが伝わると戦意を喪失して逃げ出したわ。丁重に送り届けてやったから今頃、フランスの巡洋艦パスカルで芝罘に向かっているころじゃ」

 それを聞いて鯉之助は安心した。
 だが、もう一つ懸念があった。

「それで? 大韓帝国との議定書は?」

 鯉之助は今後の日韓関係を決める日韓議定書がどうなっているか気になり尋ねる。
 すると、龍馬は笑みを深めて言った。

「大丈夫じゃ。頼りにしていたロシアが逃げ出したしのう。それに下関と門司で待機している第一軍が仁川や釜山から送られてくると知った朝鮮王国は仰天、議定書の締結を了承した」
「原文通りですか?」
「原文通りだ」

 日韓議定書とは日露戦争において中立を宣言した大韓帝国を日本の勢力下に入れる為に結んだ議定書だ。
 内容は

一.施政忠告権
 韓国政府はその施政に関して日本政府の忠告を受け入れること
二.韓国皇室の安全保障
 韓国の皇室の安寧を日本は守る
三.韓国の独立保障
 日本政府は、韓国の独立および領土保全を確実に保障すること。
四.日本による韓国防衛義務
 第三国の侵攻もしくは内乱のため、韓国皇室の安寧もしくは領土保全に危険がある場合は日本は臨機に必要な処置を取らなければならない。
 そのために韓国政府は日本の行動を容易にするため十分便宜を与えること。
 日本政府はその目的の為に軍事上必要な地点を臨検収用できる。
五.条約遵守義務
 両国は相互の承認を経ずして、これより後、本協約の趣旨に反する協約を第三国と結んではならない。

 つまり

 日本は韓国の内政に関与する、韓国の皇室と領土を日本は守る。
 そのために韓国内の必要な地点を使えるし占有できる。
 そしてこの議定書に反する条約や協定を他国とは結べない。

 という意味だ。
 この議定書に基づき、日本は朝鮮半島各地へ展開。
 重要地点の確保を行うと共にロシア軍を各地で撃破している。

「開戦から僅かな間で認めさせるとはさすがです」

 史実ならば二月二三日にならなければ大韓帝国は合意しなかったのに、開戦から数日で認めさせたのは龍馬だからこそだった。
 海援隊のへの資金提供を渋っていた松平春嶽の時のように大韓帝国皇帝を上手い具合に日本の武力を背景に脅迫、もとい言いくるめて締結させたに違いない。

「帝国陸軍の威光だな」

 事実を見抜いた秋山が言う。
 単刀直入な物言いに龍馬は大笑いして事情を話す。

「はは、それもあるが大韓帝国にも話の通じる人間はいる。日本と手を結んでいた方が良いと考える者が多くての。彼らに協力を仰いだんじゃ」
「さすがです」

 鯉之助が追従するが龍馬は大笑いして言う。

「何を言っておるんじゃ。お主が朝鮮に鉄道を敷き、朝鮮の米を買うようにしていたからじゃろうが。金をくれる日本と手を切るなんぞ今の朝鮮には出来ん。そうなるよう日清の後仕組んでいたんじゃろうが」

 日清戦争の後、鯉之助の進言もあり大韓帝国に鉄道敷設を海龍商会が申し出た。
 表向きは大韓帝国の産業育成のためだったが、朝鮮半島を縦断し、中国へ迅速に兵力を展開できるようにしておくこと、そして、朝鮮半島と日本の結びつきを強くすることが目的だった。
 富国強兵を目指している日本は、工業に力を入れていたが、国内の労働力が不足していた。
 農業生産力が低いため、農村から人が居なくなると食料生産が減り、食べられない人が出るので工業に人を割けなかった。
 そこで朝鮮半島の米を買い、日本に輸入ことで、日本国内に潤沢な食料を供給し、工業へ力を入れられるようにしたのだ。
 史実において、太平洋戦争まで朝鮮半島を併合していた頃、安価な朝鮮の米を買い取り、食料を調達していた事を応用した方法だった。
 日本からも工業製品や、化学肥料などの化学製品を輸出することで朝鮮半島に顧客を手に入れると共に更なる結びつきを手に入れ強化した。
 日本と朝鮮の経済的結びつきは強くなり、朝鮮は金を手に入れるために、朝鮮の経済を維持するためにも日本との関係は切れない状況に陥った。
 日韓議定書が締結された理由は、そのような事情もあった。
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