架空戦記 旭日旗の元に

葉山宗次郎

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攻撃隊発進

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 一時間後、空母信濃の甲板上には多数の航空機が並んでいた。
 前方から戦闘機零戦改二四機、雷撃機天山一二機、総計三六機の攻撃隊である。
 他にも新たに偵察機彩雲が敵艦隊の接触と攻撃隊の誘導のために先発している。
 次々と艦載機が上がってゆき、上空で編隊を組んでいく。
 まず出て行ったのは零戦改一二機。彼らは制空隊と護衛隊であり、敵戦闘機を排除し味方の攻撃隊の突破口を切り開く。
 続いて発艦するのは同じく零戦改だが、装備が違う。
 彼らは、両翼にロケット弾を装備しており、低空から侵入し敵艦艇へロケット弾を撃ち込み甲板上の対空火器を破壊するのが役目だ。
 それまで花形だった爆撃機、急降下爆撃機はこの時にはもはやいない。
 敵の対空火器が発達した結果、敵に肉薄する急降下爆撃は自殺行為と同じ事になって仕舞ったためだ。
 今は前方へ兵器をいかに投射できるか、敵の対空火器の射程外からあるいは出来るだけ遠くから攻撃できる手段を必要とされていたのだ。
 最後に魚雷を積んだ攻撃機天山が発艦する。
 幾ら上部の対空火器を殲滅しても、敵艦艇を沈めるには浸水を起こす、水線下への攻撃が一番効果的だ。そのために雷撃機は装備から外されなかった。
 例え敵艦艇へ肉薄攻撃を行い多大な損害を受けても沈めるためには必要と判断されていた。
 勿論雷撃の前に、ロケット弾装備の零戦改で対空火器を吹き飛ばす手はずだが絶対ではない。
 それを理解してなお雷撃隊は飛び立った。
 南山も雷撃隊の一機として発進していった。
 
「長官、全機発進完了。攻撃隊空中発進しました」

 攻撃隊が発艦しても初めの機体から最後の機体まで二十分ほどかかる。
 それまで上空を旋回し編隊を組んで揃ってから敵艦隊に向けて発進していく。
 後方からさらに三つの編隊がやってきた。
 後方の第二から第四の三部隊から放たれた攻撃隊だ。
 一〇八機の集団が四つ、総計四三二機。
 帝国海軍史上最大の攻撃隊だった。

「角田中将より第二波準備の意見具申が出ておりますが?」

 通信員が長官に報告した。
 一回の攻撃で出せる航空機は飛行甲板の面積から全体の半分ほど。
 第二波攻撃隊を編成する余裕はある。
 闘将として名高い角田中将らしい意見だ。

「いやよしておこう」

 闘将と呼ばれる山口だが否定した。

「それでいいな佐久田」
「はい、今から用意して出撃させても敵艦隊に到達したときには完全な夜間攻撃になります」

 攻撃隊の準備に一時間。発艦しても遠距離のため到達するためにさらに二時間。
 敵艦隊に到達する時には完全な夜だろう。
 攻撃どころか接触さえ困難だ。
 攻撃が失敗する可能性が高く、分の悪い賭けだ

「彼らには明日活躍してもらいましょう」
「うん」

 山口は同意した。

「だが、明日は十二分に活躍してもらうぞ。今夜は一晩中最大戦速で敵艦隊に接近する」
「危険では?」
「敵を完全に撃滅する必要がある。反復攻撃を行って敵を殲滅する。距離が短いほうが攻撃しやすい」

 距離が短くなればそれだけ搭乗員の負担も減る。
 だが敵の攻撃を受けやすくもなる危険な賭けだった。

「全艦全速。敵艦隊に向かえ」

 威厳を正して山口は改めて命じた。
 しかしその目は敵艦隊に向かった味方攻撃隊の成果を気にしていた。



 攻撃隊は敵艦隊に向けて進撃を続けていた。
 すでに発艦から三時間。疲れも溜まってきた。
 日は傾きすでに後ろの水平線に隠れようとしている。
 南山は無言だが、焦っていた。
 敵艦隊も動いており、当初の位置から離れている可能性がある。
 攻撃隊が必ず敵艦隊に到達できるとは限らないのだ。
 先発して敵艦隊と接触している彩雲の誘導電波があるがいつまで出ているか。

「攻撃隊の電子彩雲が敵レーダーを探知しました」

 電信員が受け取った通信を報告する。
 電探や逆探を搭載した彩雲が攻撃隊のすぐ前を飛び敵のレーダーを警戒していた。
 敵のレーダー波を探知したなら敵がいるのは確実だ。

「攻撃隊指揮官より通信。レーダーを避けるためこれより高度を下ろせ」
「よし突っ込むぞ」

 南山は操縦桿を押して機体の高度を下げた。
 敵のレーダーに捕まらないようにするためだ。
 少なくとも捕まるのは偵察に出ている電子彩雲のみ。
 攻撃隊の影は米軍に捉えられていない。
 できる限り接近して四〇〇機の大編隊で敵艦隊を蹂躙できる。
 南山は攻撃の成功を確信し、にやりと笑ったが一瞬だった。
 自分が生き残れるかどうかは分からない。
 だが、敵に一撃を加える機会が生まれたのは紛れもない事実であり、笑いの欠片が口元に残っていた。
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