59 / 83
フィリピンを攻略する事情
しおりを挟む
「マリアナでの損害で艦隊の数、空母の数が足りません。この状況でフィリピンを攻略するのは難しいです。延期しては」
キングは損害を理由に作戦の延期を求めた。
「ウォッゼの空母群があるだろう」
反対するキングにルーズベルトは指摘した。
マリアナ攻撃前、ギルバードとクウェゼリンを攻略したとき、ウォッゼという環礁を米軍は占領した。
小さな島々だが、珊瑚礁に囲まれた広大な海域は大艦隊の停泊に最適であり、日本への作戦基地として理想的だった。
米海軍は、無数の支援艦艇、工作艦や移動可能な浮きドックを送り込み、後方拠点にしつつあった。
だが日本軍によるウォッゼ攻撃作戦――雄作戦により一度大損害を受けた。
空母への被害は少なかったが支援艦艇への被害は甚大であり、作戦スケジュールに遅れが出た。
直後に出撃拠点の一つとなったトラックをスプールアンス率いる空母機動部隊が壊滅させ、後顧の憂いを断った。
だが、マリアナ攻略中の奇襲を恐れて空母群の一つを休養と警戒のためにウォッゼ近辺に残していた。
「彼らを使えばマリアナは簡単だったのではないかね」
マリアナが陥落しないのはキングのやり方が手ぬるい、戦力を分散させたためとルーズベルトは考えており、叱責も兼ねて尋ねた。
「彼らは休養を必要としていました。そして日本軍の奇襲に警戒する必要もありました」
日本機動部隊の奇襲攻撃が多く、米軍機動部隊は太平洋をあちこち駆けずり回っている。
どの空母群も疲労しており、休養を与える必要があった。
「今回のマリアナ攻略で作戦参加艦艇に損害も出ており、休養と再編成が必要です」
「これは決定なのだ、作戦部長」
不機嫌そうにルーズベルトは言った。
ルーズベルト自身もマッカーサーを好んでいない。
大統領への野心を隠そうとしないマッカーサーが凱旋将軍として現れ、戦後に大統領候補として現れるのをルーズベルトは嫌がっている。
しかし、国民の意見を無視することは出来ない。
「10月までにフィリピンに上陸させよ」
次の選挙、11月に行われる大統領選挙への出馬宣言をルーズベルトはしている。
戦時大統領のため、勝利は確実視されているが、これまでの苦戦を考えると、有利とは言えない。
何としても、選挙の前に大きな戦果を上げたい。
国民が望んでいるフィリピン奪回を実現させ、選挙戦勝利を確実なものにしたがっていた。
例え、嫌いなマッカーサーに華を持たせることになろうともフィリピンを攻略する必要があった。
「台湾はダメですか」
大統領のマッカーサーへの嫌悪を嗅ぎ取ったキングは再び尋ねた。
フィリピンより台湾を攻略し中国へ攻め上がった方が日本の生命線を絶てると考えていた。
「だめだ。台湾は島が大きく、山も高い」
だがルーズベルトは否定した。
キングの台湾攻略は、ルーズベルトが指摘した欠点があり、上陸しても完全占領は難しいとされていた。
海軍内でも反対意見があり、その意見をルーズベルトが口にしたのはキングに反対する連中が、密かにルーズベルトへ報告をしたためだろうとキングは思った。
被害妄想が入っていたがキングの推測はあっていた。
ワンマンの傾向が強いキングに反発する人間は海軍内にも多いのだ。
「沖縄も遠すぎるだろう」
付け足すようにルーズベルト大統領は言った。
マリアナ作戦語の作戦案の一つに沖縄攻略も入っていたが、日本本土と台湾に近く、陸軍機の航空援護が見込めないことから案から外された。
「太平洋方面は十月までにフィリピンへ上陸せよ。これは大統領命令だ。海軍作戦部長」
「……了解しました」
キングはルーズベルト大統領の命令を了承した。
不満があっても命令には従わなければならない。それが軍人だからだ。
「では、次にヨーロッパ戦線だが」
話はヨーロッパ戦線に移った。
アメリカにとっての主戦線はヨーロッパであり日本は二義的な存在に過ぎない。
ドイツを屈服させるため、先ずはヨーロッパへ注力する事になっていた。
キングは損害を理由に作戦の延期を求めた。
「ウォッゼの空母群があるだろう」
反対するキングにルーズベルトは指摘した。
マリアナ攻撃前、ギルバードとクウェゼリンを攻略したとき、ウォッゼという環礁を米軍は占領した。
小さな島々だが、珊瑚礁に囲まれた広大な海域は大艦隊の停泊に最適であり、日本への作戦基地として理想的だった。
米海軍は、無数の支援艦艇、工作艦や移動可能な浮きドックを送り込み、後方拠点にしつつあった。
だが日本軍によるウォッゼ攻撃作戦――雄作戦により一度大損害を受けた。
空母への被害は少なかったが支援艦艇への被害は甚大であり、作戦スケジュールに遅れが出た。
直後に出撃拠点の一つとなったトラックをスプールアンス率いる空母機動部隊が壊滅させ、後顧の憂いを断った。
だが、マリアナ攻略中の奇襲を恐れて空母群の一つを休養と警戒のためにウォッゼ近辺に残していた。
「彼らを使えばマリアナは簡単だったのではないかね」
マリアナが陥落しないのはキングのやり方が手ぬるい、戦力を分散させたためとルーズベルトは考えており、叱責も兼ねて尋ねた。
「彼らは休養を必要としていました。そして日本軍の奇襲に警戒する必要もありました」
日本機動部隊の奇襲攻撃が多く、米軍機動部隊は太平洋をあちこち駆けずり回っている。
どの空母群も疲労しており、休養を与える必要があった。
「今回のマリアナ攻略で作戦参加艦艇に損害も出ており、休養と再編成が必要です」
「これは決定なのだ、作戦部長」
不機嫌そうにルーズベルトは言った。
ルーズベルト自身もマッカーサーを好んでいない。
大統領への野心を隠そうとしないマッカーサーが凱旋将軍として現れ、戦後に大統領候補として現れるのをルーズベルトは嫌がっている。
しかし、国民の意見を無視することは出来ない。
「10月までにフィリピンに上陸させよ」
次の選挙、11月に行われる大統領選挙への出馬宣言をルーズベルトはしている。
戦時大統領のため、勝利は確実視されているが、これまでの苦戦を考えると、有利とは言えない。
何としても、選挙の前に大きな戦果を上げたい。
国民が望んでいるフィリピン奪回を実現させ、選挙戦勝利を確実なものにしたがっていた。
例え、嫌いなマッカーサーに華を持たせることになろうともフィリピンを攻略する必要があった。
「台湾はダメですか」
大統領のマッカーサーへの嫌悪を嗅ぎ取ったキングは再び尋ねた。
フィリピンより台湾を攻略し中国へ攻め上がった方が日本の生命線を絶てると考えていた。
「だめだ。台湾は島が大きく、山も高い」
だがルーズベルトは否定した。
キングの台湾攻略は、ルーズベルトが指摘した欠点があり、上陸しても完全占領は難しいとされていた。
海軍内でも反対意見があり、その意見をルーズベルトが口にしたのはキングに反対する連中が、密かにルーズベルトへ報告をしたためだろうとキングは思った。
被害妄想が入っていたがキングの推測はあっていた。
ワンマンの傾向が強いキングに反発する人間は海軍内にも多いのだ。
「沖縄も遠すぎるだろう」
付け足すようにルーズベルト大統領は言った。
マリアナ作戦語の作戦案の一つに沖縄攻略も入っていたが、日本本土と台湾に近く、陸軍機の航空援護が見込めないことから案から外された。
「太平洋方面は十月までにフィリピンへ上陸せよ。これは大統領命令だ。海軍作戦部長」
「……了解しました」
キングはルーズベルト大統領の命令を了承した。
不満があっても命令には従わなければならない。それが軍人だからだ。
「では、次にヨーロッパ戦線だが」
話はヨーロッパ戦線に移った。
アメリカにとっての主戦線はヨーロッパであり日本は二義的な存在に過ぎない。
ドイツを屈服させるため、先ずはヨーロッパへ注力する事になっていた。
0
あなたにおすすめの小説
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
小日本帝国
ypaaaaaaa
歴史・時代
日露戦争で判定勝ちを得た日本は韓国などを併合することなく独立させ経済的な植民地とした。これは直接的な併合を主張した大日本主義の対局であるから小日本主義と呼称された。
大日本帝国ならぬ小日本帝国はこうして経済を盤石としてさらなる高みを目指していく…
戦線拡大が甚だしいですが、何卒!
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる