15 / 32
メイクレッスン
しおりを挟む朝、目覚まし時計が鳴るよりも早く——
「拓也! 早く起きて!!」
バサッ!
布団を勢いよく剥がされた沙織の体の拓也は、**まだ夢の中**だった。
「うう……寒い……」
「のんびり寝てる場合じゃないの! 私、今日も仕事でやらかしたくないんだから!」
拓也の体の沙織が、ベッドの横で腕を組みながら**ジト目**で見下ろしていた。
「あぁ……そうだったな……」
昨日、拓也の仕事をした沙織は、何度も上司やクライアントに迷惑をかけそうになった。その度に沙織の体の拓也がスマホでサポートし、なんとか乗り切ったものの……
**「明日はもう少しスムーズにやりたいの!!」**
ということで、早朝から**「システムエンジニア基礎講座」**が開かれることになったのだ。
「ったく……俺の仕事がどれだけ大変かわかっただろ……」
「わかったわよ! だからお願い、ちゃんと教えて!」
「はいはい……わかったから、とりあえずコーヒー飲ませて……」
☕ *☕* *☕*
——数十分後、リビングのテーブルにはノートPCを開いた沙織の体の拓也と、メモを取る拓也の体の沙織の姿があった。
「えーと、つまり……このコードをこうやって修正すればバグが直るの?」
「そう、でもエラーが出たら、ログをちゃんと読んで原因を探せよ。**あと、何でもすぐ再起動すれば直ると思うな。**」
「え……」
「お前、昨日三回もサーバー再起動しようとしただろ!」
「だって、再起動したら直るってよく言うじゃん!」
「それは家庭用のWi-Fiルーターの話だ!!」
「えぇぇ……エンジニアの世界って厳しい……」
自分の本業の苦労を知った沙織は、改めて拓也に尊敬の眼差しを向ける。
「まぁ、最初から全部理解しろとは言わないけど、**せめてエラーの原因を推測する癖をつけろよ。**」
「はいはい……エラー出たら、**とりあえず拓也にLINEする!**」
「まあ、それは仕方ないな!!」
💄 *💄* *💄*
「よし、じゃあ今度は私の番!」
仕事の基礎を学び終えた拓也の体の沙織は、ノートPCを閉じると同時に、ニヤリと笑った。
「……ん?」
「**お礼に、メイクレッスンしてあげる!**」
「はぁ!?」
「だって昨日、お風呂上がりに私が渡したスキンケア、**何一つ使ってなかったでしょ!?**」
「……」
「そもそもさ、**私の顔で適当なメイクして会社に行かれるの凄く嫌なんだけど!?**」
「……うぐっ」
確かに、拓也は最低限のベースメイクしかせず、**「まあこれでいいだろ」**と適当に出勤していた。
「今日からはちゃんと私の顔を私らしく見せて!」
「わ、わかったよ……」
⚡ *⚡* *⚡*
——そして、沙織の体の拓也は大人しく椅子に座らされ、拓也の体の沙織が**メイク道具を取り出す。**
「まずはスキンケアね! 化粧水と乳液、ちゃんとつけて!」
「え、これってどっちが先?」
「化粧水→乳液!! 逆にすると浸透しないから!!」
「なるほど……」
「はい、それから日焼け止め! 拓也のくせに**日焼け止めも塗らないとかありえない**から!」
「お、俺のくせにって……」
「ほら、ちゃんと馴染ませて!」
「うぅ……」
次々と進むメイクレッスン。
「ベースメイク完了! 次はアイメイクね!」
「えっ、まだやるの……?」
「当然! アイシャドウ塗って、ビューラーでまつ毛上げて、マスカラつけて……」
「まつ毛を上げる!? そんなのいる?」
「いるよ! 目力が変わるから!」
「ま、まじか……」
「はい、じっとしてて! まぶたをつまむから!」
「え、こわっ!」
「大丈夫、**痛くないから!** ほら、まつ毛くるん!」
「……」
「おおー! ほら、めっちゃ目が大きく見える!」
「え、まじで?」
鏡を見た沙織の体の拓也は、**確かに目の印象が変わっているのに驚いた。**
「お、おお……意外とすごいな……」
「でしょ?」
「でも……なんか俺、**完全に女子になっていってないか?**」
「当たり前でしょ? 女子なんだから!」
「うっ……」
「はい、最後にリップ! これで完成!」
✨ *✨* *✨*
「うわっ……」
鏡を見た沙織の体の拓也は、驚きのあまり息をのんだ。
「**……なんか、俺、すげぇ可愛いじゃん……**」
「でしょ!? 私の顔なんだから当然!」
「いや、でもこれ……」
「明日からこのメイクで出勤だからね!!」
「まじか!!?」
思わず崩れ落ちそうになる沙織の体の拓也だったが——
**こうして、「システムエンジニア講座 & メイクレッスン」**の朝は、無事に(?)終わったのだった。
—
0
あなたにおすすめの小説
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる