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廣瀬純七

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メイクレッスン

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朝、目覚まし時計が鳴るよりも早く——  

「拓也! 早く起きて!!」  

バサッ!  

布団を勢いよく剥がされた沙織の体の拓也は、**まだ夢の中**だった。  

「うう……寒い……」  

「のんびり寝てる場合じゃないの! 私、今日も仕事でやらかしたくないんだから!」  

拓也の体の沙織が、ベッドの横で腕を組みながら**ジト目**で見下ろしていた。  

「あぁ……そうだったな……」  

昨日、拓也の仕事をした沙織は、何度も上司やクライアントに迷惑をかけそうになった。その度に沙織の体の拓也がスマホでサポートし、なんとか乗り切ったものの……  

**「明日はもう少しスムーズにやりたいの!!」**  

ということで、早朝から**「システムエンジニア基礎講座」**が開かれることになったのだ。  

「ったく……俺の仕事がどれだけ大変かわかっただろ……」  

「わかったわよ! だからお願い、ちゃんと教えて!」  

「はいはい……わかったから、とりあえずコーヒー飲ませて……」  

☕ *☕* *☕*  

——数十分後、リビングのテーブルにはノートPCを開いた沙織の体の拓也と、メモを取る拓也の体の沙織の姿があった。  

「えーと、つまり……このコードをこうやって修正すればバグが直るの?」  

「そう、でもエラーが出たら、ログをちゃんと読んで原因を探せよ。**あと、何でもすぐ再起動すれば直ると思うな。**」  

「え……」  

「お前、昨日三回もサーバー再起動しようとしただろ!」  

「だって、再起動したら直るってよく言うじゃん!」  

「それは家庭用のWi-Fiルーターの話だ!!」  

「えぇぇ……エンジニアの世界って厳しい……」  

自分の本業の苦労を知った沙織は、改めて拓也に尊敬の眼差しを向ける。  

「まぁ、最初から全部理解しろとは言わないけど、**せめてエラーの原因を推測する癖をつけろよ。**」  

「はいはい……エラー出たら、**とりあえず拓也にLINEする!**」  

「まあ、それは仕方ないな!!」  

💄 *💄* *💄*  

「よし、じゃあ今度は私の番!」  

仕事の基礎を学び終えた拓也の体の沙織は、ノートPCを閉じると同時に、ニヤリと笑った。  

「……ん?」  

「**お礼に、メイクレッスンしてあげる!**」  

「はぁ!?」  

「だって昨日、お風呂上がりに私が渡したスキンケア、**何一つ使ってなかったでしょ!?**」  

「……」  

「そもそもさ、**私の顔で適当なメイクして会社に行かれるの凄く嫌なんだけど!?**」  

「……うぐっ」  

確かに、拓也は最低限のベースメイクしかせず、**「まあこれでいいだろ」**と適当に出勤していた。  

「今日からはちゃんと私の顔を私らしく見せて!」  

「わ、わかったよ……」  

⚡ *⚡* *⚡*  

——そして、沙織の体の拓也は大人しく椅子に座らされ、拓也の体の沙織が**メイク道具を取り出す。**  

「まずはスキンケアね! 化粧水と乳液、ちゃんとつけて!」  

「え、これってどっちが先?」  

「化粧水→乳液!! 逆にすると浸透しないから!!」  

「なるほど……」  

「はい、それから日焼け止め! 拓也のくせに**日焼け止めも塗らないとかありえない**から!」  

「お、俺のくせにって……」  

「ほら、ちゃんと馴染ませて!」  

「うぅ……」  

次々と進むメイクレッスン。  

「ベースメイク完了! 次はアイメイクね!」  

「えっ、まだやるの……?」  

「当然! アイシャドウ塗って、ビューラーでまつ毛上げて、マスカラつけて……」  

「まつ毛を上げる!? そんなのいる?」  

「いるよ! 目力が変わるから!」  

「ま、まじか……」  

「はい、じっとしてて! まぶたをつまむから!」  

「え、こわっ!」  

「大丈夫、**痛くないから!** ほら、まつ毛くるん!」  

「……」  

「おおー! ほら、めっちゃ目が大きく見える!」  

「え、まじで?」  

鏡を見た沙織の体の拓也は、**確かに目の印象が変わっているのに驚いた。**  

「お、おお……意外とすごいな……」  

「でしょ?」  

「でも……なんか俺、**完全に女子になっていってないか?**」  

「当たり前でしょ? 女子なんだから!」  

「うっ……」  

「はい、最後にリップ! これで完成!」  

✨ *✨* *✨*  

「うわっ……」  

鏡を見た沙織の体の拓也は、驚きのあまり息をのんだ。  

「**……なんか、俺、すげぇ可愛いじゃん……**」  

「でしょ!? 私の顔なんだから当然!」  

「いや、でもこれ……」  

「明日からこのメイクで出勤だからね!!」  

「まじか!!?」  

思わず崩れ落ちそうになる沙織の体の拓也だったが——  

**こうして、「システムエンジニア講座 & メイクレッスン」**の朝は、無事に(?)終わったのだった。  

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