入れ替わりのモニター

廣瀬純七

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生理の二日目

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翌朝。  

沙織の体の拓也は、ベッドの中で微妙な寝ぼけ眼のまま、ぼんやりと天井を見つめていた。  
昨日から続く生理痛はまだ完全におさまらず、鈍い痛みが下腹部に残っている。  

(……昨日、生理休暇を取ったのは正解だったな)  

そう思いながら、ふと隣を見ると——**拓也の体の沙織が、スーツ姿でキビキビと出勤の準備を進めていた。**  

「……ん?」  

沙織の体の拓也が声を出すと、拓也の体の沙織がにこっと微笑みながら近づいてきた。  

「おはよう、調子はどう?」  

「うーん……まだちょっと重いけど、昨日よりはマシかな……」  

「そっか。でも無理しちゃダメだからね!」  

拓也の体の沙織はそう言うと、ネクタイをキュッと締め直しながら、さらに言葉を続けた。  

「……でね、今日は**私が自分の力で頑張ってみようと思うんだ!**」  

「え?」  

「今まではずっとスマホでサポートしてもらってたけど……このままじゃ、いつまで経っても拓也の仕事を一人でできるようにならないでしょ?」  

そう言われて、沙織の体の拓也は少し驚いた。  

(確かに、ここ数日は俺がスマホで逐一指示を出してたけど……)  

「……大丈夫なのか?」  

「もちろん! でも、もし本当に困ったら、そのときはちゃんと連絡するね!」  

拓也の体の沙織は、まっすぐな瞳でそう言い切った。  
その表情には、不安よりもむしろ、**やってやるぞ!** という決意が感じられる。  

(……こいつ、なんだかんだで根性あるよな)  

沙織の体の拓也は、少し感心しながらも、まだ心配がぬぐえない。  

「無理するなよ? お前、あんまり無茶するタイプじゃないんだから」  

「ふふ、だからこそ、今は挑戦しなきゃって思ってるの!」  

そう言って、拓也の体の沙織は腕時計をちらっと見た。  

「じゃあ、そろそろ行くね!」  

「……うん。気をつけて」  

「拓也はちゃんと休んでてね! お腹冷やしちゃダメだから!」  

沙織の体の拓也に向かって、にっこりと笑いながら拓也の体の沙織は玄関へ向かう。  

——そして、玄関の扉を開ける直前に、くるりと振り返って、ひとこと。  

「……帰ったら、頑張った報告、いっぱい聞いてね!」  

「……おう、楽しみにしてるよ!」  

拓也の体の沙織は、満足げに頷くと、そのまま意気揚々と出勤していった。  

沙織の体の拓也は、ひとつ息を吐きながら、布団にくるまりつつ思った。  

(……今日も安心してゆっくり休むか)  

外の世界で拓也の体の沙織が奮闘する一方で、沙織の体の拓也は、"生理休暇"の二日目を満喫することにしたのだった——。
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