バーチャル性転換システム

廣瀬純七

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異性の体験

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美由紀が「ニューフレームVR」の体験施設を訪れるのは、これで2回目だった。前回のパリ旅行があまりにも現実的で魅力的だったため、今度はもう少し違ったプログラムを試してみたいという好奇心が湧いていた。

スタッフに案内され、カプセルに入ると、システムのアシスタントが軽やかな声で出迎えた。

「ようこそ、ニューフレームVRへ。本日はどのような体験をご希望ですか?」  

美由紀はメニューをスクロールしていると、目を引くオプションが目に入った。  

「『体験者の性別を変更する』……?」  

そこには、「新しい自分を発見しよう」というコピーが添えられ、性別を自由に選べる設定が説明されていた。前回の幸一との会話を思い出し、彼が「女性になれる」と言っていた意味がようやく腑に落ちる。

「男性になったら、どんな気持ちなんだろう……。」  

その興味は、自分では気づかなかった好奇心を刺激した。美由紀は迷わずそのオプションを選び、性別を「男性」に設定した。

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### 鏡の中の新しい自分

プログラムが始まり、意識がバーチャルな世界にシンクロすると、目の前に広がったのは近未来的な都会の風景だった。大きなビル群に囲まれた広場に立つ美由紀――いや、今は男性となった彼は、すぐに自分の姿の変化に気づいた。

「これが……私?」  

近くのショーウィンドウに映るのは、短い黒髪に引き締まった顔つきの青年だった。身長も高くなり、肩幅が広がっている。手を見つめると、指はしっかりとした男性的な形をしており、声を出すと低いトーンが耳に響いた。

「こんな感じなんだ……不思議だけど、面白い。」  

初めて感じる自分の体への違和感と、新鮮な感覚が入り混じり、彼はワクワクするような気持ちを覚えた。

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### 男性として過ごす日常

体験内容は「未来都市の日常生活」だった。美由紀は、男性として街を歩き回り、いくつかのタスクをこなすことになった。高層ビルの中にある職場で同僚と軽口を叩き、カフェで一人ランチを楽しむ。人々の反応が、普段の自分とは微妙に違うことに気づく。

「男性だと、周囲から見られる態度も少し違うのね……。」  

カフェで女性店員が彼にフレンドリーに話しかけてくるのを見て、少し驚いた。女性だったときはそこまで話しかけられることはなかった気がする。逆に、街中で何かトラブルが起きた際には、「男性だから助けるべき」という無言の期待を感じる場面もあった。

「こういうのが、幸一が言ってた『新しい自分』ってことなのかな。」  

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### 新たな視点

体験が進むにつれ、美由紀は性別の違いによって日常の見え方が変わることを実感していた。男性として過ごすことで、普段気づけなかった社会の側面や、人々の反応の微妙な違いに目が向いた。

「これが現実だと、どんな感じなんだろう……。」  

その問いは、彼女にとって重要な気づきとなった。性別が違えば、同じ状況でも受け取る感情や体験が変わる。現実では決して味わえないものを、このバーチャルな世界で試せることに感謝の念を抱いた。

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### 幸一にはまだ言えない

体験を終え、カプセルから出た美由紀は、またしても幸一には内緒でこれを試した自分に少し罪悪感を覚えた。それでも、男性として過ごした時間の新鮮さは、彼女の心に深く刻まれていた。

「今度は、幸一に話してみようかな……。」  

そう思いつつも、どのように切り出すべきか、頭の中でシミュレーションを繰り返す美由紀だった。

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