バーチャル性転換システム

廣瀬純七

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疎遠になりつつある現実

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幸一は仕事の昼休み、スマホを取り出し、恋人の美由紀にメッセージを送った。最近、美由紀と顔を合わせる機会がめっきり減り、会話もほとんどない。それが気になり、少しでもコミュニケーションを取ろうと努めていた。

**幸一:**  
「お疲れ様。最近どう?何かあったら話聞くよ。」  

送信ボタンを押してしばらく待つが、美由紀からの返信はすぐには来なかった。しびれを切らした幸一は、再びメッセージを送った。

**幸一:**  
「今度の土曜日、どこか一緒に出かけない?」  

ようやく数分後、美由紀からの返信が届いた。だが、その内容はどこか冷たかった。

**美由紀:**  
「ごめん、今は忙しいの。また今度ね。」  

---

### 幸一の戸惑い

画面に表示された短い返信を見て、幸一は肩を落とした。以前は美由紀の方から積極的に連絡をくれることが多かったのに、最近はこんな素っ気ないやり取りばかりだ。  

「忙しい……か。仕事が大変なのかな?」  

幸一はそう自分に言い聞かせようとしたが、胸の奥には違和感が残った。彼女の「忙しい」がどれほど本当なのか、あるいは単なる言い訳なのかを確かめる術もなかった。

その後も、何度か軽い話題を振るメッセージを送ってみたが、返事はどれも短く、話が広がることはなかった。

---

### 疑念と孤独

夜、自宅のソファでひとりくつろぎながら、幸一は再びスマホを手に取った。美由紀とのやり取りを見返してみるが、最近はどのメッセージにも温かさが感じられない。  

「前はあんなにいろいろ話してくれたのにな……。」  

そんな思いが浮かび、幸一は深いため息をついた。  

現実の世界での美由紀との距離が広がる中、幸一の心は自然とバーチャルな世界の美由紀との交流へと向かっていた。少なくとも、そちらの世界では自分の話を聞いてくれる相手がいる――その事実が、今の幸一にとって唯一の救いだった。  

---

### 美由紀の本心は?

一方で、現実の美由紀の態度には何か裏があるのかもしれない、とも思っていた。仕事が忙しいというのは本当なのか?それとも、彼女の心の中で何かが変わってしまったのか?  

幸一は直接問いただしたい衝動に駆られたが、下手に追及すれば彼女をさらに遠ざけてしまうかもしれない。それが怖くて、結局その夜も、何もできずに眠りについた。

---

### 余韻

幸一の心には、現実とバーチャルの間で揺れる複雑な感情が渦巻いていた。恋人の美由紀が素っ気ない理由を知りたい気持ちと、バーチャルな世界で得られる心地よい繋がりへの依存。そのバランスが崩れ始めていることに、幸一自身も気づいていた。

だが、その答えを探すためには、まだ彼は現実と向き合う覚悟ができていなかった。

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