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温泉旅行
しおりを挟むバーチャルな世界で出会った二人の「中村美由紀」は、すっかり仲良くなり、時間を見つけては一緒に過ごすようになっていた。ある日、公園のベンチでお茶を飲みながら話していると、美由紀(幸一)がふと思いついたように言った。
「ねえ、美由紀さん。せっかくだから、どこか旅行に行かない?」
「旅行?それ、楽しそうね!どこに行くの?」
「うーん……温泉なんてどうかな?バーチャルなら、現実ではなかなか行けないような素敵な場所も体験できるし。」
その提案に、もう一人の美由紀も目を輝かせた。
「いいわね!温泉なんて久しく行ってないから、楽しみ!」
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### 到着した温泉宿
二人が選んだのは、バーチャルな世界にしか存在しない幻想的な温泉宿だった。宿全体が和風建築で、周囲は紅葉に染まる山々に囲まれている。温泉の湯気が立ち上る情景は、まるで絵画のように美しかった。
「すごい……こんなところ、現実には絶対ないわよね。」
「そうね。でもバーチャルだからこそ、こういう非日常を楽しめるのかも。」
二人は宿のスタッフに案内され、広々とした和室に通された。部屋の窓からは、湯気が立ち昇る露天風呂と山々の絶景が一望できた。
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### 温泉でのひととき
夕食後、二人は湯浴み着を着て露天風呂に向かった。月明かりが湯面を照らし、湯気とともに幻想的な光景を作り出していた。
「すごいわね……本当に天国みたい。」
「うん、来てよかった。」
美由紀(幸一)は湯船に浸かりながら、もう一人の美由紀とこうして過ごしていることに、奇妙ながらも心地よい感覚を覚えていた。
「ねえ、美由紀さん。」
「なに?」
「私、こうしてあなたと一緒に過ごすのが本当に楽しいの。なんだか、昔からの友達みたいに感じるわ。」
もう一人の美由紀はその言葉に微笑み、湯船の中で少し近づいてきた。
「私もよ。あなたと一緒にいると、なんだか安心できるの。私たち、名前だけじゃなくて、性格も似てるのかもしれないわね。」
二人は笑い合いながら、お湯の温かさと静けさを楽しんだ。
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### 打ち明けられる想い
お風呂から上がり、湯上りの冷たい飲み物を飲みながら、もう一人の美由紀がふと真剣な表情になった。
「そういえば、あのプロポーズの話……その後どうしたの?」
美由紀(幸一)は少し驚きながらも、湯上りの赤らんだ頬を手で触れつつ答えた。
「まだ答えてないの。でも、あなたとこうして話していると、自分が何を大切にしたいのか少しずつ見えてきた気がする。」
もう一人の美由紀は優しい目で頷いた。
「それならよかった。どんな答えでも、あなたが幸せだって思える道を選んでね。」
二人の間には、言葉にならない静かな絆が生まれていた。
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### 夜空の下で
その夜、二人は星空を見ながら語り合った。バーチャルな世界ではあるものの、彼女たちにとってそれは本物の旅のように感じられていた。
「また、こんな旅行に行きましょうね。」
「ええ、もちろん。」
バーチャルな世界が生み出す特別な関係性の中で、二人は確かに現実では得られないような絆を築いていた。
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