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変化
しおりを挟む施術ベッドに横たわる真由美と健一。部屋の中は柔らかな音楽とアロマの香りで満たされ、どこか現実感の薄い空間だった。セラピストが準備を進める間、二人は並んでベッドに横になりながら、改めて会話を始めた。
「健一、もしこのまま私が完全に男っぽくなったら、どう思う?」真由美がぽつりと聞いた。
健一は少し考え込んでから、微笑みながら答えた。「どうかな…たぶん驚くとは思うけど、結局はお前が真由美であることには変わりないんだろ?俺も今の変化を嫌だと思ってないし。」
「それ、本当に?」真由美の声にはほんの少し不安が滲んでいた。
「本当だよ。ただ…お互いの変化がどこまで進むのか、想像もつかないけどな。」健一は冗談めかして笑った。「お前が俺より声が低くなったら、どう対応するか考えとかないと。」
その軽口に、真由美も思わず笑った。「じゃあ、健一が私より可愛くなったら、どうする?」
「それはそれで楽しむしかないな。なんならペアルックでもするか?」
二人はしばらく笑い合ったが、施術が始まると再び静けさが戻った。セラピストの手が滑らかに動き、二人の身体をほぐしながら、微妙な変化を進めていく。二人は目を閉じながら、これからどうなるのかをそれぞれ思い描いていた。
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その夜、施術を終えた二人は店を出た。外の空気は冷たく、日常に引き戻される感覚があったが、どこか気持ちが軽かった。
「どう?体の感じ、何か変わった?」真由美が尋ねた。
「うーん、少し柔らかくなった気がする。なんか肩の張りが取れたというか…あと、声が少し違う気がするんだよな。」健一は喉を触りながら言った。「お前は?」
「私も同じかな。なんか力がみなぎってる感じ。背筋がピンと伸びた気がするし、ちょっと男っぽくなったかも。」真由美は自分の声の低さに驚きつつも、どこか心地よさを感じていた。
「これからどうする?続けるのか、それともやめるのか…」
二人は少しの間、互いの顔を見つめ合った。そして、同時にうなずく。
「もう少しだけ、試してみるのも悪くないんじゃないか?」
二人は互いの変化を受け入れつつ、未知の道を進む覚悟を決めた。その先に待つのがどんな未来であろうとも、今はお互いの存在があれば乗り越えられると思えたからだ。
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