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美咲の疑問
しおりを挟む男子トイレを出た隆司の姿の美咲は、廊下を歩きながらふうっと息を吐いた。
「……はあ、なんだかあっけなかったわね」
ほんの数十秒。個室に入る必要もなく、立ったまま用を済ませられる。
水を流す音すら軽快で、まるで何事もなかったかのように終わってしまった。
(ちょっと待って……男って、何でこんなに簡単にできちゃうの!?)
驚きと同時に、妙な感情が胸の奥からこみ上げてくる。
昨日までの自分――美咲の身体では、トイレに行くたびにドアを閉め、鞄やスカートの裾を気にし、ストッキングや下着の扱いに四苦八苦していた。
(あの手間は一体なんだったのよ……! 神様、絶対男の味方してるでしょ!)
歩きながら、思わず眉をひそめる。
「女のトイレって、座らなきゃいけないし、服装によってはすごく大変なのよね。スカートの時なんて、もう面倒で仕方ないのに……」
その一方で、今の隆司の身体はどうだ。立ったまま、ほんの数秒で終了。
「ちょっとズルいわよね、これ。女の子の方ももっと簡単にできる仕組みだったらよかったのに」
小声でぶつぶつ言いながら、自分のネクタイを直す。
「神様って、やっぱり男贔屓なんじゃない? ……ほんと、世の中不公平だわ」
口ではそう言いつつも、足取りはどこか軽い。
初めて知った“男の便利さ”に、少し得意げな気分になっている自分に気づいて、思わず苦笑いした。
(ま、こういうことを体験できるのも入れ替わったおかげよね。せっかくだし、もうちょっと楽しませてもらおうかな)
美咲はそう心の中で呟きながら、自分のデスクへと戻っていった。
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