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吉田拓海
しおりを挟むある日、僕は奇妙なスマホを手に入れた。普通のスマホに見えるけれど、そのカメラには特殊な力が宿っていた。撮影した人物の姿になれるという、不思議な力だ。最初は冗談かと思ったが、試しに自撮りしてみると、まさかの展開が待っていた。
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#### 1. 驚きの朝
土曜日の朝、いつものように布団の中でスマホをいじっていた僕、吉田拓海(24歳)は、友達に見せるためにスマホで自撮りをした。その瞬間、世界がぐるりと回り、何かが変わった気がした。立ち上がると、目に映る自分の姿は…女性だった。
「えっ!?」
鏡の前に駆け寄り確認すると、髪は長く、肌は滑らか、そして胸元には…女性の体がある。僕は驚きと興奮が入り混じった感情に襲われた。昨日まで普通の男だった僕が、なぜか女性の姿になってしまったのだ。
これはあのスマホのせいだ、とすぐに気づいた。冗談半分で「もし女性になれたらどんな感じだろう」と考えていた自分を思い出し、半信半疑でカメラを向けた結果がこれだ。
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#### 2. 初めての女性の生活
まず最初に感じたのは、体の重心が変わったことだ。胸が少し重く感じ、腰のラインも違う。鏡の中には可愛い女性が立っているのに、中身は完全に僕。とりあえず、この体で一日を過ごしてみることにした。
まずはシャワーを浴びることにした。普段なら何気なく過ごす時間が、今日は違った。女性の体の感覚は新鮮で、全てが新しい発見だった。
次に、服選び。いつもなら無地のTシャツとジーンズで済ませるが、今日は違う。クローゼットの中には、自分の趣味じゃない、カラフルで華やかな女性服が揃っている。ワンピースを選んでみると、鏡に映る自分がまるで他人のようだった。
「これで外に出るのか…」
ドキドキしながら、僕は思い切って街に出ることにした。いつも通りの道、いつも通りのコンビニ。けれども、周りの視線がどこか違う。男として歩いていた時とは全然違う感覚だ。何気ない買い物ですら、女性としての目線や扱いに気づくことが増えた。
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#### 3. 新しい世界の発見
その日、一番の驚きはカフェで起こった。カウンターに座ってコーヒーを飲んでいると、隣に座った男性が話しかけてきた。
「すみません、ここって空いてますか?」
普通なら、そんなに気にしない言葉だが、彼は少し照れたような表情をしていた。僕は一瞬戸惑ったものの、軽く頷いた。「はい、どうぞ」と、女性らしい声が自然に出る。すると、彼は少し興味を持ったのか、そのまま会話が続いた。いつもならこんな場面では緊張してしまう僕だが、女性としての自分に不思議と落ち着いていた。
会話は途切れることなく続き、その場の空気はなんとなく心地よかった。「女性として生きるのも、意外と楽しいかもしれない」と感じ始めた瞬間だった。
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#### 4. 友情の芽生え
その後、僕は女性の姿で友達に会うことにした。もちろん、彼らは僕だと気づかない。特に、同僚の美咲(27歳)とはすぐに打ち解け、彼女から女性の悩みや日常の話を聞くことができた。
「女って大変だよね、メイクとか服装とか」
彼女がそうこぼすのを聞きながら、僕は女性としての日常に少し共感し始めていた。メイクの時間や、外見に気を使わなければいけない社会的なプレッシャーなど、これまで全く意識していなかったことが次第に理解できてきた。
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#### 5. 迷いと決断
数日間、女性として過ごす日々が続いた。最初は戸惑いばかりだったが、次第にこの生活が楽しくなってきた。新しい友人ができ、普段の生活では味わえなかった感情や経験が次々と僕を包んだ。
しかし、元の自分に戻るべきか、このまま女性として生きるべきかという迷いが心に浮かんできた。女性として生きることで得られるものは多いが、自分のアイデンティティが失われるのではないかという不安もあった。
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#### 6. 最後の選択
最終的に、僕は元の姿に戻ることを選んだ。理由は簡単だ。「僕は僕であることが大事だ」と気づいたからだ。女性としての経験は確かに楽しかったし、多くのことを学んだ。しかし、それでも自分自身であることが一番だという結論に至った。
スマホを再び手に取り、元の姿に戻ると、鏡に映るのはいつもの僕だった。しかし、その目には以前とは違う輝きが宿っていた。女性としての経験は、僕の視野を広げ、他者への理解を深めてくれた。
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僕はスマホをそっとしまい、新しい日常へと足を踏み出した。女性としての経験は忘れないだろうが、今は自分らしく生きることが何よりも大切だと感じている。
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