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「……致命的な設計ミスです。佐藤さんの指示で、納期を優先するために無理なパッチを当てました。このままユーザーが1万人を超えたら、データベースが完全にクラッシュします。修復不能なレベルで」
高橋は息を呑んだ。軽微なバグどころか、会社の信用を根底から覆す大爆弾だ。
「……これを直すには、どれくらいかかる?」
「根本から書き直す必要があります。最低でも二週間。でも、佐藤さんは『社長が許さないから、隠し通せ』って……」
「いいえ。社長は、そんなことで怒ったりしないわ」
高橋は、山下のキーボードを奪うようにして叩いた。由紀の細い指が、驚くべき速度でコマンドを入力していく。中身は、かつて「伝説のプログラマー」と呼ばれた高橋健一だ。
「えっ、木村さん!? なんでそんなにコードが書けるんですか!?」
「秘書のたしなみよ。……山下くん、今から私が言う修正案を、チームの信頼できるメンバーだけに共有して。佐藤さんには内緒でね。……社長には、私から直接『本当の報告』を入れるわ」
その時だった。
「何をしているんだ、君たちは!」
背後から、怒鳴り声が響いた。会議室にいたはずの佐藤が、血相を変えて戻ってきたのだ。
「木村さん、君は秘書の分際で現場を混乱させる気か! そのパソコンを閉じろ! これは社外秘だぞ!」
佐藤が、由紀(中身は高橋)の腕を掴もうと手を伸ばす。 だが、高橋は動じなかった。由紀の体で凛と立ち尽くし、冷徹な笑みを浮かべる。
「佐藤さん。あなたの『社外秘』は、会社を守るためですか? それとも、自分の保身のためですか?」
「黙れ! 社長に報告して、君をクビにしてやる!」
「……いいでしょう。では、今すぐ社長室へ行きましょうか。社長が、あなたを待っていますよ」
高橋は、手元のスマートフォンで、社長室にいる「自分(由紀)」にメッセージを送った。
『準備はいいか、木村くん。……いや、社長。大掃除の時間だ』
数分後。 社長室の扉が勢いよく開いた。 そこには、高橋の姿をした由紀が、これまで見たこともないような冷徹なオーラを纏って、デスクに鎮座していた。
「社長! お聞きください、秘書の木村が現場で勝手な真似を……!」
まくし立てる佐藤を、高橋(由紀)が片手で制した。その仕草一つで、部屋の温度が数度下がったような錯覚を覚える。
高橋は息を呑んだ。軽微なバグどころか、会社の信用を根底から覆す大爆弾だ。
「……これを直すには、どれくらいかかる?」
「根本から書き直す必要があります。最低でも二週間。でも、佐藤さんは『社長が許さないから、隠し通せ』って……」
「いいえ。社長は、そんなことで怒ったりしないわ」
高橋は、山下のキーボードを奪うようにして叩いた。由紀の細い指が、驚くべき速度でコマンドを入力していく。中身は、かつて「伝説のプログラマー」と呼ばれた高橋健一だ。
「えっ、木村さん!? なんでそんなにコードが書けるんですか!?」
「秘書のたしなみよ。……山下くん、今から私が言う修正案を、チームの信頼できるメンバーだけに共有して。佐藤さんには内緒でね。……社長には、私から直接『本当の報告』を入れるわ」
その時だった。
「何をしているんだ、君たちは!」
背後から、怒鳴り声が響いた。会議室にいたはずの佐藤が、血相を変えて戻ってきたのだ。
「木村さん、君は秘書の分際で現場を混乱させる気か! そのパソコンを閉じろ! これは社外秘だぞ!」
佐藤が、由紀(中身は高橋)の腕を掴もうと手を伸ばす。 だが、高橋は動じなかった。由紀の体で凛と立ち尽くし、冷徹な笑みを浮かべる。
「佐藤さん。あなたの『社外秘』は、会社を守るためですか? それとも、自分の保身のためですか?」
「黙れ! 社長に報告して、君をクビにしてやる!」
「……いいでしょう。では、今すぐ社長室へ行きましょうか。社長が、あなたを待っていますよ」
高橋は、手元のスマートフォンで、社長室にいる「自分(由紀)」にメッセージを送った。
『準備はいいか、木村くん。……いや、社長。大掃除の時間だ』
数分後。 社長室の扉が勢いよく開いた。 そこには、高橋の姿をした由紀が、これまで見たこともないような冷徹なオーラを纏って、デスクに鎮座していた。
「社長! お聞きください、秘書の木村が現場で勝手な真似を……!」
まくし立てる佐藤を、高橋(由紀)が片手で制した。その仕草一つで、部屋の温度が数度下がったような錯覚を覚える。